今年は暖冬で、首都圏ではもう梅が咲いています。桜もこのままいくと入学式というより、卒業式の時期に咲くかも。などと暖かさに浮かれていると、温暖化でそのうちひどい被害が生じるおそれもあるあけわけです。仕事にかまけて、町内会の寄りあいの議題を忘れていると、妖怪に追い詰められてしまうというように…。相当こじつけですが、話を進めます。
【リポート16.妖怪おばばの陰謀-その②】
ぼくがテーマを忘れていようがいまいが、それとは無関係に会合の議事は着々と進みます。そう、2月初めの会合の議事は、今年4月以降の次年度役員の選出がメイン。議長である会長が、立候補者がいないかどうか確認しますが、当然のごとく誰もいません。ぼくに至っては、議題さえ忘れていたうえに、そもそもどんな役職があるのかさえ、思い出せないでいる始末。
立候補者がいない場合の次の手として、かねて栗山さん似に聞いていましたが、抽選に移ります。おもむろに、用意してあった抽選箱が出されました。しかしその前に、より公平を期すため、抽選する順番をアミダクジで決めるのだそうです。アミダクジは、班番号が若い順に廻ってきて、それぞれ思い思いの場所に班番号を記入しました。
ぼくは、相当後の方に抽選を引く順番になりましたが、「きっと重責で多忙の役は早めに出て、ぼくが引くころには楽な役職だけが残っているだろう」と、何の根拠もなくのんきに構えていました。副会長が抽選箱を持ち、アミダで決まった順に本人がクジを引きます。会長とか、副会長とか、書記とかが、重責多忙の役と思われますが、それらのクジを引き当てる人は、予想に反してなかなか出ません。
催事担当が数的にも多いようで、これらを引いた人は安堵の表情を見せています。衛生担当とか、これも重責と思われる上位の区の役員とかもちらほら出、あと5・6人程度を残したところでぼくの番となりました。この段階で、先の重責と思われる役をひいてしまうのは、確率的には5割以上と思われました。
あせる気持ちを抱きつつ「ままよ」と思いながら、折られて閉じられていた引当クジを破って開くと、「催事担当」でした。ぼくは、ホッとすると同時に、「また同じメンバーでヤキソバを焼こう!」なんて騒いでいた、夏祭りのひとコマなんぞをふいに思い出したりしていました。
クジを引くのは残り数人です。ぼくの次にはぼくの右どなりの、口髭さんの奥さんが副会長を引き当てました。その次には、女性の班長が書記を、その後には、これまた女性の班長が会長を引き当てます。最後のクジを引いた男性が催事担当と判明したところで、抽選自体は終了しました。
安心した人と、まあどうしましょう的な人とで、集会室全体が少し騒がしくなりました。もちろんぼくは、「目立たないように耐えていた1年間の苦労が報われたな」と、静かに前を見つめていました。そこへ、書記役員の女性が説明をします。「抽選で決まったところですが、昨年もそうでしたけれど、引き当てた役職がどうしてもできない事情の方がいらしたら、ここで相談したいと思いますが…」。
ほどなく、会長に当った女性が挙手をしました。「あのう私、×才の子と×才の子(2人ともまだ小さい)がいて、会長の役はちよっと無理だと…」。見ると、夏祭りのヤキソバ仲間の若旦那の奥さんです。会場全体が一瞬沈黙に包まれました。そこに発言をしたのが書記役員を引き当てた女性です。「それは無理よねえ、どうです観月さん、観月さんは?」と、こともあろうにこっちを見、替わってやれとの意を込め、2度も名前をあげてぼくに迫ってきます。
ぼくは突然のことで何の返事もできないまま、目が点になって固まっていました。連続の仕事。睡眠不足。早朝からの掃除。今日の提出資料も議題を忘れ、集合時刻すら忘れる。こういった状態のところに、妖怪おばばにふいを突かれ、思考停止に陥ってしまった次第です。すると、ぼくの右隣の口髭さんの奥さんが、「それでは会長を私んとこが引き受けましょう、旦那に言っときますんで」と、発言。口髭さんのとこは、副会長を引き当てていたため、「じゃあ副会長は誰がやんの?」という議論に移りました。
そこで申し出をしたのは、最後に催事担当を引いた、黒眼鏡さんです。「では、ぼくが副会長役を引き受けますよ」と。口髭さんと黒眼鏡さんは、ぼくとは春の歩こう会で、飲み物買い出し担当を一緒に努めた方々です。ひとまずの結果としてぼくは、妖怪おばばの攻撃から、この2人の申し出(口髭さんの方は本人ではなく奥さんですけど)によって救われたわけです。若旦那奥さんは恐縮して、「できる範囲で、会長や副会長さんを補助しますので」と、結びました。
「他に、どうしても無理という方はいませんか?」書記役員の女性が問います。すると、どこかの班長の女性が「区の役員って、どんな仕事ですか?」と質問。会長が「上位組織の区の会合などに出ていただくということで、向こう2年間続く仕事です」と回答。女性は不安、不満そうな表情ながら「そうですか」と、ひきさがりました。その後にすぐ、先の妖怪おばばが、「私は書記の役が当りましたが、仕事をしているんで土日にたくさん時間をとられるのはちょっと」と発言をしました。
これに対しては現書記の女性が、「土日は会合の時間程度で、むしろ資料づくりに時間がとられます。でもやりくりすれば、何とかなる程度ですよ」と回答しました。妖怪は「はあ、資料ですか、無理だと思いますが…」と納得できない様子でした。しかし、ある男性が「みんなそれぞれ事情を抱えながらやっているわけで、自分で時間調整できる仕事は、やってもらえないとね」と、発言。これには妖怪は反論しませんでした。
そんな状況で、次年度役員決めは終了。次回は数週間後に、年度末の総会用資料作成のために、公民館に集まってくださいという周知を受け、解散となりました。帰りがけに、黒眼鏡さんと彼に催事担当に替わってもらった若旦那奥さんが歩いているのをみかけたので、「替わってあげられなくてごめんなさい。ぼくも春先特に忙しい事情があるもので」と、お詫びをしておきました。
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一件落着かと思いきや、それで事は済まなかった。<妖怪おばばの陰謀ー③>に、つづく…妖怪が牙を剥きます。
【リポート16.妖怪おばばの陰謀-その②】
ぼくがテーマを忘れていようがいまいが、それとは無関係に会合の議事は着々と進みます。そう、2月初めの会合の議事は、今年4月以降の次年度役員の選出がメイン。議長である会長が、立候補者がいないかどうか確認しますが、当然のごとく誰もいません。ぼくに至っては、議題さえ忘れていたうえに、そもそもどんな役職があるのかさえ、思い出せないでいる始末。
立候補者がいない場合の次の手として、かねて栗山さん似に聞いていましたが、抽選に移ります。おもむろに、用意してあった抽選箱が出されました。しかしその前に、より公平を期すため、抽選する順番をアミダクジで決めるのだそうです。アミダクジは、班番号が若い順に廻ってきて、それぞれ思い思いの場所に班番号を記入しました。
ぼくは、相当後の方に抽選を引く順番になりましたが、「きっと重責で多忙の役は早めに出て、ぼくが引くころには楽な役職だけが残っているだろう」と、何の根拠もなくのんきに構えていました。副会長が抽選箱を持ち、アミダで決まった順に本人がクジを引きます。会長とか、副会長とか、書記とかが、重責多忙の役と思われますが、それらのクジを引き当てる人は、予想に反してなかなか出ません。
催事担当が数的にも多いようで、これらを引いた人は安堵の表情を見せています。衛生担当とか、これも重責と思われる上位の区の役員とかもちらほら出、あと5・6人程度を残したところでぼくの番となりました。この段階で、先の重責と思われる役をひいてしまうのは、確率的には5割以上と思われました。
あせる気持ちを抱きつつ「ままよ」と思いながら、折られて閉じられていた引当クジを破って開くと、「催事担当」でした。ぼくは、ホッとすると同時に、「また同じメンバーでヤキソバを焼こう!」なんて騒いでいた、夏祭りのひとコマなんぞをふいに思い出したりしていました。
クジを引くのは残り数人です。ぼくの次にはぼくの右どなりの、口髭さんの奥さんが副会長を引き当てました。その次には、女性の班長が書記を、その後には、これまた女性の班長が会長を引き当てます。最後のクジを引いた男性が催事担当と判明したところで、抽選自体は終了しました。
安心した人と、まあどうしましょう的な人とで、集会室全体が少し騒がしくなりました。もちろんぼくは、「目立たないように耐えていた1年間の苦労が報われたな」と、静かに前を見つめていました。そこへ、書記役員の女性が説明をします。「抽選で決まったところですが、昨年もそうでしたけれど、引き当てた役職がどうしてもできない事情の方がいらしたら、ここで相談したいと思いますが…」。
ほどなく、会長に当った女性が挙手をしました。「あのう私、×才の子と×才の子(2人ともまだ小さい)がいて、会長の役はちよっと無理だと…」。見ると、夏祭りのヤキソバ仲間の若旦那の奥さんです。会場全体が一瞬沈黙に包まれました。そこに発言をしたのが書記役員を引き当てた女性です。「それは無理よねえ、どうです観月さん、観月さんは?」と、こともあろうにこっちを見、替わってやれとの意を込め、2度も名前をあげてぼくに迫ってきます。
ぼくは突然のことで何の返事もできないまま、目が点になって固まっていました。連続の仕事。睡眠不足。早朝からの掃除。今日の提出資料も議題を忘れ、集合時刻すら忘れる。こういった状態のところに、妖怪おばばにふいを突かれ、思考停止に陥ってしまった次第です。すると、ぼくの右隣の口髭さんの奥さんが、「それでは会長を私んとこが引き受けましょう、旦那に言っときますんで」と、発言。口髭さんのとこは、副会長を引き当てていたため、「じゃあ副会長は誰がやんの?」という議論に移りました。
そこで申し出をしたのは、最後に催事担当を引いた、黒眼鏡さんです。「では、ぼくが副会長役を引き受けますよ」と。口髭さんと黒眼鏡さんは、ぼくとは春の歩こう会で、飲み物買い出し担当を一緒に努めた方々です。ひとまずの結果としてぼくは、妖怪おばばの攻撃から、この2人の申し出(口髭さんの方は本人ではなく奥さんですけど)によって救われたわけです。若旦那奥さんは恐縮して、「できる範囲で、会長や副会長さんを補助しますので」と、結びました。
「他に、どうしても無理という方はいませんか?」書記役員の女性が問います。すると、どこかの班長の女性が「区の役員って、どんな仕事ですか?」と質問。会長が「上位組織の区の会合などに出ていただくということで、向こう2年間続く仕事です」と回答。女性は不安、不満そうな表情ながら「そうですか」と、ひきさがりました。その後にすぐ、先の妖怪おばばが、「私は書記の役が当りましたが、仕事をしているんで土日にたくさん時間をとられるのはちょっと」と発言をしました。
これに対しては現書記の女性が、「土日は会合の時間程度で、むしろ資料づくりに時間がとられます。でもやりくりすれば、何とかなる程度ですよ」と回答しました。妖怪は「はあ、資料ですか、無理だと思いますが…」と納得できない様子でした。しかし、ある男性が「みんなそれぞれ事情を抱えながらやっているわけで、自分で時間調整できる仕事は、やってもらえないとね」と、発言。これには妖怪は反論しませんでした。
そんな状況で、次年度役員決めは終了。次回は数週間後に、年度末の総会用資料作成のために、公民館に集まってくださいという周知を受け、解散となりました。帰りがけに、黒眼鏡さんと彼に催事担当に替わってもらった若旦那奥さんが歩いているのをみかけたので、「替わってあげられなくてごめんなさい。ぼくも春先特に忙しい事情があるもので」と、お詫びをしておきました。
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一件落着かと思いきや、それで事は済まなかった。<妖怪おばばの陰謀ー③>に、つづく…妖怪が牙を剥きます。