『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
(c) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
ヒャッハー!!!!!
『マッド・マックス』を見てきた。というか、“極上爆音上映”を体感してきた。
立川シネマシティ(シネマ・ツー)でやっている極上爆音上映(極爆)は、当初はマイケル・ジャクソンかなんかのコンサート・ムービーから始まったんだったと記憶してる(確認したら『THIS IS IT』でした)けど、『マッド・マックス』は極上爆音に最適すぎる映画で、歴史に残る上映になったと思う。
『マッド・マックス』の極上爆音上映は口コミで広まり、初週よりも2週目、3週目と観客動員数を増やし、樋口真嗣監督をはじめとする映画関係者も巻き込み、(極上爆音上映としては)異例のロングランを続け、おかげで『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の極上爆音上映が小さなスクリーンに追いやられるという珍事にまで発展している。もしかしたら、8月の『ジュラシック・ワールド』でさえもあやしいくらいだ。一方で、樋口監督の希望により『進撃の巨人』も極爆決定だそうで。
知らなかったけれど、今回の『マッド・マックス』のためにサブ・ウーファーを増設していたらしい。どおりで、以前に見た『ゴジラ』なんかを越えてすごかったわけだ。
極爆の詳細や、立川シネマシティの取り組みについてはこの当たりの記事(週刊アスキー)をぜひ読んで欲しい。映画の新しい可能性が見られる。
で、話は『マッド・マックス』に戻るが、文明破滅後の未来の荒野を、武装トレーラーやらモンスタートラックやらトゲトゲの車やらがドンパチやりながらカーチェイスを行うのがメイン。なので、常に腹の底から響き渡るエンジン音が爆音で唸り、さらにBGMとしてヘビメタが鳴りまくる。と思ったら、これはただのBGMではなくって、トラックに山車のように積まれたドラムを実際に打ち鳴らし、火を噴くエレキギターをかき鳴らすという盛り上げ隊(ドーフ・ウォリアー)が追跡部隊に同行している設定なのだからすごい。この映画のために音響設備を増強したというのは非常によくわかる。まさに、極爆のための映画。
ストーリーが一部で酷評されているように見えるが、どう考えてもあれはネタ。別に破綻してないし、クソでもない。それどころか、かなり細かく気をつかって設定されているような気がする。それもすべて、この馬鹿みたいに“ヒャッハー!”な世界をリアルに成立させるためのものだ。
ウォーボーイズたちも、最初のうちはショッカーレベルの雑魚に見えていたのだけれど、時間がたつにつれ、ウォーボーイズから逃亡に加わったニュークスの重みが増していき、最後には彼が主人公でもいいくらいの気がした。あいつらはただの悪役ではなく、汚染によって蝕まれた身体の救いをイモータン・ジョーに求めている敬虔な殉教者だ。確かに九九はいえなさそうだけど、エンジンの修理なら得意だしな!
そして、女たちの戦いも忘れてはならない。『北斗の拳』やその他の破滅モノに影響を与えた文字通りの世紀末の世界観でありながら、女はただ引っ込んでろ、守られていろではなく、女たちこそが格好良く戦う。ウォータンクを乗り回すフュリオサはもちろん、鉄馬の女(通称:ババァ)たちも、守られるべきはずのワイヴス(妻)たちも凛々しく戦う。
短い寿命をいかに格好良く終えるかを探していたニュークス、緑の大地を復活させるために危険な賭けに出た鉄馬の女たち。主人公格のフュリオサやマックスだけではなく、それぞれの登場人物たちが、それぞれの理由でマシンを駆り、生命を賭ける。このストーリーがただのクソであるわけが無い。
結局のところ、“頭の悪そうな”マシンや、火を噴くメタルギターの印象が強すぎて、細かいストーリーにまで気がつけないこともあるんじゃないか。そうだからこそ、2回、3回の観賞に耐えうる作品なのである。
おまけに、映画中では細かく語られない裏設定も膨大にありそう。たとえば、マックスを悩ませる少女の亡霊は前作に出てきた登場人物なのかと思いきや、この作品では語られきれていない前日譚からのもの。大人気のドーフ・ウォリアーの出自もネットでは話題になりつつあるが、映画の中ではまったく語られていない。
メル・ギブソンから、トム・ハーディに代わった新生マッド・マックスには、ここからスピンアウトや続編にも期待できる大きな膨らみを持った世界が存在している。
とはいえ、なんだかんだ言っても、「ヒャッハー!!!」と一緒に叫びながら、何も考えずに彼らの戦いに一緒に飛び込んでいくのが正しい観賞方法だということは間違いない。