伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ104

2019-03-30 00:16:24 | ジャコシカ・・・小説
 こんな時に南に逃げ出すのならいざ知らず、同じ道内を移動するなんて意味がない。

 小畑さんの忠告に従わざるを得ないと、覚悟を決めている。

 それからの時間の進行は急行列車を降りて、鈍行どころか馬橇にでも乗り換えたようだ。

 春は時と共に、どんどん遠ざかって行く錯覚に囚えられる。

 北国の冬というものが、ようやくじわじわと分かり始める。

 土の香りが緑が恋しくなる。

 花が咲き光り溢れる春を、夢にまで見るようになる。

 皿洗いの仕事のおかげで、暮らしに不安はないし、寒い思いしないで済む。

 仕事のありがた味を、しみじみと感じる。

 何処へ行こうとも、仕事だけは忘れてはいけない。

 幸い自分はなまけ者でも、仕事嫌いでもない。だから毎日雪が降っても吹雪いても、心細くはな

らない。

 ただ一つの先のこと、ずっと先のことさえ考えなければ良いのだ。

 時に肩までに積み上がった雪の通路で、スコップを使いながら、そんなことをぼんやりと考えて

いる。

 ある日、空虚の海で漂っている時、めずらしく美奈子が話しかける。

 「ジャコシカって言葉知っている?」

 定まらぬ意識の中で、記憶をまさぐる。

 「知らないね」

 「東京の方じゃ使わないの」

 「どうだろう、聞いたことはないけれど」

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