千恵さんの言う通りあやふやなのです。
頭のてっぺんから足の先まで、あいまいで自分でもどうしょうもない。
気が着いたらそんな生き方をしていた。
だからこれからも、多分そうやって行くのだと思っている」
「本気でそんな風に考えているの」
あやは不思議な生き物を見る眼付きで高志を見た。
「本気かと聞かれると困ります。言った通りあやふやなのですから。だから僕に漁師になる気が
あるのかと聞かれても答えようがないのです。
ただ今は気に入っているとしか言いようがない」
「高志さんて正直な人なのね」
足元に眼を落として聞いていた清子が短く言った。
「正直かも知れないけれど、何だか悲しいね」
千恵は戸惑う眼付きで高志を見た。
「それに腹が立つわ。私あなたみたいな人に、以前どこかで会ったような気がする。
縁があるのかも。
そうなのね。今少こしだけ判った気がする。そういう人なのね」
あやは先程と違った、はっきりとした視線で高志を見て言った。
「私はさっぱり分からない。高志さんの言葉を言葉通りに、理解することなんてできない」
千恵の顔は曇ったままだ・
その表情を見て高志は少こし狼狽した。
「いやあ、ごめん。僕は時々自分でも理由が分からないことを言うくせがあるんだ。