作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv85076/
以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。
=====ここから。
視覚障がいを持つ息子は、ある日、父親が血を流し倒れているのを発見する。
息子の悲鳴を聞いた母親が救助要請を行うも、すでに男は息絶えていた。当初は転落事故かと思われたが、その死には不審点が多く、しだいに被害者の妻でベストセラー作家のサンドラに殺人容疑が向けられていく。
無実を必死に訴えるサンドラだったが、事件の真相を追うなかで、夫婦の嘘や秘密が明らかになる。
=====ここまで。
2023年、カンヌパルムドール受賞作。
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興味ある新作がいくつかありながらも、何となく劇場に行くのが面倒で、今年に入って劇場での新作鑑賞は元日以来。昨年から話題になっていた本作、公開を楽しみにしていたので、これは面倒に思うことなく行けました。このメンドクサイ症候群、いつまで続くんかなぁ、、、。
それはともかく。期待値上げ過ぎだったかも。以下、ネタバレしておりますのでよろしくお願いします。
◆殺人か事故・自殺か
上記あらすじからも分かる様に、見る者としては、事件の真相は何か?に関心が集中するんだけど、案の定、本作ではそこは分からないままである。で、本作を見れば分かる様に、事件の真相などはどうでも良いのである。
……と書いておきながら、敢えて、私の個人的な見解を先に述べておくと、これは殺人ではなく、自殺(or事故)でほぼ間違いないと思う。何でかって? あんな夫、殺すに値します?? 殺すことで、サンドラに何のメリットが?? 他にもそう思った理由はあるけど(後述)、ほぼこの一点において、私はサンドラはあの夫を殺していないと思った。
でも、ネットの感想を拾い読みすると、殺された夫・サミュエルに同情的な人の方が多い印象。へぇ、、、。
このブログでも時々書いているけど、男から女への嫉妬は本当に質が悪い。サミュエルは、自分が小説を書けないのを妻サンドラのせいにして罵り八つ当たりして、サンドラの客が来れば大音量で音楽を鳴らして邪魔をするような男である。もう、この描写だけで、サミュエルの人間性が大体察せられる。妻が社会的に成功しているのが気に入らないのだ。これで、妻も同じように小説家として鳴かず飛ばずだったら、サンドラが家事に積極的でない妻だったとしてもサミュエルはサンドラにあんな風に突っかかったり嫌がらせをしたりはしないだろう。言ってみれば“小っちぇ”んである。小っちぇければ小っちぇえほど嫉妬心がデカくなる。しかもネチネチ、グチグチ、、、、知るかそんなもん!と、そらキレるわな、サンドラも。
中盤から法廷での応酬になるんだけど、本作の趣旨は、真相を暴いて白黒つけるというものではない。この事件(というか事故)では物証がほとんどなく、関係者の証言だけが頼りなので、真相なんてものは、サンドラにしか分からない。そして、本作は“実はこうでした”的なサンドラの回想シーンなどは全くない。むしろ、真相は分かりませんけど、どうします? という問いかけだ。
まあ、本作はフランスの法廷が舞台だけど、日本の法廷モノでも物証がなければ似たような感じの話になるだろう。で、疑わしきは罰せずが一応の原則なわけだから、本作でも、サンドラは無罪になる。
が、本作では、サンドラには不利な証言もあって土壇場まで、下手すると有罪になりそうな雰囲気で進行する。終盤、無罪への決定打になったのが、被害者と加害者の息子・ダニエルの証言である。この展開をどう受け止めるか、、、なんだが、私はあんまし好きじゃないな~、と感じたクチ。事実関係を争っている状況で、トドメを刺すのが、当事者たち子供の極めて情緒的な証言、てのは法廷モノとしてどうなのか?とね。まあでも、法廷モノに擬態した人間ドラマだと考えれば、これもアリなのか。
いずれにしても、あの状況でサンドラに有罪の判断がくだされたら、フランスは「推定有罪」をやらかすかなりヤバい司法ということになるから(日本も言えた義理ではないんだが)、ストーリーとしては当然の結論だろう。
◆似たもの夫婦
……と、ここまでサンドラに肩を持つようなことを書いた来たのだが、ちゃぶ台返しをするようだけど、私はサンドラのことは好きではない。
ダニエルは視覚障害があって(この描写も、序盤は全盲かと思わせるのだが、中盤以降に全盲ではないと分かる)、その原因が、夫・サミュエルの不注意による事故(詳細は分からない)だってことなんだが、それによって、夫婦間に深刻な亀裂が入り、セックスレスカップルになったというんだが、それで寂しくなって女性と不倫した、、、と法廷で本人が証言する(ダニエルはそれを傍聴席で聞いている)。
別に不倫したから好きじゃない、と言っているのではなくて、つまり、このサンドラとサミュエルの夫婦は、互いに他罰思考で似た者同士なんである。割れ鍋に綴じ蓋とはよく言ったもんで、この夫婦も然り。どちらかが善良なんてことにはなり得ない。
大体、この夫婦、息子のことを互いに押し付け合っており、しかも視覚障害のことを殊更ネガティブに捉えた発言が多く、ちょっといかがなものかと感じた。
この夫婦の悲劇は、サミュエルにサンドラほど才能がなかったことよりも、サンドラの方がサミュエルより自身の欲望に忠実な人だった、ってことだろう。
不倫の件もそうだが、折角のアイディアを作品化できないサミュエルを見ていて、じゃあアタシが!と小説に仕上げてしまったり、視覚障害を負った息子の世話を自分より時間に余裕があるサミュエルに任せっきりにしても何ら疑問に感じなかったり、、、。
互いに相手のために自分が譲歩していると勝手に拗らせているのは同じだが、それを鬱鬱と溜め込んでいるのはむしろ夫のサミュエルであり、この夫婦間で殺人が起きるなら、殺すのはサミュエルで、殺されるのはサンドラじゃない?
私が“サンドラは殺していない”と感じた所以はココであり、夫婦間で心理的に抑圧されているのはサミュエルだからである。サンドラは夫に殺意を抱くまでの抑圧はないと思う。
あんな嫌がらせをするような夫だから、殺人に見せかけた自殺を図った、、、と考えてもおかしくないんじゃないか、とさえ思っている。
◆パルム・ドッグ賞
本作では、ワンコが大活躍するのだが、終盤で、私にはちょっと理解できないシーンがあって、、、これが今も引っ掛かっている。
というのも、ダニエルがワンコにある実験をするんだが、この意味がよく分からない。サミュエルが自殺未遂を起こしたことがある、、、というサンドラの証言の中で、サミュエルの吐しゃ物が云々というのがあるんだが、そのときのことを思い出したダニエルが再現実験(?)をする。ワンコにアスピリンを多量に服用させて、その反応を見るというもの。
結果的に、この実験でダニエルは、母親サンドラの言っていることが事実だと考えて(?)最終的な証言をすることになったのだが、つじつまが合わない気がするというか。
ワンコは人間の吐しゃ物でも平気で食べてしまう動物なので、そうすると、サンドラが、サミュエルの吐しゃ物を処理したってのは??である。ダニエルが泣きながらその状況を話している内容も、イマイチ??である。
あのシーンは、もう一回見れば理解できるのかしらん??
まあ、とにかく、あのワンちゃんは実に素晴らしい役者でありました。パルム・ドッグ賞だったとか。納得です。
あと、サンドラの弁護人役のスワン・アルローがなかなか渋い中年男だった。誰かに似ている、、、と気になっているんだけど、誰だかピンと来ない。あの「女の一生」のジュリアン役だったとは、、、!! 本作の方が、ゼンゼン魅力的だったよ。
150分の長さは感じなかったけど疲れた、、、。
OH!ご覧になったのですね!私も早く観たいです!でもこっちでは今月半ば公開。これだから田舎って!😠
ザンドラ・ヒュラー、トニ・エルドマン以来すごく好きな女優さんなので、注目と絶賛が喜ばしいです。落下の解剖学、周囲におすすめしたいけど、ゴールデンカムイとか女子高生が戦時中の日本にタイムスリップする映画とかに感動してるみたいだから、やめたほうがいいすでね💦ゴールデンカムイ、実は観たいんだけど(笑)
見ましたー! 期待しちゃっていたのか、意外に普通かな、、、という感じでした。
面白かったし、よく出来た映画だと思いますけど。
トニ・エルドマン、見たいと思いながら未見なんです。見なくては!
ゴールデンカムイって面白いんですか? やたら話題になってますよね。
たけ子さんの感想が今から楽しみです♪