『爆発の三つの欠片』 チャイナ・ミエヴィル (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
日本においては、イーガン、チャンと並び称される現代SF界の巨星、チャイナ・ミエヴィル。その最新短編集。
先に個人的な話をするが、断片的な小説が苦手である。というか、嫌いである。
SF的な発想を喚起するシーンが描かれたはいいが、それで終わってしまう。そういう短編小説が嫌いだ。
だって、ずるいじゃないか。風呂敷を広げていくのは楽しいが、それをきれいに畳むことの難しさは誰にでもわかるだろう。途中で風呂敷を広げ過ぎた結果、結末を付けられずに駄作で終わってしまった作品も珍しくない。
それならば、結末を付けなければいいのだ。
いや、まぁ、そういうわけでもないのだろうけど……。
さて、この短編集。あまりにも断片的な作品が多くないか。
映画のトレーラーを模したものなどはその最たるものだけれど、トレーラーを見てワクワクして、本編を観て幻滅したことは無いだろうか。それだけ、魅力的なトレーラーを作ることは、魅力的な本編を作るよりもずっと簡単なことなのではないか。ミエヴィルならば、充分に魅力的な本編を作れるのにと思うと、ちょっと残念だ。
そして、断片ではない作品は、SFというよりダーク・ファンタジーに近い。もっというと、怪談だろ、これ。
ある程度、腑に落ちる話が多く、大嫌いなストレンジ・フィクション的な要素は少ないのだけれど、それでもこれらをSFとしては読めない。
唯一の例外は「山腹にて」かな。これはSFネタとしても秀逸。しかし、それでも、結末はちょっと怪談話のオチっぽい。
一番SF性が強いのは表題作の「爆発の三つの欠片」だと思うのだけれど、これはまさに断片的な欠片でしかないので、まったく評価できない。爆破処理され崩壊しつつあるビルを、高速化により時間が間延びした状態で登頂するなど、なんとスリリングなことだろう。しかし、なんとも断片的で、アイディアメモのレベル。
この短編集の半分以上は、ただのアイディアノート、もしくは、習作なんじゃないかと思う。もうちょっとちゃんと仕事をしてもらえないものだろうか。