その②のつづきです。
◆「親の言うこと聞いてりゃラクじゃん」(by我が姉)
美月は、第5回のラストで、ついにママと暮らしていた家を出るわけですが、家出準備を浩司に目撃されてしまいます。浩司は、一瞬驚くんだけれど、美月の気持ちを聞いて納得したのか、娘の背中を押します。その際に、美月が浩司に言ったセリフが、また実に的を射たものでした。
「ママだけが悪いんじゃない。アタシも、ママと一緒にいるとラクだったし。……きっと、パパも。アタシとママが仲良くしてるのがラクだったんでしょ?」
これはねぇ、、、言われた父親は堪えるでしょう。浩司を演じていた寺脇さんも、なんとも言えない表情で押し黙ってしまいました。こういうことを見抜く力がある美月は、やっぱり賢いと思います。
実は、これと似たセリフをリアルで聞いたことがありまして、それを言ったのは、私の実の姉です。姉は、美月のように状況を洞察して言ったのではなく、単に、自分の思うことをポロリと吐いただけなんですが、、、。
私が、母親が強硬に押しつけてくる見合い話に辟易し、心身共に疲弊していたのを見て、姉はこう言いました。
「なんでそんなに親の言うことに刃向かうの? 親の言うこと聞いてりゃラクじゃん。何かあったときは責任とってくれるし」
“ラク”とは、どういうことか。
奇しくも美月は最終回で言っている。少し長いけど、全文を。
「アタシは臆病でズルくて、ママに嫌われたくないからママの顔色ばっかり気にして、ママの気に入ることだけして、上手く行かないことがあったらママのせいにして自分をごまかして、自分の好きなものも分かんなくて、平気で嫌いなスムージー飲んで、ワンピース着て、ニコニコ教壇に立って、でもそれでいいんだって、アタシってこんなモンだからって……!!」
「何かあったときは責任とってくれる」(姉の言)≒「上手く行かないことがあったらママのせいにして」(美月のセリフ)、じゃないでしょーか。
誰かのせいにすれば自分を正当化できるから、自分を責めなくて良い……ラクである、ってこと。
でも、「人のせいにする」ことは、果たして本当に楽なのか。
ママのせいにしたからと言って、ママが時計の針を巻き戻してくれるわけじゃなし、ママは上手く行かない現実について、実質的に手も足も出ないのである。
ママができることは、せいぜい本人を慰めるか、テキトーなことをいって現実を直視させないか。誠意あるママなら「ごめんね」くらいは言うかもしれないが、それでも何も現実は変わらない。むしろ、本人が いつまでもグチグチ言おうもんなら「いい加減にしなさい! ママが言ったからって、決めたのはあなたでしょ!」とか言って逆切れするのがオチである。
すると、「ママに逆らったら大変なことになるから言うとおりにしたのであって、私が決めたのではない」と思う本人のやりきれなさはまったく解消されないまま溜まる一方である。これが、本当に楽と言えるのか。
◆漬物石な母親
結局、楽じゃなかったんですよね、美月も、本当の心の奥深いところでは。だから、25歳になって爆発したわけです。25歳で爆発できただけ、美月はまだまだ幸せです。大抵の娘たちは、茹で蛙のごとく違和感を抱いたままやり過ごしてしまい、気がついたときには茹で上がってしまって取り返しがつかない状況になっているのがオチです。
本当の「楽」というのは、自由であることじゃないでしょうか。自由とは、自分で自分を偽らないことだと思います。自分だけは自分を裏切ってはいけない。精神的に自立していること。
ただし、これは自分の思いのままに生きる、という意味ではない。思いのままにならないことなど多々あるけれども、思いのままにならない現実を、納得して受け入れる。受け入れるためには、自らが自らの意思に従って選ばなければ。
美月は、自分の好きなものも分からなくなるくらい、25歳まで、自分の意思で選択してきたことがない女性だったのです。これを遅れてきた反抗期と見る人もいるだろうけど、反抗期すら許されなかった抑圧された環境だったということです。物心ついたときから、母親が自分の全身に漬物石の様に載っていたのです。最初から載っていたので、重みが分からないまま成長してしまう。しかし、第三者(松島)が介入することで、その息苦しさの原因が母親という漬物石だったことに気付くのです。
「ママが重いの!!」
気付けて良かったね、美月さん。
◆「親の言うこと聞いてりゃラクじゃん」(by我が姉)
美月は、第5回のラストで、ついにママと暮らしていた家を出るわけですが、家出準備を浩司に目撃されてしまいます。浩司は、一瞬驚くんだけれど、美月の気持ちを聞いて納得したのか、娘の背中を押します。その際に、美月が浩司に言ったセリフが、また実に的を射たものでした。
「ママだけが悪いんじゃない。アタシも、ママと一緒にいるとラクだったし。……きっと、パパも。アタシとママが仲良くしてるのがラクだったんでしょ?」
これはねぇ、、、言われた父親は堪えるでしょう。浩司を演じていた寺脇さんも、なんとも言えない表情で押し黙ってしまいました。こういうことを見抜く力がある美月は、やっぱり賢いと思います。
実は、これと似たセリフをリアルで聞いたことがありまして、それを言ったのは、私の実の姉です。姉は、美月のように状況を洞察して言ったのではなく、単に、自分の思うことをポロリと吐いただけなんですが、、、。
私が、母親が強硬に押しつけてくる見合い話に辟易し、心身共に疲弊していたのを見て、姉はこう言いました。
「なんでそんなに親の言うことに刃向かうの? 親の言うこと聞いてりゃラクじゃん。何かあったときは責任とってくれるし」
“ラク”とは、どういうことか。
奇しくも美月は最終回で言っている。少し長いけど、全文を。
「アタシは臆病でズルくて、ママに嫌われたくないからママの顔色ばっかり気にして、ママの気に入ることだけして、上手く行かないことがあったらママのせいにして自分をごまかして、自分の好きなものも分かんなくて、平気で嫌いなスムージー飲んで、ワンピース着て、ニコニコ教壇に立って、でもそれでいいんだって、アタシってこんなモンだからって……!!」
「何かあったときは責任とってくれる」(姉の言)≒「上手く行かないことがあったらママのせいにして」(美月のセリフ)、じゃないでしょーか。
誰かのせいにすれば自分を正当化できるから、自分を責めなくて良い……ラクである、ってこと。
でも、「人のせいにする」ことは、果たして本当に楽なのか。
ママのせいにしたからと言って、ママが時計の針を巻き戻してくれるわけじゃなし、ママは上手く行かない現実について、実質的に手も足も出ないのである。
ママができることは、せいぜい本人を慰めるか、テキトーなことをいって現実を直視させないか。誠意あるママなら「ごめんね」くらいは言うかもしれないが、それでも何も現実は変わらない。むしろ、本人が いつまでもグチグチ言おうもんなら「いい加減にしなさい! ママが言ったからって、決めたのはあなたでしょ!」とか言って逆切れするのがオチである。
すると、「ママに逆らったら大変なことになるから言うとおりにしたのであって、私が決めたのではない」と思う本人のやりきれなさはまったく解消されないまま溜まる一方である。これが、本当に楽と言えるのか。
◆漬物石な母親
結局、楽じゃなかったんですよね、美月も、本当の心の奥深いところでは。だから、25歳になって爆発したわけです。25歳で爆発できただけ、美月はまだまだ幸せです。大抵の娘たちは、茹で蛙のごとく違和感を抱いたままやり過ごしてしまい、気がついたときには茹で上がってしまって取り返しがつかない状況になっているのがオチです。
本当の「楽」というのは、自由であることじゃないでしょうか。自由とは、自分で自分を偽らないことだと思います。自分だけは自分を裏切ってはいけない。精神的に自立していること。
ただし、これは自分の思いのままに生きる、という意味ではない。思いのままにならないことなど多々あるけれども、思いのままにならない現実を、納得して受け入れる。受け入れるためには、自らが自らの意思に従って選ばなければ。
美月は、自分の好きなものも分からなくなるくらい、25歳まで、自分の意思で選択してきたことがない女性だったのです。これを遅れてきた反抗期と見る人もいるだろうけど、反抗期すら許されなかった抑圧された環境だったということです。物心ついたときから、母親が自分の全身に漬物石の様に載っていたのです。最初から載っていたので、重みが分からないまま成長してしまう。しかし、第三者(松島)が介入することで、その息苦しさの原因が母親という漬物石だったことに気付くのです。
「ママが重いの!!」
気付けて良かったね、美月さん。
(その④につづく)