自分が死んで約100年の後、自分の描いた絵が58億円もの価格で売れたことを、あの世で彼はどう思っているのだろうか・・・。
信仰にも、絵にも、友情にも、恋愛にも報われなかった彼の人生。彼の、文字通り生命線だった弟も、報われない。ないない尽くしの彼の人生を、常に「貧乏」というBGMで描く、アルトマンにしては珍しい伝記映画であります。
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜
とにかく、ティム・ロスが、数あるゴッホの自画像からそのまま抜け出てきたみたいで、なんだか本当にゴッホってこんなだったんだろうな、と思わせる凄みがあります。
・・・が、私、アルトマン作品を見てくる中で、初めて睡魔に襲われました、これ。しかも、ほんのちょっととかではありません。何度も、何度も。なので、何度も何度も見るハメになりました。後半、耳切り事件以降は覚醒しましたが。眠くなったのはちょっとショックだったけど、でも、これは仕方ないなー、と。
俳優さんたちは、皆、熱演なのですが、なんつーか、こう、アルトマンっぽさはもちろんあるんだけれども(冒頭のオークションシーンからのオーバーラップとか)、アルトマンにしては、ものすごくベターッとした感じで、ずーっと同じトーンで展開するので、これが私にはキツかった気がします。
もしかして、登場人物が、ほとんど、ヴィンセントとテオとその妻が中心で、彼お得意の群像劇でないから、人物描写が単調になった、ってことでしょうか。まあ、いずれにしても、話自体も非常に暗く救いのないもので、気分的に滅入るだけでなく、怒りさえわいてくるというか(だったら眠くならんだろう、という気もするが)・・・。
もちろん、怒りの対象はヴィンセントですが。とにかく、彼は、「お金」はどこからかもらってくるものであり、稼ぐという概念が1ミリもないわけです。自分の絵が売れないことに彼は怒るけれども、じゃあ、売れる絵を描こう、ということも絶対しない。そうすることは、絵描きの矜持を捨てることにもなりかねないからできっこない、ってところなんでしょうなぁ。まあ、大なり小なり、芸術家ってのはパトロンの世話になっているもので、彼にはそのよき理解者が現れなかった、ってことだわね。それくらい、彼の絵はアクが強すぎた、ってことなんですかね。
私は、絵を見るのは好きな方ですが、美術に関する一般常識はあんまし持ち合わせていないので、ゴッホについても、通り一遍のエピソードくらいしか知りませんが、本作は、その通り一遍のエピソードを超える話がほとんど出てこなかったのも、睡魔に付け入る隙を与えた一因かもしれませぬ。終盤の、麦畑で自身を撃つシーンはなかなか良いと思いますけれど。
・・・例の「ひまわり」は、学生時代、購入した会社の美術館でバイトをしていたので、実物を飽きるほど見ましたけれども、こんなものになんで58億円も出すんだろう、と思ったのが正直なところです。というか、58億円って何なの? どれくらいのお金なの? 絵一枚に掛けるお金として、それってアリなの? もっと生きたお金の使い方ってあるんじゃないの? ということが頭の中でグルグルしておりました。ゴッホだって、いまさらそんな天文学的な値段つけられたって、「なんのこっちゃ」だと思うんですけれど。本作のティムゴッホを見て、ますますそう思いましたね。あ、これってアルトマンの術中にハマったってことでしょうか。
お金は稼ぐもんじゃなくてもらうもの byゴッホ
★★ランキング参加中★★
クリックしていただけると嬉しいです♪
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます