2001年、アメリカ・ボストンの地元紙、ボストングローブに新しい編集局長バロンが就任した。バロンは着任するなり、ゲーガン事件を取り上げたコラムについての掘り下げが足りないことを指摘、ゲーガン事件には背景があるはずだと見抜き、特集記事を扱う“スポットライト”チームに事件の真相をもっと探れと冷徹に指示を出す。
ゲーガン事件とは……、ボストンのカトリック教会の神父ゲーガンが複数の子どもに性的虐待を働いていたことが明るみに出たもの。
読者の半数以上をカトリック信者が占めるボストングローブにとって、カトリック教会は、いわばアンタッチャブルな領域だったのだが、バロンの指示に動き出すスポットライトチームの記者たち。取材を進めるにつれて、この事件は一神父の疑惑にとどまらないことが分かってくる。バロンの読みは当たっていたのだ。
現実に、2013年、ローマ教皇ベネディクト16世が辞任するに至った一連の大スキャンダルの発端となったスクープ記事が世に出るまでの、スポットライトチームの記者たちの苦闘を描く、地味で渋いドキュメンタリー風映画。
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実話モノは、基本あまり得意じゃないのですが、これは結構イケそうな気がしたので劇場まで見に行ってきました。
予感は的中。余計なドラマチック要素などを一切排したと思われる、実に地味で渋~~い作品でございました。あくまでも現実に起きたことを世間に公開したい、という純粋な思いで作られたことを感じさせられる、マジメな映画でした。
◆平均:4%
しかし、、、ボストンだけで90人近い神父が子どもに性的虐待を働いていたということが事実だってんだから、恐ろしい。、、、と思ったけれど、この数値は、別に驚くような数値じゃないらしい。パンフの町山氏の解説では、アメリカ全体の男性人口に対する性犯罪者率と比べても、カトリック聖職者内の性犯罪者率は高くない、、、普通ということだそーです。聖職者11万人のうち、虐待者は約4400人だったとか。つまり、4%。4%って、アベレージなんだ、、、。0.4%じゃないのね。
……ということは、日本ではどうなのかというと、日本の人口1億人として、400万人が、、、!? がーん、、、。
しかし、一人の神父が何十人もの子ども(ほとんどが少年)を餌食にしていた、というその被害者の数字は、やはり明らかに異常な数字らしい。この事件での問題もそこであって、カトリックが組織的にこういう神父を野放しにし、いや、むしろ世界各地の教区に転属させることで被害を拡散させたのだから、これはカトリック、バチカンの罪は重いでしょう。
◆神父は神か?
神父が妻帯を禁じられているから、という原因論が作中でも出てきましたが、そういう問題じゃない、これは。神父は、餌食にする子を周到に狙い、表沙汰にならないように二重三重に手を打つんだから、分かっていてやっているわけです。病気じゃない。神父としての絶大な権力を実感したかったんじゃないか。それが明るみに出ないことで、さらに自らの権力の絶大さを味わい、究極の悦楽に浸ったのではないでしょうか。
カトリック信者にとって、神父とは神にも等しい、極端に言えば、イエスの化身みたいな存在らしい。、、、信者でない者から見ると、もうそれ自体が異常だとしか思えない。神父だって、喰って出すだけの人間ですよ、って。何が“神”だよ。バカバカしい。
辞任したベネディクト16世も、ドイツのある教区で枢機卿を務めていたときに、教区内のある神父による子どもの性的虐待の隠蔽に加担していたとか。
しかし、、、教会って、歴史的に見ても実に大きな罪を繰り返してきていますけれども、どうしてカトリックって廃れないんですかね。宗教って何のためにあるのでしょうか? 本当に分かりません。
◆彼らの取材の目指すもの
、、、というわけで、バロンは、まさかバチカンにまでコトが及ぶとは思ってはいなかったようですが、少なくとも、ボストンのカトリック教会全体が組織的に隠ぺいしていることを、コラム1本読んだだけで直感するというのは、さすがです。バロンがユダヤ人ということも、関係ないとは言えないかもですね。
スポットライトチームは、リーダーのロビー(マイケル・キートン)を始め、たった4人なんですが、彼らは実によく動き、粘ります。印象的だったのは、サーシャ(レイチェル・マクアダムス)が、かつて性的虐待を働いたと思しき神父を訪ねるシーン。今は隠居の身らしいその元神父は、あっさり性的いたずら(?)の事実を認めたかと思うと、こう言い放ちます。「あれは強姦じゃない」 見ていて、正直、吐きそうになりました。
本作は、飽くまでスポットライトチームの真実へのアプローチが主題ですので、虐待行為や現役の神父たちと記者がやりあうシーンは皆無です。とにかく周辺者の取材を丹念に行います。被害者、元神父、精神科医、弁護士、、、などなど。どの取材対象に聞く話も、それはもう、恐ろしいというか、信じられないような内容ばかり。
一番衝撃的だったのは、実は、教会と示談交渉していた弁護士が、20年も前にボストングローブ社に、神父による子どもへの性的虐待を告発していたこと。そして、それについて、ボストングローブは埋め草記事にしただけで、まったく動かなかったこと。その当時の担当がロビー本人で、彼自身、何で動かなかったのか記憶にないと言っていましたが、、、。恐らく、相手がカトリック教会ということで、思考停止になっていたのでしょう。
マーク・ラファロ演じるレゼンデスが決定的証拠を掴んだ後の、チーム内の激しい葛藤が見ものです。早く記事にしようと焦るレゼンデスに対し、カトリックという組織の犯罪であることを暴かなければダメだというロビーとバロン。ロビーは、この取材が、ただのスクープではなく、被害者の根本的な救済と、再発防止につなげなければいけない、事件を矮小化させてはならないという、本質を弁えていたわけです。レゼンデスも頭ではそれを分かっているけれども、他紙に嗅ぎつけられたくない、スクープをものにしたいというチンケな記者根性が頭をもたげてしまった、ということでしょう。この、編集部での激論が、本作の最大の見せ場でしょうか。
こういう報道に携わる記者の仕事というのは、結局のところ、自分が取材し世に送ろうとしているものが何につながるのか、という本質をきちんと踏まえていないと、非常に危うい仕事です。まあ、当たり前のことなんですが。、、、やはり記者も人間、欲にかられて誤りを犯すことは、普通に目にすることですが。本作での記者たちもたくさんの間違いを犯してきたはずです。このスクープでそれらが帳消しになる訳でもなく、常に、自らと向き合わなければならない過酷な仕事です。
マスゴミなどと揶揄されますが、もちろん、批難されるようなメディアや報道は多々ありますが、こうして地道に、過酷な仕事を黙々とこなしている記者も大勢いるはずです。そういう人たちに、まさにスポットライトを当てた本作は、同業者たちに希望とやる気を与え、初心に立ち返らせるパワーがあると思います。
◆ジョン・スラッテリーがイイ!
マイケル・キートンは、チームリーダーとして清濁併せ飲むベテラン記者を渋く演じています。マーク・ラファロは、なんというか、ちょっと野生児っぽい、粗削りな猪突猛進型の男を、ほとんど地でやっているのでは? と思わせる熱演ぶり。バロンを演じたリーヴ・シュレイバーという方も、キレる男という感じが良く出ていてなかなか素敵でした。
ロビーの上司で編集部長のベン・ブラッドリー・Jrを演じたジョン・スラッテリー、TVドラマ「デスパレートな妻たち」以来目にしました。デスパでの金持ちで高慢な市長役とは打って変わって、一本筋の通った頭の良い男で、すんごいカッコ良かった!
パンフに、実在の記者と、演じた役者の2ショット写真が出ていて、どれもイイ感じの雰囲気です。これを見るだけでもパンフを購入する価値あるかも。
ますます宗教がよく分からなくなりました。
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ホント、怖い組織犯罪です。ラストで被害のあった地域のリストが出ましたけど、その広さ、多さにゾッとなりました。
マーク・ラファロ、凄い熱演でしたよね。フォツクスキャッチャーの時とはまた違う顔で、さすがでした。実在のレゼンデス氏と雰囲気がそっくり! ああいう記者さん、いてもらわないと困ります。
たけ子さんは、アメリカのテレビドラマあまりご覧になりませんか? デスパ、面白いですよ! かなりブラックです。ジョン氏は、シーズン3と4に出ていたと思います。
私もこないだ、やっと観ることができました~!ほんと、地味で渋い映画でしたね!でもオスカー獲るだけあって、秀作でした。
教会って、小児愛者の楽園じゃん?!と戦慄しちゃいましたわ。おぞましい!怖い!児童を強姦、いたずらだなんて、想像しただけで吐き気がします。聖職者がその立場を利用して、子どもを汚らしい欲望の毒牙にかけるなんて、犬畜生にも劣る卑劣さですよね~。
私はマーク・ラファロの大ファンなので、優しき熱血漢な彼にキュンキュンしちゃいました。ジョン・スラッテリーさん初めて見ましたが、好演してましたね!