伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ144

2020-06-09 23:34:45 | ジャコシカ・・・小説

それから改まったように高志を見た。

 

 「高志さんは漁師になるつもりなの」

 

 「どうして」

 

 「鉄さんの所居心地良さそうだし、それにもう春なのに、峠の旅人にしては長居だし」

 

 千恵の言葉に高志は思いがけない出会いのように彼女を見た。少こしの間、その眼差しが何か忘

 

れ物を探すように海の上をさ迷った。

 

 「そうだったね、雪の峠で猛さんに拾われた時のことをすっかり忘れていた。あの後君達の家に

 

泊まった時に、千恵さんに言われたんだ。峠の旅人だから、また直ぐに出て行ってしまうだろうっ

 

て。

 

 あの時はそう考えていた。

 

 忘れていたよ。

 

 もしかしたら僕は本当に、漁師になるつもりなのかなあ」

 

 高志は再び海に視線を転じた。

 

 「随分あやふやな言い方ね」

 

 知恵は不満そうに彼を見た。

 

 「私に遠慮はいらないわよ。その気があるならあの家高志さんに上げるわ、鉄さんも喜ぶと思う。

 

私はここに住む気はないから」

 

 「いきなりそんな大事な話しを、真面目な顔をして言わないで下さい。

 

 私は根っからのあやふやな人間なのですから、いつだって行き当たりばったりでしか物を考えら

 

れない。

 

 明日は何処で何をしているか、自分でも分からない。どうしてなのか説明が着かない。

 


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