日々雑感

心に浮かんだこと何でも書いていく。

ソンクラーン祭り

2008年03月14日 | Weblog
もう10回以上もバンコックには来ているが、水掛け祭りは今まで、唯の1回も遭遇していなかったのでこのソンクラーン祭りのことは知らなかった。
4月12日から13、14、と3日間はタイのソンクラーン、水掛け祭りでそれは正月みたいなものらしい。いやお祝いをしているのだろう。
それだけではなく、歩いて街ゆく人にも後ろから、前から無条件に水をぶっかける。
若い女の子などはブラウスが掛けられた水のために体にぴちゃっとくっついてボデイラインがはっきりと浮かび上がり、膨らんだ胸のあたりはすけすけで黒い乳房が二つ見えている。
おっとと、これは面白い。タイの若者はいいことをやってくれるじゃないか。高見の見物を決め込んで、僕は腹の内でにやにやしながらバスの手すりにもたれながら眼の保養をした。
水かけと言うくらいだから水をかけるほうも、掛けられる方も其れによってお祝いをしている気分に成るのだろうから、特に掛ける方は遠慮会釈は無い。何処でもいい、だれでもいい、辺り構わず水をぶっかけるだけでなく、追いかけてきて水を掛ける。標的は同胞だろうが外人だろうが全くお構いなしでる。
あちこちで誰彼かまわず水をかける。トラックに水瓶を積んで行き交う人に見境なく水を掛ける。町はそんな若者であふれていた。バンコックの4月は最も暑い季節らしく連日38度前後の気温だった。この祭りにとけ込めば暑さ忘れの面白い祭りかもしれない。
さて、今回のバンコック滞在はタイ旅行が目的地ではなくて、単なる通過地点に過ぎなかった。カオサン通りで格安キップを買った方が安く昆明に行けるから立ち寄った迄である。昆明が目的地だったから1日も早くバンコックを出発したかったのに運悪くソンクラーン祭りにひっかかってしまったのである。12、13、14、と3日間は官庁はおろか商店も閉まっている。
 勿論中国大使館もお休みだ。ビザはとれない。仕方なくバンコクに釘付けになった。
格安キップには有効期間があるので自ずと帰りまでの日数には制限がある。1日も早く昆明につかないと中国に滞在する期間はそれだけ短くなるのだ。僕は内心すごく焦っていたが焦ったところでどうにかなるものでもない。体こそバンコックに置いていたが心ははるか彼方の雲南省に飛んでいた

 大通りで水の掛け合いをしているのを見て、これはやばいと思った。満足に着替えも持たない僕に水が掛けられたらそれこそパンツ1丁で町を歩かなければならないことになる。どうしても水掛けから逃れなければならない。
そこで僕は大通りを避けて路地を通ることにした。それは車からの襲撃を避けるためである。しかし路地のどこから水が飛び出してくるかしれたものではないので立ち止まっては警戒をおこたらなかった。
だが途中でどうしてもスリウオン通りを歩かなければならない所が有った。しかたなく歩いていると、路地から中学生風の子供がかんずめの缶に入れた水を僕の背後から背中に掛けたというよりはそそぎ込んだ。彼はにやりと笑って僕を見つめたが、僕は驚きと怒りに声をふるわせた。水は背中から足下まで直行したお陰でびしょびしょということではなかった。
「やれやれ、たいそうなことをしてくれる。この野蛮人めが。」
僕はぶつくさ言いながら、なおもスリオン通りを歩いていたが、次に来たのは強烈だった。車に若者が数人乗ってこちらに向かってやってくる気配を感じた僕は、右折してタニヤ通りのほうへ小走りに逃げた。多分此処なら安心だと思ったのもつかの間、1団は歓声をあげながら僕を追いかけて来るではないか。これはいかん。僕は走って逃げた。蛇に追いかけられたら横に逃げるに限るという具合に僕は車が入れないような小さな路地に逃げ込んだがそこにはバケツを持った若者がいた。これはいかん、僕は驚いてまたもとの路を引き返さざるを得なかった。が、運悪く丁度そこへ先ほどの車が通りかかった。すかさず歓声と共に水がドバっと飛んできた。避けようもなく僕は頭から水を被った。あわてて僕は肩に掛けたカバンからタオルを取り出して急いでふいた。しかしカバンの中まで水が入ってしまっていた。
急いで取り出したがビデオカメラが濡れている。
「やられた。」
僕は大急ぎでカメラを取り出しタオルでふいた。綺麗にふいたが水は中まではいってしまったらしくどんなにさわっても微動だにしなかった。
「畜生。馬鹿者め。手前ら野蛮人か。水を掛けたいのならタイ人同士でやれ。俺は外国人だぞ。誰もかけてくれと頼みもしないのに、いやがる俺にまでかけやがって、一体どういう了見なんだ。」
僕は怒りまくった。びしょぬれの上にカメラまでやられてしまったのだ。腹が立たない訳がない。通り過ぎていく車に向かって僕は唾を吐いてやった。
 ビデオが動かないのにはさすがに参った。自室に戻って僕は電池をはずし本体をフアンの風に当てて乾かそうと懸命につとめたがビデオは動かずじまいだった。買ったばかりで今回が初めて使うのを楽しみにしていたのに。僕は何重にもむしゃくしゃした。
 かってにタイにやってきておきながら、こんな事をいうのははなはだ不謹慎ではあるが、僕にとっては祭りは出来るだけ早く終わって欲しかった。
ソンクラーンはタイ人にとっては1年一回の無礼講の祭りで暑い盛りのフラストレーションを発散させる楽しい祭りかもしれないが、僕には不愉快な祭りとしてしか映らない。所変われば品変わるというが僕は素直にこのソンクラーンを楽しい喜びの祭りとして受け入れることはついぞ出来なかった。