『黄金の盾 グイン・サーガ外伝26』 円城寺忍 (ハヤカワ文庫JA)
『グイン・サーガ・ワールド』内の企画「グイン・サーガ・トリビュート」で見出された円城寺忍のデビュー作。グイン・サーガを書き継ぐ新星の登場だ。
主人公はグインの愛妾、ヴァルーサ。彼女が『七人の魔道師』でグインの前に飛び出してくるまでの“知られざる”経緯が語られる。
いやー、ヴァルーサがクムの踊り子だからって、ガンダルが出てくるとは思ってもみなかった。というか、半分以上はヴァルーサというよりはガンダルの物語。
彼があのような狂気の戦士を演じなければならなかった理由が明らかになり、ガンダルが唯の戦闘マシーンではなく、人間味あふれる男だったという解釈はなかなか感動的。
正直言って、その関係性には気付かなかったと膝を打つと同時に、そんなことは栗本薫は考えていなかっただろうと、サーガの整合性に不安を持ってしまった。
しかし、結局のところ、“例のつじつまあわせ”の結果、グインとヴァルーサはお互いにガンダルを挟んでつながりがあったことを知るすべがなかったという設定には納得させられた。これが、物語自身が持つ力ともいうべきか。
円城寺忍の文章は、これが初の商業出版だとは信じられないくらいにこなれていてとても読みやすかったし、栗本薫の物語として違和感が小さかった。
あとがきを読むと、栗本薫ファンクラブ所属の人なようなので、同人誌経験は豊富なのかもしれない。
格闘シーンの描写に特徴が出ていたので、本人は相当なプロレス好きと見た。世代的に見ても、きっと、高千穂遥とかも好きでしょ(笑)
宵野ゆめとはまた違った印象だけれど、栗本薫の遺伝子をはっきりと伝える新人の登場として期待できる。できれば、円城寺氏には『新・魔界水滸伝』の方も(笑)