作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv84126/
以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。
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北欧の街ヘルシンキ。アンサは理不尽な理由で仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらも、どうにか工事現場で働いている。
ある夜、カラオケバーで出会った2人は、互いの名前も知らぬまま惹かれ合う。だが、不運な偶然と現実の過酷さが、彼らをささやかな幸福から遠ざける。
果たして2人は、無事に再会を果たし、想いを通い合わせることができるのか……?
=====ここまで。
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カウリスマキ好きな映画友がオススメしてくれたので、本年の映画初めで劇場まで行ってまいりました。昨年末にアンサを演じたアルマ・ポウスティのトークショーに映画友は行き、彼女の人柄に魅了され、すっかりお気に入り女優の一人になった様でした。
◆カウリスマキ映画
カウリスマキ作品は、『過去のない男』と『浮き雲』しか見ておらず、『過去のない男』はほとんど記憶にない、、、という有様。でも、本作を見て、やはりカウリスマキ調を感じた。『浮き雲』と、テイストは同じである。あまり多くない説明とセリフ、登場人物たちがあまり笑わない……というか無表情なところとか。
普通は、こんな作り方をしたら、素人が撮ったのかと思うような作品になりそうだが、これが映画として成立しているのがスゴいというべきか。
ストーリーも、シナリオスクールの“出会い”とかの課題で書いたら思いっ切りダメ出しされそうなベタな展開である。でも、映画になると、ベタがベタでなくなっているのが、やっぱりスゴいのか。
本作は、「労働者3部作『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』に連なる新たな物語」だそうだが、『浮き雲』を見たときも感じたけど、どこか、ローチ作品と通じるものがある。世の中の片隅でつつましく厳しい現実に晒されながら生きている人々にスポットを当てている点が。でも、本作も『浮き雲』も、ローチ作品のような“怒り”は全く感じない。どこか、達観した語り口である。
こんだけスマホが普及した世の中で、最早“すれ違い”はドラマにならん、、、などと言われて久しいが、本作内では堂々と電話番号がすれ違いの鍵として使われているのが、ある意味斬新だ。で、ホラッパは、一緒に映画を見た映画館前でなら彼女に会えるかも、、、と煙草をスパスパ吸いながらアンサを待ち続けるのだが、諦めて帰ってしまう。一足違いで映画館前に来たアンサは、そこに打ち捨てられている煙草の吸殻の山を見て、ホラッパが自分を待っていたのではないか、、、と感じる…………って、どんだけ古風な男女のすれ違い描写やねん。
でも、それもあまり古めかしく感じないのが不思議。流れて来るラジオニュースはロシアのウクライナ侵攻をひっきりなしに伝えているものの、どことなく風景や小物などから、一昔前の時代を感じさせるからかも知れない。
社会から打ち捨てられそうになりながらもどうにか生きている男と女が、互いに出会いを拾い直して、ひっそり寄り添って行くのだろうと思わせるラストシーンだった。
◆その他もろもろ
アンサを演じるアルマ・ポウスティは、『TOVE/トーベ』で主人公のトーベ・ヤンソンを演じていたお方。作品としても役柄としても、『TOVE/トーベ』より好きだなぁ。
途中、ホラッパと2人で映画館で映画を見るシーンがあって、その映画が、ジャームッシュの『デッド・ドント・ダイ』なんだそうだが、私は未見なので分からなかった。カウリスマキとジャームッシュは親しい、、、というか盟友なのだとか。ただ、明らかにゾンビ映画であるのは分かるので、映画館から出る際に、他の客が「ブレッソンの『田舎司祭の日記』に似ている」とか言っているのは何となく可笑しかった。
この映画館の前には、いろんな映画のポスターが貼られているのだが、それが渋いというか。『若者のすべて』とか『気狂いピエロ』とか、BBと思しき美女の映っているポスターもあったような。古い映画も上映している映画館みたい。
また、終盤で、保健所に連れて行かれそうな犬をアンサが引き取るんだけど、その犬の名前はチャップリンとか。ところどころに古い映画へのオマージュ?っぽいのもあった。
ただまあ、ホラッパはアル中から脱したいと思ってはいるようだが、アル中もあそこまで行くと、なかなか意志で克服できるレベルじゃないと思うので、アンサとしてはちょっと大変かもね。彼女はしっかり者だから、きっちり克服させるかもだけど。
監督引退宣言を撤回してまで撮った作品。パンフの監督インタビューを読むと、ここまでグダグダ書いて来た古典的とも言えるファクターのあれこれは、当然織り込み済みであり、その上で、敢えてラブストーリーを書いたのだということを言っている。そりゃまぁそうだろう。こんな映画、カウリスマキでなければ映画として成り立たないはずだから。
ラストシーンがね、、、イイです。実にさりげなくて。
ワンコが可愛かった(カウリスマキのワンちゃんらしい)