伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ61

2018-07-31 11:50:06 | ジャコシカ・・・小説

「で、どうして今は一人なんですか」

 再び鉄さんは長い間合いに入った。

 しかし、今度の質問は最初のよりも言葉が見つかりにくいようだ。

 茶を飲み、飲み終わった後も湯呑を両手で包んで膝の上に置き、見るともない瞳をストーブの鉄

瓶から昇る湯気に泳がせている。

 やがてその湯気に、そっと乗せるように言った。

 「亡くなったよ。夫婦一緒にこの眼の前の海に呑まれてしまった。子供が10歳の時だ。

 わしがころがりこんで4年目だった。

 それから6年間はその子と二人暮らしになった。

 その子がな・・・・娘だがね・・・・伯母さんを頼って札幌に出て、そこで高校に入って、それ

からずっと一人だ。そうよなあ・・・・あれからもう10年になる」

 「そうなんですか」

 高志にはその後の言葉が見つからない。

 何か言うには鉄さんの20年は途方もなく永いものに思えたが、彼の話しはあまりにも簡単で短

かった。

 人生なんて言葉で表わせばそんなものだろう。その短さが彼から言葉を奪った。

 いつの間にか今度は彼が、湯気の上で視線を泳がせていた。

 そんな彼の口から、また何の考えもなく、ぽろんと言葉がこぼれ落ちた。

 「娘さんは今はどうしているのですか。25,6歳に成ると思うのですが、もう結婚しましたか」

 「まだたと思う」

 「えっ」

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