伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

小説を発信中

  
  
  
  

  

ジャコシカ166

2020-11-21 13:04:45 | ジャコシカ・・・小説

幼くして両親を同時に失った境遇が、そんな彼女の傾向を強めた。

 

 「私は優しくない女よ」

 

 それが東京に出てからの彼女が、ことあるごとに自身にかける言葉だった。

 

 いつもそんな風に言い続けているうちに9年が経ち、気がついたら伯母に出す音信は所在が変わ

 

った時と年賀状だけになっていた。

 

 

 今度伯母を訪ねることになって、あやは再びあの入江の家に帰り、赤間家の姉妹に再開した時の

 

ことを思い出していた。

 

 自分が優しくない女であり、情のない冷たい女なのは充分に分かっていた。

 

 しかし、それは何故なのだろう。

 

 あやは一時期鉄五郎に向けていた、激しい怒りのことを思った。

 

 あの根深い怒りが、全ての始まりのような気がしてならなかった。

 

 謂われない鉄五郎への恨みが時の流れの中で消えてしまった今も、怒りのしこりのようなものは

 

しぶとく身体のどこかに潜んでいる。

 

 確かにそれは時折、気味悪く蠢くのを感じるのだ。

 

 「どうしょうもない」

 

 あやは伯母を訪ねる列車の中で、半ば開きなおってつぶやいていた。

 

 

 あやの気持ちをよそに、伯母は9年前と少こしも変わらずに陽気で優しく、我が子のように迎え

 

てくれた。

 

 伯母にとってはそれは極く当たり前のことなのだ。あやは懐かしい広い玄関で、変わらぬ話題で

 

迎えられて、そのことに気付いた。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする