料理ができない母親の後釜に座った継母ポッター夫人を、主人公のナイジェルは徹底的に嫌い、認めない。彼女の料理の腕を除いては、、、。
イギリスで活躍する料理家のナイジェル・スレイター(本作を見て初めて知った)の自伝が原作だとか。
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料理が上手い、下手、というのは、一体、何なのだろうか。
私自身は、腕が良いとは言えないが、料理自体は好きである。余談だが、パートナー(以下Mr.P)が家にいるときは料理をしたがるため、私はもっぱら片付け役(Mr.Pには片付けという概念とセンスと能力がもともとない)なのだが、正直、腹立たしくなることもしばしば。私が料理をしても、ヤツは片付けをしないのだ(というか、できないし、教える気にもならないレベル、、、。私はそこまで根気良い人間ではない)。せいぜい、コンロ周りをガシガシ拭かせることくらいしか、ヤツができることはないのだ。ま、それだけでも助かるが、、、。
で、好きである料理だが、いくら好きとはいえ、他人様にふるまっても恥ずかしくないレベルとは、到底言い難い。Mr.Pは美味しいと(お約束のように要求もしていないのに必ず言う)食べているし、私自身も、まあ、悪くないとは思うが・・・。他人様にふるまっても恥ずかしくないと言えるのは、定番レシピがあるお菓子の数種類だけだ。
正直、要は、訓練(=頻度)だと思っていた、料理の腕の良し悪しは。もちろん、それには限度があるし、本当にセンスのある人は味だけでなく、創造性のあるものに発展させられるのだと思う。でも、他人様に出せるものレベル、であれば、訓練というか、とにかく回数をこなすことだと。だから、誰でも、ある程度こなせば、それなりになると思っていた。
が、、、。本作の主人公ナイジェルの実母は、そもそも、「料理ができない人」なのである。材料を切ったり、計ったり、ということさえできない。生野菜を「汚い」という。フレッシュチーズも彼女にとっては「汚い」のである。だから、缶詰ばかりの食卓。あとは、トースト。この人には、食事を作る、という概念がないし、能力もないのだ。こういう人がいるのか、、、と正直驚いた。
・・・でも、良く考えれば、Mr.Pに片付けの概念も能力もないのと同じだ、、、。う~、絶望的。
しかしナイジェルは、そんな実母が大好きで、心から愛していた。哀しいことに、この実母は、ナイジェルが小学生の時に病死する。
同じく不器用な、でも、そこそこ金持ちの父親は、早速、家政婦を雇う。その家政婦ポッター夫人が、グラマー(というかデブ)で父親に色目を使い、見るからに品のない女性。ナイジェル、彼女を徹底的に嫌い抜く。ま、当然の反応だよな、、、。
ただ、ナイジェルが彼女から多大な影響を受けたものが一つ。それが「料理」だった。彼女の作るものはどれもすごく美味しい。食事ってこういうものなのか、と、ナイジェルは思ったことだろう。
そして、彼女の作るレモンパイを超えるレモンパイを作ろうと奮闘する。ここが、本作の核心部かな。
ここで、彼女のレモンパイに負けないレモンパイを作ったことで、ナイジェルとポッター夫人の間には、決定的な、埋め難い溝ができてしまったのだと思う。ナイジェルが、ポッター夫人に教えを請えばそうはならなかったし、教えを請わずとも彼女のレモンパイに並ぶものを作れずに終わってもそうはならなかったはず。ここで、2人は完全にライバル同士として存在することになってしまったのだ、、、。
思うに、2人とも、もの凄い意地っ張りの頑固者である。でもって、その間に立つ、ナイジェルの父親がもの凄く立ち回り下手。自分のことしか考えていない。2人が仲良く出来ない最大の原因は、父親がその緩衝剤に積極的になろうとしなかったことだ。その自覚がまるでない、子どもみたいな父親である。
でも、そんな父親も、ナイジェルが実母を亡くした直後に、なけなしの貯金をはたいて買ってきたタラを真っ黒に焦がしてしまった夕飯のおかずを「うん、美味しい」といって、帰宅するなり嬉しそうに食べるのである。この瞬間だけ、ちょっとこの父親をイイ人だと思った、、、。
この父親、ポッター夫人の作る美味しい料理を食べすぎたせいか、早死にする。もともと相容れないポッター夫人とナイジェルは、唯一の接点を失い、ナイジェルは早々に独り立ちする。・・・ま、当然の成り行きか。
ちなみに、成長した青年ナイジェルがゲイであることを思わせる描写があり、その伏線として、少年期の彼が庭師のジョシュの裸を盗み見る、というシーンがあるんだけど。あんまし必要なかったのでは、、、。ゲイであるかないかなんて関係ないだろ。別にあっても良いけど、本作では何の意味もないと思う。
本作を見て、「男は胃袋で捕まえろ」が真理だなんて思うのは、ちと違うと思うね。ナイジェルの父親は、現実主義者だった、ってこと。ポッター夫人があそこまで料理が上手くなくても、あの父親は結婚していたよ。そういう男、あの人は。
幼いナイジェルが、亡き実母のドレスを持って踊るシーンが切ない。あの母親もどんな思いで亡くなったのか・・・。
ま、当然、私が本作を見たのは、ヘレナ・ボナム=カーター出演作だからなんですが・・・。この年、彼女はあの『英国王のスピーチ』に出演しており、あっちでは王妃役、こっちでは下品な後妻役、と、さすが!なところを見せてくれています。彼女のファンとしては、どっちのH・B・Cもチャーミングで好きですが。
映画としては、まあ、キライじゃないです。
レモンパイは大嫌いな継母の味
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