映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ボヴァリー夫人とパン屋(2014年)

2015-09-07 | 【ほ】



 フランス・ノルマンディー地方のとある町で、長年勤めた出版社を辞め、父親の後をついでパン屋になったマルタン(ファブリス・ルキーニ)。

 ある日、マルタンの家の隣に、イギリスから若いイギリス人夫婦が引っ越してきた。夫婦の名前はチャーリー&ジェマ・ボヴァリー。マルタンは、勝手に小説「ボヴァリー夫人」とジェマ(ジェマ・アータートン)を重ねあわせて見てしまうのだった。

 そして、あろうことか、ジェマは、小説の中でボヴァリー夫人、つまりエマがしていたことと同じこと(=不倫)をしてしまっていることに驚いてうろたえる。このままじゃいかん、、、なんとかせにゃ、、、。

 フローベールの小説「ボヴァリー夫人」を下敷きに、パン屋という第三者の視点から見た、ゼンゼン別の物語が展開されるユニークな作品。

 
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 見に行こう、行こう、と思いつつ、なんやかやと先送りしているうちに、サービスデーで見に行ける時間の上映がなくなってしまった、、、。ので、夏休みをとって、ついでに美術館にも行って、ようやっと見た次第。大して期待していなかったけど、なかなか面白かったです。

 事前に『ボヴァリー夫人』の映画2本で予習しておいたのは、まあ良かったです。何も知らずに見たら面白いところが分からなかったと思うので。

 マルタンは、パリで出版社勤務の生活に疲れて田舎に引っ込んだんだけど、毎日毎日パンを焼くだけの生活に、ちょっとばかし飽きていたところへ、ボヴァリー夫妻が移住してきたわけです。マルタンの単調な日常は一転、刺激的な日々へ変貌します。

 隣人夫婦、特にジェマの行動が気になって仕方がないのですが、気になる理由はもちろん小説と夫婦の名前が一致するからだけはありません。ジェマの弾けるような若さ溢れるセクシーな魅力にKOされたからです。ジェマが散歩している後姿を見ながらの独白「この何気ない彼女の仕草に一瞬にして10年間眠っていた性欲が目覚めた」、って、、、。正直過ぎなマルタンです。

 もう、ここからはマルタン爺さんの妄想全開。別にボヴァリー夫妻は現実の生活をしているだけなのに、マルタン爺さんは、勝手に小説に当てはめて、勝手にコーフンしてるわけね。自分がジェマの相手になることがないのは分かってる。でも、ジェマのあんなことこんなことを妄想して、、、うひょ~!!みたいな。妄想しているだけなら良かったんだけど、なんと、マルタン爺さん、小説に重ね合せてジェマの不倫に介入しちゃう!! もう、ほとんど酔ってますな、妄想の世界に。

 途中、マルタンが、パン工房にジェマを案内するシーンがあって、そこで、ジェマに生地の捏ねを体験させてあげるんですが、演出がちょっとわざとらし過ぎで引きました。まず、ジェマの生地の捏ね方。もう、まんまセックスを思わせる触り方。でもって「ここ暑いわ」とか言って、ジェマはセーターを脱いだり、髪をかき上げたりするんだけど、その後、その手でまた生地を捏ねる。「汚ねぇなあ」と内心ツッコミを入れた人は私だけじゃないでしょう、きっと。マルタンとの官能シーンってのは分かりますけど、工夫がなさ過ぎ。あんなわざとらしくやらなくても、十分官能的なシーンになったのに、もったいない。

 元の『ボヴァリー夫人』みたいのを期待してしまうとトンデモ作品だけど、これは飽くまで、タイトル通り『ボヴァリー夫人“とパン屋”』で、“妄想爺ぃの覗き話”なのね。

 強いて元の『ボヴァリー夫人』に通じるところがあるとすれば、ジェマとエマに共通するキャラかなぁ。どちらも男に翻弄される人生、、、つまり、主体的に生きられない女、ですかね。

 こういう主体性のない(というか精神的に自立できていない)女性で、見た目が美しいと、悲劇だよねえ。美しいから男は寄ってくるけど、ロクなのがいない。男を自らの審美眼で主体的に選ぶということが出来ない。害虫ばっかし引き寄せちゃうアダ花みたいな、、、。

 とはいえ、私は、ジェマを演じたジェマ・アータートンが、さほど美しいとも思えなかったクチでして。テレンス・スタンプ主演の『アンコール!!』で見た時も、あんまし好きじゃないなぁ、と思ったんだけど、、、。顔も、まあキレイだけど、すごい美人じゃないし(と、作中でもマルタンの妻のセリフにある)、スタイルもセクシーだけど、私からすればちょっとゴツ過ぎ。私が最高にセクシーだと思う女優は、やっぱしモニカ・ベルッチなんで。細過ぎず、太すぎず、出るところは思い切り出て、くびれるところはしっかりくびれる、、、。そこへいくと、ジェマ・アータートンは、肩幅広くって寸胴で太いんだよなぁ。まあ、これは好みの問題なんで、別に良いのですが。

 でもって、ジェマの不倫相手の青年エルヴェを演じたニールス・シュナイダー。美青年という設定で、なるほどギリシア彫刻っぽい(実際、彫刻同様、全裸になっておられますし)けど、まあ、あんましそそられない、、、。うーーん、イマイチ。

 そうそう、イイ味だしていたのが、マルタンの奥さんです。イザベル・カンティエさんというらしい。マルタンがジェマに悩殺されてポカーンとなっても、呆れて見ていられる余裕のある奥さんです。嫌味を言ったりもしない。ジェマを「とびきり美人じゃない」と言うのも、別に嫉妬からじゃないのは明らかだし。きっと、奥さんの方が若い男にポカーンとなったら、マルタンは焼きもち焼くような気がしますけどね。でも、歳を重ねて、こういう夫婦になれるのっていいな~、と思います。

 それにしても、フランスのパンって、どれもみんな固そうですね。日本人はモチモチが好きだそうで、同じパンでもフランス人とはかなり好みが異なるとは聞いていましたが。捏ねたり焼いたりしているところは美味しそうなんだけど、出来上がったパンは、あんまし食べたいと思うものがなかったです。

 、、、と、ビジュアルでの文句ばかり書いているような。でも、ラストの意外性もなかなか(賛否あるとは思いますが)で、映画としてはかなり楽しめますヨ!






文学好き妄想爺さんの妄想全開なオハナシ。




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