末尾に掲載したURLは丁度3年前に掲載した「朝三暮四の愚」のものです。2019年の政府総債務残高対国内総生産(GDP)比で日本は世界最悪レベルの235%に達していること等を憂いた内容です。それが現在直近2023年のデータでは相変わらず世界最悪レベルの250%と、更に悪化しているのです。我が国の借金は何故増えるのでしょうか。
今年10月の衆院選で国民民主党は議席を3倍に伸ばしました。学生アルバイト等の「年収の壁」を103万円から引き上げて扶養控除額を増やし、以て「親の手取りを増やす」という選挙公約が若い層を中心に受け入れられたのでした。一方で扶養控除額を増やせば所得税収、地方税収が減りますが、そこは政府与党で穴埋めすべきで国民民主党は関せずとのことでした。与野党を問わず我が国では減税を唱えれば当選し、逆に増税や財政再建を唱えれば落選するのです。アベノミクスの失敗でも同様です。第二、第三の矢が飛ばず、国の借金だけが増え続けても国民は国政選挙で幾度も安倍政権を勝たせ続けたのです。かくして我が国の借金は世界最悪レベルにまでなりました。まさに「朝三暮四の愚」そのものです。
一方ドイツの昨年の政府総債務残高対GDP比は63%で世界71位でした。我が国と異なり、選挙で増税を主張しても当選する国と言われています。二度にわたる世界大戦敗戦後の財政破綻で苦しんだ国民の記憶が財政規律を守らせているのでしょう。更には現世代の借金を将来世代に背負わせてはならないとの意識が国民の間にあるのでしょう。我が国も先の大戦で財政破綻し、国民は塗炭の苦しみを味わった筈ですが、今現在財政健全化を唱える声は大きくありません。
同じことは原発政策でも見られます。ドイツは2023年4月に残っていた原発を停止しました。福島第一原発事故を契機に国民の総意がメルケル政権を動かしたと見るべきでしょう。一方この事故を起こした我が国の現政権はこれまでの原発削減路線から継続路線に切り替えようとしています。国民の多数は脱原発を望んでいますが、その声は電力会社を含む財界からの献金の効果でかき消されています。AI発展などの為の今後の電力需要増加は再生可能エネルギーと揚水発電等の蓄電機能とで十分賄えるにもかかわらず・・・。
ドイツは我が国に比べて国民の民度が高いと感じます。国民総意が将来世代の為に財政規律を守らせ、事故やミサイル攻撃で甚大な災害を引き起こす原発の停止を決断したのです。残念ながら我が国はそのレベルに達していません。いまだに「朝三暮四」の狙公の猿の域を脱していないのではないでしょうか。国民各人は我が国の過去と行く末をもっと見つめ、名実ともに国の主人となって現在と将来世代の為の政治を選んでいくべきだと思うのです。