★★★★★★★☆☆☆
内容は悲惨で重いのに、作品自体の持つ雰囲気は優しくチャーミングです。これも、ひとえに主人公フェロミナを演じるジュディ・デンチの素晴らしい演技によるものだと思います。
アイルランド、カトリック、修道院、、、とくれば、必然的に思い出すのはあの『マグダレンの祈り』。アイルランドの持つ、こうした負の遺産は私の想像以上に大きいもののようです。マーティンがカトリックに対し「クソくらえ」と言い放つ気持ちも分かるというもの。
しかし、フェロミナは、そんな修道院を恨まず、過酷な現実をありのまま受け入れるのです。苦しいけれども、自分の中で消化しようと努力します。その葛藤が実によく描かれています。誰も、何も責めることなく、現実が導かれたすべての物事を赦すのです。彼女のラスト近くのセリフ「赦しには大きな苦しみが伴う」が全て。本作のキモです。
・・・とまあ、良い作品なのは確かなのですが、どうも私にはグッとくるものがありませんでした。実話なだけにストーリーにご都合主義も破綻もない、気の利いたセリフはあるし、ユーモアもある、役者の演技はバッチリ、映像もなかなかキレイ、、、といった具合にオールAなんだけど、A+が1個もない、という感じかなぁ。あまりにもキレイにまとまり過ぎというのか。引力が足りない。
それにしても、宗教って何なんでしょうかねぇ。結局は、人間の観念が生み出したものだと思えば、あらゆる矛盾は致し方なしと思えるのですが。まあ、人は弱い生き物ですけれど。でも、信仰が自分を強くしてくれる、と話す人もいるわけで。何が正しいかなんて信じるモノによって全然違ってくるし。本作の後味の良さとは裏腹に、何とも言えない不可解な気持ちを抱えて家路に着きました。多分、この不可解さは、私が何かの信仰を持たない限り、死ぬまでつきまとうんでしょうな。・・・やれやれ。