伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ205

2022-03-05 19:36:04 | ジャコシカ・・・小説

 

 「ええ、ずっと引っ掛かってる。

 

あの人が何も考えない人だとは思えない。いいえ、高志さんは人一倍考えているんだと思う。

 

 有名な大学にも入っているし、今は休学中だと聞いたけれど、弁護士を目指していたって聞いた。

 

 だから考えていたって訳でしょう。

 

 と言うことは、今も考えない人ではないってことでしょう。それは自然な結論だわ。

 

 何か特別な理由があって、今は中断しているかも知れないけれど、そんなことは彼、何も言って

 

なかったけれど、仮にそんなことがあったとしても、あんな風な言い方には繋がらないと思うの。

 

 だから、あの時の言葉は単なる軽い冗談か、あれよ、デカダン風に気取っただけだったと思うの。

                                                                                                                                                              

 要するに苦労知らずのボンボンが何かにかぶれているだけなのよ。私としてはそのように見えて

 

いるのだけれど、でもまだ何か引っ掛かるの」

 

 「何が?」

 

 清子は少こし乗り出して、妹を見た。

 

 千恵はその視線を振り払うように、目蓋を閉じて天を仰いだ。

 

 ややあってゆっくりと瞳を開き、古びて黒ずんだ梁を眺めながら、ポッリと言った。

 

 「本心だったような気がする」

 

 「だから私に諮いたのね」

 

 「ええ、そうなの。あの時私、あの言葉に空っぽのほら、峠の姉さんの所にある、空井戸に首を

 

伸ばして、耳を澄ました時に聴いたような響を感じたの。本当に何も無いんだって。怖い気がした」

 

 千恵は言葉を呑み込むように沈黙した。

 

 清子も黙ったままだった。

 

 やがて清子が思い出したように言った。


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