かずさんの、ふらり日々是好日の記

ふっても てっても  日々是好日  泣いてもわらっても 私の一生の中の きょうが一番いい日だから

690 税関による外国貿易船の船内検査

2009-07-08 | 関税法一般
報道されているように、昨日、北朝鮮の貨物検査特例法案が衆議院に提出されました。
 
これは、北朝鮮の核実験等に対する非軍事的制裁措置として、国連加盟国に自国領域内や公海での北朝鮮船舶の貨物検査を要請する安保理決議1874(6月採択)の「実効性を確保」することを目的にしています。

未だ、法案は見ていませんが、日経の報道によれば、洋上は海上保安庁、港湾や空港では税関にそれぞれ検査を実施させる内容で、検査は核・ミサイル関連物質などを積載している「相当な理由がある」場合に実施するとのことです。

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そこで、この特例法の内容の紹介は別の機会に譲るとして、現行関税法によって税関が日常的に行なっている外国貿易船の船内検査について、関税法の規定を見てみましょう。

船舶代理店で仕事をされている方は良くご存知ですが、外国貿易船が日本の港に入港すると、日常的に税関職員による船内検査が行なわれています。その頻度は、以前とは減っているようですが、ごくまれということでは無いようです。

この船内検査の主目的は、密輸入するために麻薬、銃砲などが船内に隠匿されていないかどうかを日常的に検査するものですが、このような検査を関税法ではどの国と限らず一般的に行なえるように、税関職員に権限が与えられています。

具体的には、関税法105条第一項第1号の規定、・・・外国貿易船、外国貿易船に積まれている貨物について、質問し、検査し、関係書類を提示させ・・・・ に根拠を置いています。

この質問検査権は、輸出入者の事務所に赴いての事後調査などと同じ条文のもので、関税法が税関手続きについての一般法であることからのものです。北朝鮮の船が日本の港に入港していた頃には、この権限を背景に検査したことがあるのではないかと想像できます。

ただし、この105条の検査は任意のもので、ときどきテレビで見ます覚せい剤が発見された船を強制捜査するような裁判官の許可状を背景にするようなものではありません。

このため、船内検査をしようとして船長の同意が得られなかった時には、検査できないことになりますが、そのようなことが生じないよう、関税法第114条の2第10号において「第105条第一項(税関職員の権限)の規定による税関職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの陳述をし、又はその職務の執行を拒み、妨げ、若しくは忌避した者について、1年以下の懲役又は50万円以上の罰金に処す。」との間接強制の規定が置かれています。

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また、報道では、公正取引委員会が7月7日に、郵船航空サービス、西日本鉄道、バンテック、ケイラインロジステクス、日新が求めていた、の排除措置命令や課徴金納付命令に対する審判手続きを開始すると通告したとのことです。
この問題は、フォワーダーによってまだら模様の対応となっているようです。

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七夕の昨夜は、すっきりした空で彦星と織姫のランデブーを楽しめませんでしたね。
沖縄は梅雨明けしていますが、早く日本列島もこんな空になってもらいたいものです。



673 環境月間&貿易関係の条約?

2009-06-15 | 関税法一般

6月は環境月間です。

次の温室効果ガス削減目標の議論が報道を賑わせています。
温室効果ガスとは、1998年の「地球温暖化対策の推進に関する法律」において、二酸化炭素、メタン、一酸化窒素、代替フロン等の6種類のガスとされています。

 メタンは、天然ガスの主成分で、牛のげっぷからも発生していますが、温室効果は二酸化炭素の21倍です。
 一酸化窒素は、ナイロン66を製造するときに発生しますが、全身麻酔剤(笑気ガス)として利用されます。
温室効果は二酸化炭素の310倍です。

 代替フロンは、冷蔵庫やエアコンの冷媒などに利用されていますが、温室効果は二酸化炭素の数百倍から数万倍です。
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 環境問題は、色んな切口がありますが、関税協会が発行している関税六法の目次で、目に留まった環境に関係しそうな条約を見ると、次のようにいくつもあるようです。税関手続きの中でも環境問題はしっかり組み込まれているようです。

① 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引きに関する条約(ワシントン条約)
② オゾン層の保護のためのウイーン条約

③ 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約
④ 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約

⑤ 国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続きに関するロッテルダム条約
⑥ 油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約

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 厚生労働省の現職局長が逮捕されて、その庁舎や自宅が捜索されるという報道がありました。
 障害者団体の郵便料金の不正問題ですが、キャリアの課長が単純に重罪の有印公文書の偽造に関係するとは思えませんし、報道でも匂わせていましたが政治(家)の影があるんでしょうか?

 日本郵便の社長人事で、鳩山前総務大臣があれだけの横やりを入れるというのも、なにか表面の言動だけか解せないようにも思います。

政権が交代するかもしれない選挙を間じかに控えた時期、色んなものが出てくるのでしょうが、日本の将来や国益を第一に、政・官・財が意識をあわせて取組みたいとの意見に、一票です。

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 土曜日に、京都・鷹が峰のふもとの、しょうざん光悦芸術村の清流の流れが耳に心地よい床で、お昼を頂いてきました。飲み慣れない日本酒の酔いの中で庭園めぐりですが、紅葉の時期は夕食がてらもよさそうですね。





670 AEO制度の最新利用状況!

2009-06-10 | 関税法一般
 日本の通関制度の学習は、① 関税法に定められている一般手続きと、AEO制度による特例的制度 ②関税定率法に定められている関税率表分類、関税評価制度、相殺関税等の特殊関税制度、いろんな免・減税制度 ③ 関税暫定措置法に定められている一般特恵制度、特定特恵制度 ④ NACC特例法 ⑤ 通関業法

に大別されますが、近年のめまぐるしい改正事項の一つであったAEO制度は、通関士試験に何問かは出題される必須の学習事項です。
 一般との相違点、承認等の要件など比較して学べば理解も早いと思います。
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 具体的なAEOの内容は、参考書で取上げられていると思いますので、今日はその最新利用状況を見てみます。
 財務省・税関のホームページでは、5つのAEO事業者の税関毎と全国の認定者名と数が出ています。

 ① 全国の特例輸入者(5月13日現在)  72者
 ② 特定輸出者     (6月9日現在)  217者
 ③ 特定保持承認者  (6月9日現在)  62者
 ④ 認定通関業者   (5月14日現在)  11者
 ⑤ 特定保税運送者   発表なし

このように、特定輸出者の承認が最も普及していることが分かりますが、これは日本の大手製造業輸出者としても世界のAEO 制度の普及に積極的に対処する必要に迫られたことと、従前の包括事前審査制度が廃止されたことが背中を押したと想像できます。

一方、少ないなと思われるのは、2008年4月からの認定通関業者と、特定保税運送者です。
どちらも、米国、EUのAEOでも対象にしている業種ですが、何故日本の認定者が少ないのでしょう?まだ制度実施後1年ですから、これから利用されるのでしょうか?それとも、日本特有の業種の事情があるのでしょうか?

認定通関業者の被認定者名を見ると、グローバルに活動している大手総合ロジステイクス企業や、航空フォワーダーの名前が出てきませんが、EUや米国ではそれらの現地法人がAEOの認定を受けたとの報道を時々見ます。

制度の仕組みが違うのか、業種の特殊事情なのか、企業の何かの事情か、その理由はよく分かりませんが、AEOの相互認証を各国と進めるには、サプライチェーンのセキュリテイ確保が前提ですから、是非AEO全般の利用度を高めたいものです。

なお、AEOの相互認証については、このブログNO542(2008年11月)「AEO相互認証についての印象」で触れています。

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健康のために通っている、某文化センターの生徒が昨秋から激減し、受講者が5名未満の講座は原則廃止し、借りている教室面積を減らすリストラを実施するとのこと。不景気の嵐は、こういうところにも現れています。

下げ止まりの数値や、観測が出ていますが、史上最高の経常利益を出した2008年3月期と比べると2010年3月期は8~9割まで戻れるかどうかと言われていますので、身の丈にあった生活が必要でしょうか?





666 テイクオフした富士山静岡空港

2009-06-04 | 関税法一般
 関税法施行令などが改正されましたので何だろうと見ると、本日(6月4日)に静岡空港が関税法の「税関空港」に指定されたとのことでした。

 関係の皆さんはお喜びでしょうね。おめでとうございます。

  立ち木で高さ制限にひっかかって開港が延期になって知事が辞任された因縁がある空港ですが、富士山観光には便利がいいかもしれません。

 関税法関係では、この税関空港指定に合わせて、財務省告示「関税法施行令第92条第3項及び輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律施行令第30条第3項の規定に基づき、税関官署を指定する件」という長い名前の告示が改正されています。

 この告示は、絶滅の危機にあるような動植物・・いわゆるワシントン条約対象物品の通関は、限定した税関官署のみで行えることとなっているので、静岡空港の旅客の土産品などで適法に輸出入されるワシントン条約物品の税関手続き(名古屋税関清水税関支署が担当)ができるようにするための改正です。身近なニュースにも関税法の勉強をする材料があることが分かります。

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  税関空港に指定されるためには、国際定期便が就航していることが必要条件ですので、どこの定期便が入るんだろうと思って空港のホームページを見ると、ソウル線と上海線があって、日本の他の地方空港と同じように、大韓航空、アシアナ、中国東方の外国キャリアです。
 
 う~ん、相変わらず、日本の地方空港は、韓国と中国の拠点空港をハブにしてスポークの先の空港パターンですね。成田や羽田、中部、関西空港などの日本の国際空港が負けなければいいですが(~_~;)

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 静岡県などのページでは「富士山静岡空港」となっていて、関税法施行令では「静岡」となっています。
通称と、法令上の名称の違いなのでしょうか?





636 適度な緊張関係を背景にした、自己是正を求める行政への転換過程か・・。

2009-04-14 | 関税法一般
 輸出入業務に携わっている方とAEO制度など税関行政の思想や手法の変化について話す機会がありました。

 行政庁の業務に当たっての一般原則は、公平性+公共性+安定性が基本項目でした。

この発想からは、輸出入者を「質」によって輪切りにして、通関手続きや処理面で優遇策を設けるとの考えは、ややもすると大企業優遇策と反対意見が出ることにもなります。誰にたいしても同じように対処することが善とされる時代が長く続いてきました。

 しかし、この三つの基本項目に、近年は(効率性+説明責任)を付加する考え方に変化しています。

  この考え方を背景に、税関の伝統的な手法は、個々の輸出入貨物に着目して自らが審査や検査をして、発見される規範に違反する者に対しては権力を発動して刑事罰、行政罰、行政処分、行政指導を行なうというものでした。

ところが、近年、税関業務の対象となる輸出入貨物や入国者が増えるとともに、その役割は(関税+密輸入の取締り)から、(密輸出入の取締り+テロ対策+知的財産権侵害物品対策+食品衛生・環境対策・大量破壊兵器などについての他法令確認)と守備範囲が大きく広がっています。

 一方、税関職員数は、財政改革でそう増やすことは出来ない状況が続き、税関の事情としても、軽微な違反の摘発に限られた行政資源を投入したくないとの状況となりました。

 このような状況は、日本だけではなく、程度の違いは有るものの世界の主要国税関共通の課題で、その解の一つとして、「企業にコンプライアンスプログラムの実行を求め」、「税関の負担を軽減して」、「プログラムを実施する企業には一定の優遇を行なう」と言うものでした。

 この発想には、「税関はいちいち瑣末な誤りを探すための審査や検査は行なわない」から、「間違いは企業が自ら正すことが重要」との意識があるように想像できます。

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日本社会は、行政と企業が、お互いをパートナーとして敬意を払いつつ、適度な緊張関係の中でWIN/WINを目指すということには、あまり馴れていないように感じられます。

日本のAEO制度が成熟するためには、それなりにこなれる時間が必要なんでしょう。

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 関東から以西は、ソメイヨシノの時期が終わり、八重桜の頃とな、日当たりの良い花壇では、つつじが咲き出しました。

通勤の電車の窓から見えるマンションのベランダに鯉のぼりが泳いでいます、いつの間にか季節が変化しています。