《叛逆航路》3部作の完結篇。とはいっても、あんまり完結っぽくない終わり方。結局、何も解決していない。物語はまだまだ続く。
しかし、ブレクを主人公とする3部作はこれで終わりとのことなので、別な主人公を立ててさらに新3部作が続くのでしょう。たぶん、次の主人公はティサルワットかなぁ。
相変わらず三人称がすべて「彼女」なので、混乱が激しい。それによって、読者である自分自身がいかにジェンダーにとらわれているかということが暴き出されてしまう。という意図は、ものすごく良く成功していると思う。
今回はさらに性別よりも大きなものがボーダーレスと化してしまう。思えば、最初からこの3部作のテーマはそこにあったのかもしれない。
ヒト、属体、人工知能、艦、ステーション、果ては異星人までがボーダーレスになっていく。そこに線を引くのは、どこまで行っても主観的な「決め」でしかない。その意味では、狂言回しとしてのゼイアトの存在が素晴らしい。あの言葉は衝撃的だった。わかり切っているはずのことをわかっていないのだと思い知らされた。
ゴースト・ゲートの向こう側にいたものはちょっと肩すかしだったが、“彼女”が加わることによって、このテーマはさらに重層的になった。いわば、もう一人のブレクであり、ブレクの可能性のすぐ先に見えている存在としての役割を担ったわけだ。
おまけの短編は、あえて明示的には触れられていないが、彼は属体になる前、すなわち、ラドチに母星が征服される前のブレクなのだろうか。そうだとすると、ブレクは女性型だと信じていたのにハズレだったか。というか、そういう思考自体が、著者の罠にはまっている証拠なのだよな。