おはようございます昌栄薬品の宮原 規美雄です
黄帝内経素問 熱論篇 第三十一
第三節
帝曰。治之柰何。
岐伯曰。治之各通其藏脈。病日衰已矣。其未滿三日者可汗而已。其滿三日者可泄而已。
帝曰。熱病已愈、時有所遺者何也。
岐伯曰。諸遺者熱甚而強食之。故有所遺也。若此者皆病已衰而熱有所藏。因其穀氣相薄、兩熱相合。故有所遺也。
帝曰。善。治遺如何。
岐伯曰。視其虚實、調其逆從、可使必已矣。
帝曰。病熱當何禁之。
岐伯曰。病熱少愈、食肉則復、多食則遺。此其禁也。
語句の意味
藏脈=鍼灸医学大系・張志聡の註「藏脈とは手足三陰三陽の経脈を謂う。・・・・・」
滿=滿は旧字。マン。ミちる。いっぱいになる。期日になる。十分になる。ミたす。いっぱいにする。十分足りさせる。全体の。満州の略。←瞞。だます。欺瞞。
泄=せつ・
①宣泄、すなわち通じとおすこと。一般には、肺気の宣泄をさす。
<素問六元正紀大論>「金鬱すれば、これを泄す。」
②瀉に同じで、いろいろな腹瀉の総称。
<素問風論>「寒を食すれば泄す。」
③瀉法、あるいは瀉剤を用いること。
<素問熱論>「其の三日に満つ者は、泄して已むべし。」
④筋が弛緩して、用をなさないこと。
<金匱中風歴節病>「味酸なれば則ち筋を傷る。筋傷るれば則ち緩なり。名づけて泄という。」
遺=イ。ユイ。ワスれる→忘。遺忘。スてる→捨。ノコす→残。あとにおいておく。死後に残す。ノコる→殘。オトす→落。オチる→落。ぬける。もらす。オクる→贈。小便。失う。ておち。すたれる。残り。
遺=
鍼灸医学大系<素問熱論篇> *張志聡の註 「傷寒論に曰く、大病差後(少しよくなったのち)労復するものは、枳実梔子湯之を主る。若し宿食ある者は、大黄如搏碁子五六枚を加うと。蓋し傷寒に因り熱甚だしきの時、強いて其の食を食う。故に宿食の遺る所あるなり。又曰く。病人の脈已に解して日暮れに微かに煩す。病新差(ちょっとよくなる)なるを以て人強いて穀を与う。脾胃の気尚弱く穀を消すること能わず。故に微かに煩せしむ。穀を損 (へら)すときは則ち愈ゆ。其の余熱いまだ尽きずして、しいて食を増すをいうなり。此れ即ち復上文の意を釈するなり」と。
荒木性次著方術説話第三巻 辨陰陽易差後勞復病脈證并治 第十四
第二条
大病差後勞復者、枳實梔子湯主之。若有宿食者、加大黄如搏碁子大五六枚。
解 大病差えて後勞復する者は、枳實梔子湯之を主る、若し宿食有る者は、大黄搏碁子大の如きを五六枚加う。
枳實梔子豉湯方 枳實梔子湯方
枳實三枚炙 梔子十四枚擘 豉一升綿裹
右三味、以漿水七升、空煮取四升、内枳實、梔子、煮取二升。下豉、更煮五六沸、去滓、温分再服、覆令微似汗。
若有宿食者、内大黄如博碁子五六枚、服之愈。
解 右の三味を、漿水、七升を以て、空煮して、四升を取り、枳實、梔子を内れ、煮て、二升を取り、豉を下し、更に煮ること五六沸、滓を去り、温かくして、分ちて、再服し、覆ひて、微似、汗せしむ。(可汗・発汗させる)
次の解が抜けて入る
若し宿食(飲食物が完全に消化吸収されず、長い期間胃腸内に留まること)が有る者は、碁石(搏碁子)位の大きさの大黄五六枚を内れ、服すれば愈る。(可泄・大黄を用い瀉す(下す))参考・奥田謙蔵著傷寒論講義・新・東洋医学辞書ソフト
藏=蔵。藏は旧字か正字か不明、旧字と正字の違いがわからない。ゾウ。ソウ。クラ。オサめる→収。内に入れておく。しまっておく。たくわえる。かくす。いだく。オサまる。内にはいる。かくれる。所蔵。たくわえ。仏教の経典。道教の経典。チベット。西蔵。=臓。内臓。
穀氣=穀気=摂取した飲食物の精気
谷(穀)気(こくき)=水穀の気のこと。飲食物の消化吸収された栄養物質のこと。<素問陰陽応象大論>「谷気は脾に通ず。」
薄=はく。
①味のうすいこと。たとえば「滋薄きを味う」とは、すなわち淡薄で油っこくない食物を食べること。
②迫害すること。
<素問至真要大論>の「これに薄り、これを劫す」とは病邪を外に追い出すこと。
③戦うこと、衝突すること。
<素問至真要大論>の「此れ勝復と相薄す」とは正気と負気(邪気)とが互いに戦うこと。④侵入・侵犯の意味。
<素問六節蔵象論>の「勝たざる所を薄す」とは、自己の勝たざるものを侵犯するということ。
薄=はく・せまる。ハク。ウスい。厚みが少ない。少ない。浅い。こくない。軽い。軽薄な。よわい。地味がやせた。そまつな。つまらない。不幸な。人情がない。ウスめる。暑さを少なくする。少なくする。こさを〉濃度を低くする。かろんずる。きらう。ウスらぐ。少なくなる。浅くなる。
この項では・セマる→迫る。近づく。接近する。<素問通評虚実偏第八節>
すだれ。よしを編んで作った、蚕を飼うむしろ。イササか。発語の辞。草むら。
視其虚實、調其逆從、可使必已矣。
鍼灸医学大系<素問熱論篇> *張志聡の註 「夫れ邪の湊る所、其の正必ず虚す。正気虚する者は、其の正気を補す。余熱未だ尽きざる者は、其の余邪を清(静)む。
傷寒論に曰く、傷寒差已後、更に発熱するは小柴胡湯之を主る。脈浮なる者は、汗を以て之を解く。脈沈なる者は下すを以て之を解く。此れをこれ其の逆従を調すと謂うなり。少しく愈するものは、邪熱未だ尽きざるなり」と。
荒木性次著方術説話第三巻 辨陰陽易差後勞復病脈證并治 第十四
第三條
傷寒差已後、更發熱者、小柴胡湯主之。脈浮者、以汗解之。脈沉實者、以下解之。
解 傷寒差え已って後、更に發熱する者は、小柴胡湯之を主どる、脈浮なる者は、汗を以て之を解し、脈沈實なる者は、下を以て之を解す。
小柴胡湯方
柴胡半斤 黄芩三兩 人參三兩 甘艸三兩 半夏半升洗 生薑三兩 大棗十二枚
右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。
右七味、水一斗二升を以って、煮て六升を取り、滓を去り、再び煮て三升を取り、一升を温服す。日に三服す。
解 右の七味を、水二合四勺(480cc)を以て、煮て一合二勺(240cc)を取り、滓を去り、再び煎じて六勺(120cc)を取り、温かくして二勺(40cc)を服す、日に三服す。
再煎とは滓を除いた煮出し汁をからだきすることを謂ふ。
禁=
①噤に通じる。口を噤んで開かないこと。
<素問至真要大論>「諸禁鼓慄して、神守を喪うごときは、皆火に属す。」
②閉結して通じないこと。
<素問六元正紀大論>「太陽の至るところ、流泄禁止と為す。」
③活動に制限を受けること。
<素問六元正紀大論>「関節禁固す。」
④制御、支配すること。
<丹渓心法>「脾泄して日久しく、大腸禁ぜざるは、これ脾すでに脱す。」
⑤趙学敏<串雅外編・かんががいへん>に走方医の禁法が記述してある。禁は疾病の禁制である。すなわち祝由科(まじないで病を治す人間)の一種の方法である。
孫思邈<千金翼方>に禁経があり、宋代<聖済総録>に符禁門がある。ただしその起源はもっと早く、巫医の一種に属す。これは迷信によるものが少なからずあるので、注意すべきである。
禁=キン。トドめる。さしとめる。禁止。天子の居所。いみ。いみ避けること。監獄。監禁する。囚禁する。やめる。おきて。たえる。秘密。
復=フク。カエる。もどる。カエす。もどす。くりかえす。報告する。むくいる。除く。フク。フウ。フタタび。再度。おおう=覆。テニス・ピンポンなどで、ダブルス。
遺=熱が癒えたあとに何等かの障害が残ることで、今日いう後遺症的のものか。鍼灸医学大系
漢方用語大辞典、鍼灸医学大系、方術説話、傷寒論講義、明解漢和辞典、
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