神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] マイルズの旅路

2017-03-16 22:03:46 | SF

『マイルズの旅路』 ロイス・マクマスター・ビジョルド (創元SF文庫)

 

なんとびっくり。帯には「ついに完結」の文字が!

ヴォルコシガン・サーガが、まさか完結篇を迎えるとは思ってもみなかった。これって、ビジョルドのライフワークで、いつの間にか出なくなったら著者が亡くなってた、なんてパターンになるものだと。

完結篇でこのタイトルというと、遂にマイルズが……とも思ったけれど、そんなことは無く。読んでみると、完結なのは納得感もあり、そうでもなくもあり、なんとなく微妙。ネタバレなのでアレですが……。

マイルズ最後の事件ともなれば宇宙を揺るがす大事件かと思いきや、敵は割と小物。しかも、マイルズの捜査も行き当たりばったりに近くて、なんとも間抜けな感じ。運が味方してくれなければ、この事件は片付いていなかったのじゃないだろうか。

まぁ、マイルズはもともと緻密な捜査よりも体当たり派だからしょうがないのか。それにしても今回は当たって砕けろで砕けまくって失敗が多かったような気がするんだけど。

やっぱり、無敵の聴聞卿もそろそろ引き際なのかも。

さて、原題は日本語タイトルと大きく違って“Cryoburn”。意味は微妙に日本語に訳しづらく、たぶん「凍傷」であっているんだろうけれど、寒くてなるものではなくて、極低温の物体に触ると皮膚が火傷のようになるやつ。本作品の主題となる冷凍睡眠にまつわる事件を暗示するものだ。

冷凍睡眠が一般的な技術になると、確かに睡眠者の人権は問題になるかも。とはいえ、議決権に関してはどうだろうか。今だって寝過ごしたら選挙権があっても投票できないのだし、痴呆老人や寝たきり老人の代わりに選挙権を委任されたという話も聞いたことが無い。少なくとも、日本じゃ無理なんじゃないかな。

あと気になるのは休眠口座とか。冷凍睡眠から起きたら休眠口座が没収されてたとか、シャレにならん。今のところ、商法や民法の時効を越えても、運用上は払い戻しに応じてくれるようだけれども、今後どうなるかわからないしな。

そもそも、こんなに簡単に冷凍睡眠に入ったり、起きたりできたら、医療目的だけじゃなくて、もっといろいろなことに使われそうだ。それこそ、投資をAIに任せて、十分に稼いだら起こしてもらうとか。美人の定義が変わるのを待って、自分が美人な時代になったら起こして、とか。

19歳と17歳が恋に落ちたけど、19歳が成人すると途端に淫行になってしまうので、17歳も成人になるまで睡眠する、とか……。

 


スターチャンネルが見られない

2017-03-15 22:23:31 | 映画

今日はルヴァンカップ2017年第1節でした。

磐田 0-2 札幌

マセードのクロスを逆サイドに走り込んだ菅がシュート。キーパー弾いて、上原がゴール。

さらに、珍しく右サイドハーフに入った都倉がドフリーで菅からパスを受けてゴール。の2得点。堪能しました。リーグ戦でも勝って欲しい。

 

そんなわけで、DAZNと並行してスカパー!も継続しちゃってるわけですが(アウェイ見に行く気になったら、安いもんでしょ)、長期ユーザーなもので、ご愛顧に感謝して、会員N周年の毎年3月だけ2000円分チャンネル追加ができるのです。最初の頃はナショジオとかヒストリーチャンネルとか見てたのですが、再放送が多くて見るものが無いので、最近はスターチャンネルで。

これがなんと、オンデマンドでも見られるのですよ。1か月間だけだけど。

で、PCで見ようと思ったら見られなかったので、なんとか試行錯誤。そのメモを残しておく。ちなみに、OSはWindows7 64bit版。(ごめんなさい。そのうちWindows10に買い替えるから)

 

オンデマンドのサイトからスターチャンネルの映画を視聴しようとすると、プラグインをインストールせよとのことで、インストールしてみたが何も起こらず。何度インストールしても、ひたすらインストールせよと言われ続ける。

 ↓

ヘルプをよく観たら、Chromeはサポート外なので、IEへ移行。今度は四角いクルクルが出るが、そのまま黒画面へ。

 ↓

さらによく見たら64bitはサポート外とのこと。そこで32bit版のIEを入れようと思ったら、お前は64bitだからダメと言われる。

 ↓

さらによく見たらFireFoxが行けそうなので、FireFoxの32bit版をインストール。ところが、今度はプラグインをインストールせよの繰り返しに戻る。プラグインやアドオンのメニューをいじくりまわしても、スカパーのプラグインが認識されない。

 ↓

FireFoxのヘルプを読むと、2017年3月から、セキュリティのためにadobe以外のプラグインを無効にしたとか。マジか。

 ↓

仕方がないので、FireFoxの古いバージョンを探してインストールしてみた。プラグインの許可/不許可ポップアップが出て、許可すると四角いクルクル。そしてついに再生が開始された!

これって、周知の事実なんですかね。web検索しても同じ症状の人は引っかからなかったんだけど。まあ、普通は家ではチューナー、出先ではスマホかタブなので、PCで見る人は珍しいのか。

もしかしたら、操作を間違ってたりするかもしれないけれど、同様な症状になった人がいたら、ご参考にどうぞ。

 

そこまでして何を観たかというと、これですよ。デッドプール。

これは面白かった。ヒーロー物のフォーマットをちょっとだけずらしたところに笑いと感動が生まれる。キックアスには劣るけど、ウォッチメンよりは好きかも。

で、思ったのはアレですな。デッドプールって、統和機構モノですか。怪しいクスリを注射して、特殊能力を発現させるために拷問のようにストレスを与えるって、まさに同じじゃん。あいつら、ぜったい統和機構だって。

どうせ誰かが言ってるだろうと思ったら、2chぐらいしか検索に引っかからなかった。残念。


『デッドプール』

 


[SF] エコープラクシア 反響動作

2017-03-06 21:10:01 | SF

『エコープラクシア 反響動作〈上下〉』 ピーター・ワッツ (創元SF文庫)

 

いやー、まったくダメだ。ダメ過ぎる。自分が。

『ブラインドサイト』はまだ自分なりに、わかった気がしていた。けれど、これはまったくダメだ。

終盤まで読み終わる前に、良くわからない小説だとは思っていたけれど、それなりに自分が疑問に思う点や、おそらくこういうことだろうと推測したことをまとめようとしていた。しかし、解説を読んで、すべては吹っ飛んだ。そんな話だとはまったく読めていなかったよ。

舞台があっちこっち飛び過ぎるせいで、なんで主人公は今ここにいるんだっけという疑問が何度も沸いて、前章から読み返したり、冒頭から斜め読みもしていたけれど、本質的に何もわかっていなかったのだと驚愕する。

解説に書いてあることだけでこうなのだから、すべての全貌なんてまったくわかるはずもない。

そもそも、前作よりSF的な議論やアイディアが断片過ぎて、深まっていかない感じがしていた。それはもしかしたら、『ブラインドサイト』の読まれ方に対する著者なりのアンチテーゼだったりするのだろうかとも考えていたのだが、全くの誤解だった。すべての断片は繋がっていたのだし、主人公はただの巻き込まれ型傍観者ではなく、用意周到に選択された生贄だったということだろう。

いろいろとまだ疑問に思うことは多いのだけれど(たとえば、吸血鬼って個人主義に見えるんだけれど、意思統一された一派があるのかとか?)ここまで読めていないんじゃ、そもそものレベルに達していないようだ。

いずれ時間があるころに『ブラインドサイト』から読み直してみようと思うが、果たしてそんな時間が取れる日が(耄碌する前に)来るのだろうか……。

 


[SF] 動物農場

2017-03-01 20:25:50 | SF

『動物農場〔新訳版〕』 ジョージ・オーウェル (ハヤカワ文庫 epi)

 

 

『虐殺器官』の映画公開記念であるディストピア小説フェアから。

『動物農場』は共産主義批判とか、権力はいずれ腐敗するといったテーマの小説だと聞いていた。しかし、読んでみたら、あまりに直接的なソ連批判で大笑い。

寓話とかのレベルじゃないよ。あきらかな中傷レベル。悪口。罵倒。メイナー農場の失敗は、メージャー爺さん(レーニン)の「動物主義(共産主義)」思想とは無関係。ユートピアの行き着く先がディストピアだったわけではなく、一人のずるがしこい豚がユートピアの芽をつぶしたというお話。

これ、ナポレオン(スターリン)さえいなかったら、うまくいったんじゃないの。共産主義だから失敗したわけでも、動物だから失敗したわけでもない。いや、動物だから頭が悪くて、ナポレオンに騙されやすかったということか。っていうか、ソ連の市民を従順な羊やら愚鈍なロバ呼ばわりで、どう考えたって中傷以外のなにものでもない。

もし、この寓話から教訓を得るとすれば、目を開け、耳をかっぽじろ、ちゃんと勉強しろ、自分の頭で考えろということだろうか。

しかし、それよりなにより、あとがきの位置にある「『動物農場』序文案」が必読。

もっと正確に引用すると、タイトルは「報道の自由:『動物農場』序文案」である。そして、“自由を恐れているのはリベラル派なのであり、知性に泥を投げているのは知識人だ。私がこの序文を書いたのも、この事実に注目してもらうためなのだ。”で締められる。いや、すごいね!

当時のリベラル知識人においては、思想的に正しい(はずの)共産主義の体現者をブタ呼ばわりするのは許されない、という風潮があったようだ。あのBBCですらそうなのだから、現代においてトランプがBBCをフェイクニュース呼ばわりするもの当たり前のことだろう。何しろ、奴らの頭はせいぜい60年代で止まっているからな。

この話はもっと注目されるべきだし、特にリベラル派を自認する(より現代的に言えば、反トランプな)人々はもっと注意深く読むべきだ。そして、この「序文案」を噛みしめろ。レッテル貼りはやめろと言いながらレッテルを貼る。ヘイトスピーチをやめろと言いながらヘイトスピーチをする。結論ありきで考えるから、そういう言動しかできないし、それが滑稽なことに自分では気づけない。

絶対に正しい思想なんて無いし、絶対にうまくいく主義なんて無い。どんなにすばらしい思想であっても阿呆の手にかかればこのざまだ。唯一必要なことは、受け売りではなく、自分の頭で考えること。思考停止せず、周りに流されず、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の頭で考えること。そして、もっと重要なことは、自分の頭で考えられるだけの知識と教養と頭の回転の速さを身につけることだ。

……それができれば苦労はしないのだけれどね。