男も女も信用できなくても、仕事は信じることができるでしょう。
自分の仕事を信じるなら私と手を組みなさい。
お金は私が出します。青山の店は当たっています。だから桐山昇の力は借りません。
札幌の店は貴方と私だけの店です。もう仕事に男は割りこませません。
二度とあんな思いはしません。貴方にもさせないわ」
「それを聞いて少こし安心したわ。でも、少こしだけね。だって優美さんが女をやめるわけでは
ないし。ただおっしゃる通り私、仕事は手放せない。今度離れてみて良く分かった。打ちこめるも
ののない人生なんて無意味だもの。
良い結果を手にすることは出来なかつたけれど、「フローラ」は充実していました。
あの高揚した緊張感は一度味わうと虜になる。必ずまた挑戦すると決めていたわ。
ただし、男の力は借りない。そう心に決めていたの」
「私の二の舞はごめんだと」
「ええ、悔しかった。優美さんともあろう女性(ひと)がと思うと、腹が立ってしかたがなかった。
私、女なんて止めたいと思ったわ。
その時、ふと気付いたことがあるの。
私、子供の頃両親を亡くした話しをしましたね。あの時、違う世界に放りこまれたと思った。
あれから私は一人で生きて行くんだと思った。当然のことのように女でない生き方を求めていた
ような気がする。
女は厭だと言うのではないけれど、女止めるんだというか、そんな気持ちが無意識の内にでき上
がっていったのじゃないかと思う。