かずさんの、ふらり日々是好日の記

ふっても てっても  日々是好日  泣いてもわらっても 私の一生の中の きょうが一番いい日だから

713 税関調査への対応のイロハ

2009-10-13 | 事後調査
 全国的に天候に恵まれた三連休は如何されましたか?ご家族と行楽、ゴルフ、小旅行と楽しまれたことと思います。
 私は、日ごろの運動不足を解消すべく、奈良の北・山の辺の道を近鉄奈良駅~新薬師寺~白毫寺~円照寺バス停 と、バスで折り返して奈良公園~東大寺・戒壇院の10kmを巡ってきました。
 山の辺の道の天理から三輪へは1年前に巡りましたので、だんだんと線に繋がりそうです。

 新薬師寺に向かう道で、外国人の初老のカップルが地図を片手に迷っておられるのに出会い、片言で寺までの道を案内しました。

米国ロスアンジェルスから来られたようで、新薬師寺本尊の薬師如来と12神将像をゆっくりご覧になっていました。奥様は、朱印帳を新しく買われて、早速朱印を押してもらっていましたが、片手に持っておられた「JAPAN」と書名のある大部のガイドバックには、朱印帳のことが書いてあるのでしょうか。
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 先週の9日に、財務省が平成20事務年度の輸入事後調査の結果と、脱税調査結果を発表していました。
 事後調査では、6080者を調査して、7割近い4188者に計1984億円の申告漏れが発見されたとのこと。
 追徴税額130億円で過去最高とのことです
 
税関の調査には、税関とのかかわりに応じて、輸入者には輸入事後調査(主に申告漏れ)、輸出者には輸出事後調査(主に輸出貿易管理令違反の有無)、保税の許可者には保税検査(保税業務状況の適否)、AEO事業者には社内管理規則等の遵守状況、通関業者には通関業務の立入調査 などが有ります。

輸出入者にとって、輸入と輸出の調査は、通常通関業者任せで、普段、直接お付き合いのない税関の調査があるとなると身構えるものですが、ちょっと役立ちそうなことを2点紹介しましょう。

1 輸出入状況データ
 輸出入申告はNACCSを使って行われますので、税関は、どの会社が何時どこで、どんな貨物をどう申告して、輸出入の許可を受けたかを電子データーでもっています。
輸入事後調査の申告漏れでまま見られるのは、資材や機械、金型などを無償で支給して輸入貨物を製造しているのに、その額を輸入申告時にプラスせずに通関しているものですが、このようなものは輸出入申告データをちょっと分析すれば大体はわかってしまいますし、金型は経理上資産として管理されますので台帳のようなものを見ても判ります。

また、近頃多いのは、Fedex、やDHLのような国際宅配便での輸入について、輸入時の証拠書類が会社に残っておらず、税関からデータを示され書類の提出を求められて、四苦八苦すると言うようなことです。

会社の輸出入管理は、契約番号で行われることが多く、先程のように税関ががっちり輸出入データを持っているため、大きな企業でも調査で立ち往生することがあるようです。

そこで、会社も自分の輸出入データを持っておくことが望まれますが、大きな企業ほど組織が分化していて難しいようです。このようなことへの対処として、現在は、輸出入者符号を税関に申請して部課別に分けて取得することが出来ますし、その番号を利用して通関しておいて一方、NACCSの利用者になって、インターネットで通関データを受信するようにしておけば、申請などの手間は要りますが、ただで自分の、全国分の輸出入申告データを入手できます。

 NACCSの利用者を見ると、大きな商社やメーカーが参加しているようですが、その多くはこのようなデータ受信を参加の目的にしていると想像できます。

2 輸出入の帳簿保存

 税関の輸出入の事後調査で指摘される事項の一つに、関税法第94条に関連する「帳簿の備え付けの不備」が有ります。大きな企業では、決済を伴う通常の輸出入なら、それなりにしっかり管理して書類も電子データ形式で保存するようにシステム化しているところも有りますが、国際宅配便などの輸出入になればその整理もかなり怪しくなったり、そもそも、通関書類の保存や整理も杜撰だったりして、税関から指摘されることが多いようです。

関税法94条違反については、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金というペナルテイが有りますが(関税法115条の2)、今のところこのペナルテイを課すようなことは無いようですが、ぼちぼち対策を考えたほうがよさそうです。

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 夏までは、月~金のデイリーでのブログupを心がけていましたが、最近は不定期でその時々に気づいたことを書いています。

 冒頭の、山の辺の道には、まだ彼岸花がところどころに残り、稲刈りが進んでいました、生駒山や信貴山が遠望できる長閑な古道です。京都の雅には程遠い、飛鳥、天平の時代を思わせる風景や仏像です。

そうそう、四天王像で有名な東大寺の戒壇院は絵を嗜む方なら、見過ごしに出来ない端整なたたずまいですし、大仏殿とは異なる静寂が漂います。





664 「悪気はなかった!!」は免罪符か?(事例1 決済額とインボイス価額のかい離)

2009-06-02 | 事後調査
 企業のコンプライアンス状況を重視する通関制度が整備されるとともに、関税法における加算税制度が定着期を迎えています。が、企業の意識がその動きに対応しているのか、少し気になっています。

輸入者にとって、税関による税務調査(事後調査)はそれなりに身構えて迎えることですが、上場企業のような輸入者では、① 輸入取引きの契約担当 ②輸出者から送付されたインボイスにより通関業者に輸入通関を依頼する担当 ③ 輸出者との間の決済をおこなう経理担当 がそれぞれ異なることや、どれかの担当が異なることはまま有ります。

事例1 
どのような申告をして通関したかは税関の調査官は承知していますから、税務調査では経理帳票や契約書などの取引書類とでそごが無いかは、調査のイロハです。

調査で、インボイス金額より決済金額が多額であることが見つかったとします。つまり、外形的には過少申告ですので、一般的な従価税率品なら当初納税額は過少になっています。

  このように、当然一致しているはずのインボイスと決済額が違うのは異常なことで、そこには何か事情があるはずですが、この事情には色んなケースがあります。

 輸入後に為替や相場の変動で輸出入者が話合って決済額をアップしたということもあるでしょうし、輸出者が本当に間違ってインボイスを低価で送ってきたので、通関担当が何もチェックせずに通関にまわして、経理はインボイスをチェックせずに輸出者が請求してきた額で決済したというような、社内の内部管理ができてないようなことがあるかもしれません。

 もし、輸入契約100、輸入インボイス・通関80、決済100という事実が明らかになった場合、税関から低価申告で重加算税の対象と指摘されたとすると、輸入者の一義的な反応は「悪気は無いのに!」と言うものではないでしょうか?

 おさらいをすると、関税法第12条の4 では、「隠ぺい又は仮装し・・に基づいて納税申告していたときは・・・重加算税を課す」と規定しています。

 つまり、何らかの仮装・隠ぺいが有ることが前提ですが、先ほどの事例のように80のインボイスで通関した事実は、契約・決済100であるにも係わらず、関税定率法第4条の課税価格算出のために提出している現実支払価格を証明するインボイスの内容を仮装したと認定されると考えられます。

 もし、悪気があれば立派な脱税を意図した行為ですから弁護の余地はありません。
 ただし、悪気がなければ免罪符になってペナルテイは無いと考えるのは甘い発想といわれる余地がありそうです。また、悪気は無いことをどのように立証するのでしょうか?

 事例のようなことがあれば、いち早く、その原因を突き止め改善策を講じて再発防止策を実施することを税関に説明して理解を得ることが重要と考えられますが、多くの企業は、このような動きをしないのではないでしょうか?

 例は違うかもしれませんが、私たちが悪気はなしにスピード違反をしたり、一時停止をせずの時に、ついうっかりとか、悪気は無かったとか、急いでいたということは免罪符にはならないですが、業務として輸入をしている企業なら、今回のような事例が生じないよう明確な業務手順により社内管理を徹底しておくことが必要です。

 よく息子から、謝って済んだら警察いらんなんて言われましたが、悪気はないということを免罪符にするのはコンプライアンス重視の社会では通用しないと思っておいたほうがよさそうです。

 なお、先の事例は、悪気は無かったとしても、関税法116条の重過失による虚偽申告罪として行政処分の対象になることもありえますが、このことは次号で取上げる予定です。

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写真は、デトロイトのGM本社ビルです。









637 「輸出事後調査」パート2

2009-04-15 | 事後調査
 検索で、このブログを見つけられる方の、検索ワードを見ると「輸出事後調査」が時々見かけられます。

 税関による輸出の事後調査は、関税法による質問検査権を背景にするものは平成17年10月からです。

輸入の事後調査は、40年以上の歴史が有りますから調査を受けた会社も多いと思いますが、まだ3年余りの経過ですから、日本の輸出者にとって税関から「輸出調査に行きます」との連絡があると驚かれるかもしれません。

税関が、輸出者のところへ調査に行くのは、この「輸出事後調査」と、AEOの特定輸出者に対する調査の二つです。
そこで、この輸出事後調査はどのようなものか、税関からの発表される情報は少ないものですが、調査を受けた会社などからの情報などを参考に、想像を働かして見ましょう。

1 「輸出事後調査」の目的は何か?

 平成17年の関税法改正時の趣旨は、テロ対策に関し、税関における大量破壊兵器の不拡散に対する強化策の一環とされていたようです。
 この趣旨からは、輸出者の保存している帳簿書類の検査や輸出者への質問などを通じて、外為法の輸出貿易管理令の輸出規制に該当する貨物が、違法に輸出されていないなどを調査することに、主眼があるようです。
これ以外にも、帳簿の保存状況、輸出申告事項(仕向国、数量、価額などZ)が正しかったかのチェックも行なわれます。

2 どの税関の輸出事後調査を受けるのか?
 
 多くの輸出者は、工場所在地や支店の取扱品目に応じて東京や、神戸、博多など複数の税関で通関しています。

このような場合、どの税関の調査を受けるのかという問題があります。
輸入の事後調査は、基本的には、企業と税関の双方の業務効率を勘案して、主たる事業場(普通は本社)を管轄する税関が全国を代表して調査する仕組みがとられていますが、恐らく輸出も同じ発想だろうと想像できます。

したがって、もし、これまで輸入の調査を受けたことが有るようでしたら、同じ税関が輸出も調査を担当すると受け止めておいて良さそうです。

3 輸入の調査をする部門が、輸出も調査するのか?

 輸入の事後調査担当は、「調査部」に属していますが、輸出の事後調査は「業務部」に属しています。
 輸入と輸出では、検査する帳簿が違いますし、今のところ、この二つの部が合同で同時に調査するということは無さそうです。

 輸出事後調査部門の人数は、公刊されている名簿から想像すると、税関によって違うようですが一つの税関で10人強から、数人までのようです。

4 特定輸出者の認定を受けている輸出者の「輸出事後調査」はどの部門が行なうのか?

 AEOの認定や税関による事後の監査は、税関の全国センターは東京税関にあり、各税関には「認定事業者管理官」という職制があります。

 AEO関係事業者への調査は、この管理官が主管していますので、特定輸出者への調査は、「認定事業者管理官のチーム」と「輸出調査部門のチーム」との合同で編成されたメンバーで行なわれると想定されます。

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5年ぶりに、東京デイズニーランドの新アトラクション「モンスターズ・インク ”ライド&ゴーシーク“」が誕生。100億円とは凄い費用がかかるんですね。





552 税関の事後調査結果発表される!

2008-11-28 | 事後調査
 本日11月28日は、136年前の明治5年(1872年)に、日本の開国に伴って設置された運上所が「税関」と改称された日で、税関記念日とされています。
開国の元になった日米修好通商条約は見たことがありませんが、外務省のホームページにあったものを紹介します。




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昨日、財務省から平成19事務年度における、関税・消費税の事後調査結果と関税ほ脱事犯の結果を報道発表しています。

(注)事務年度というのは、7月~6月の1年間を言っており、財務省は7月に定期異動があって配置人員数などが変わるためこの期間を事務上の年度と称しています。

1 事後調査結果の概要

 全国で5865者に調査をし、うち4099者(69.9%)に何らかの申告漏れが見つかっています。その申告漏れ額は1616億円で、追徴税額は関税23億円、消費税87億円となっています。

 この数字をどう評価するかは情報不足で難しいですが、調査数は18年度が5548者で、19年度はプラス5.7%ですから、税関はこの分野に依然として力点を置いていることが伺えます。

 相変わらず、納付不足が多い品目は電気機器や機械類ですが、これらは概ね関税無税ですから、納付不足は消費税と想像できます。 

ご承知のように、消費税の最終負担者は消費者ですから、モノの輸入段階で輸入者が納税回避を図るインセンテイブは高くないと思われます。

にも関わらずこれらの品目が、納税不足番付の上位にあるのは、どこか間違っているか、おかしな現象ですね。 

納税側が、課税当局が厳しく指導しないこともあって、適正納付の努力不足であったり、納税へのコンプライアンス意識が低いのか、又は、徴税側が、関税法による手続きをして正しく申告するためには過度に煩雑なものを求めたり、企業の経理処理や業務の実情から無理があるからなんでしょうか?

 日本の将来を考えれば、いずれ消費税率は上がらざるを得ないようですので、税関がいちいち事後調査を強化しないと輸入消費税の納税がきちんと行なわれないというのでは、国全体としての納税や徴税の仕組みとして合理的・効率的とはいえないのではないでしょうか?

2 関税ほ脱事犯の結果

 3件の告発と42件の通告処分をして、関税ほ脱の総額は25億円でした。上記1の事後調査の追徴関税額が23億円ですから、両方で関税不適正納付は48億円ですね。

 ほ脱額25億円のうち、14億円は豚肉の差額関税制度悪用の事例でした、相変わらずこの制度は脱税を誘引しているようです。そういうと、いつぞや報道されていたM商事もこの制度に関するものでしたね。

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 話は変わりますが、同じ27日付けで、財務省が「国際航空物流と税関行政に関する懇談会」開催の報道発表をしていました。

園川隆夫 東京工大教授を座長に、航空会社、フォワーダー、インテグレーター、荷主、大学教授がメンバーですが、羽田空港の再拡張、成田空港の北伸事業をにらんで事業展望や税関行政のあり方などがテーマになるようです。

シンガポール、香港、上海、インチョンなどアジアの空港整備をにらみ、日本の空港が競争力を維持していくためには税関行政だけの問題ではないんでしょうが、実りある議論を期待しましょう。
http://www.mof.go.jp/singikai/koukuu_butsuryu/ka201127.htm





499 税関と国税局との連携について

2008-09-10 | 事後調査
こんばんは!

朝夕、秋の訪れを感じるようになってきましたが、皆さんのところでは如何でしょう?
かずさんは、税関のホームページを定期的に覗くようにしていますが、新着情報の9月5日に、次の記事が載っていました。
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平成20年9月5日(金曜日)
神戸税関は、広島国税局・高松国税局との調査事務連絡協議会に参加した。同協議会では、税関と国税局との相互協力について再確認をするとともに、海外取引事案に関する調査事例の紹介や情報提供の要望等について活発な意見交換が行われた。

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相互協力、調査事例紹介、情報提供など、納税者から見れば気になるような言葉が並んでいますし、先日は三菱商事が豚肉輸入の差額関税について、多額の納税不足が報道されたところです。

税関と国税局との連携の詳細は、部外者からは分かりませんが、公になっている関税局の通達の中には昭和47年に制定(採取改正は平成8年)の「内国消費税事務に関する国税当局との連絡体制等について」があります。

内容は、内国消費税についての税関から国税局への照会方法や後の事務処理のことが中心で、調査についてのことは皆無です。

ただ、法人税調査などでは、海外取引関連、移転価格の問題など少なからず輸出入に絡む事項が調査のポイントになっていますし、税関から国税調査部門への出向などもあるようですから、深浅は分からないものの、相応の連携があると想像しても間違ってはいないでしょう。