伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ160

2020-11-05 19:32:16 | ジャコシカ・・・小説

「様子に変わったところでもあった」

 

「いや、特には」

 

あやは高志の視線の先を追った。

 

「なら何か気になることでもあった」

 

「僕の前では何も」

 

言ってから高志は少し考えてからあやを見た。

 

「漁協事務所から戻った時にちょっと気分が悪かったのではと」

 

「顔色でも悪かった」

 

「いや、そうではないけれど、なんとなく、それで具合でも悪くなったかと思って尋ねたのだけ

 

れど直ぐに否定された」

 

 あやは台所から離れて、高志の顔を探るように見た。

 

 「何か気付いたのね。まだ病気は完全には治っていないのに、薬はいくら言ってもちゃんと飲ま

 

ないし、病院だってもう二回もすっぽかしている。私ちょっと見てくる」

 

 彼女は前掛けを外しかけた。

 

 「僕が見てくる。心配ないと思うけれど、大分翳(かげ)って来たから切り上げるように言ってくるよ」

 

 高志はあやを制して立ち上がった。

 

 

 外に出ると海原はもう色を失い、黒く沈み始めていた。

 

 陽は遠く水平線の山波を切絵のように浮かび上がらせて、既に没している。

 

 陽が落ちても暫くは残光で、径は見える。

 

 海に開けた入江の山の斜面は、意外に光が留まる。


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