作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv68447/
以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。
=====ここから。
エルサレムに暮らすパレスチナ人青年サラーム(カイス・ナシェフ)は、1967年の第3次中東戦争前夜を舞台にした人気ドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』の制作現場で、言語指導を担当している。しかし、撮影所に通うためには、毎日面倒な検問所を通らなくてはならなかった。
そんなある日、サラームは検問所のイスラエル軍司令官アッシ(ヤニブ・ビトン)に呼び止められ、咄嗟に自分はドラマの脚本家だと嘘をついてしまう。アッシはドラマの熱烈なファンである妻に自慢するため、毎日サラームを呼び止め、強引に脚本のアイデアを出し始める。困惑するサラームだったが、アッシのアイデアが採用されたことで、サラームは脚本家へと出世することに。
ところがドラマが終盤に近付くにつれ、結末の脚本をめぐり、アッシと制作陣の間で板挟みになったサラームは窮地に立たされる……。
=====ここまで。
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新聞に出ていた評を読んで、俄然見たくなって、劇場に行ってまいりました。
◆宣伝に偽りのない珍しい映画
パレスチナについてなんて、ほぼ無知に等しく、ぼんやりとしか知らなかったところへ、今年、TVの放送大学の講義で高橋和夫氏の「パレスチナ問題」をたまたま見掛けて、結局全15回見てしまった。
で、ぼんやりしていたのが、ちょっと輪郭が見えてきたくらいには理解したパレスチナ。まあ、それでも複雑過ぎる彼の地の事情については、まだまだ無知の域を出ていないのだけれども、その講義のおかげで、本作の評にも興味を持てた次第。
それに、何と言ってもその評には、“ラストで爆笑”みたいなことが書いてあったので。ストーリーと背景から言って、爆笑するオチってどんなん??と単純に興味が湧いた。
オチがスゴイと言われる映画で、ホントにスゴイ映画はほとんどないが、本作は、全く観客の想像を超えた展開にしたところがスゴイ。こういう映画の場合、オチを“読めた”という人は必ず出てくるものだが、それは多分、見終わってから“読めたと思った”だけだろう。それくらい、え゛ーーーーーっ!!なオチだった。しかも笑える。劇場でも爆笑だった。
だから、どんなオチかはもちろん書かないけれど、そのちょっと手前までは触れるので、これから本作をご覧になる予定の方は、ここから先は自己責任でお読みください。
アッシは、ドラマのラストで、主役の2人、つまりパレスチナ人女スパイと、ユダヤ人将校を結婚させろ!!とサラームに迫る。それ以外のラストを書かせないために、サラームのIDまで取り上げてしまう。サラームはエルサレムの自宅にも帰れなくなり、仕方なく、ドラマのスタッフ陣に、ラストに考えている2人の結婚式のシーンを話すが、サラームの叔父であるプロデューサーは、、、
「よし、じゃあ、その花嫁のブーケに仕掛けた爆弾が爆発して終わりにしよう!」
……彼らにとっては、たとえドラマの中であっても、パレスチナ人がユダヤ人と結婚なんて、あり得ない!!!という訳だ。結婚すると見せかけて、自爆テロ。いくら何でも、メロドラマにはエグすぎるオチじゃねぇ?
でも、そんなオチにしたらアッシを怒らせるのは必至。サラームは苦悩した挙げ句、、、、どっひゃ~~~! ……というシーンを書き上げる。
そのおかげで、『テルアビブ・オン・ファイア season2』も制作されるというエンディングになっている。果たして、サラームはどんなオチを書いたんでしょう。それは見てのお楽しみ。
◆パレスチナとイスラエル、とか。
サラームを演じているのはパレスチナ人の俳優だし、アッシを演じているのはユダヤ人の俳優。でも、ヘブライ語もアラビア語も、私には違いが全く分からなかったし、パレスチナ人もユダヤ人も、そんなに容貌に違いはない。
インドとパキスタンもそうだけど、第三国の人間から見たら、似たような姿形をした人々がいがみ合っているようにしか見えないのだよね。
本作のスゴいところは、もちろんオチのぶっ飛びぶりもなんだが、この緊迫した両者の関係にあって、その深刻さも内包させた笑いに仕上げているシナリオだ。映像に低予算ぽさは漂うものの、実に巧妙な構成に、ただただ圧倒させられる。当たり前だが、決しておふざけではなく、それでいて所々に笑いを込め、互いを揶揄する描写もふんだんに(とはいえ、どちらかと言えば、やっぱりパレスチナ寄りだけど)組み入れて、その巧みさは素晴らしいとしか言い様がない。一瞬たりとも退屈しない。
検問所も、放送大学で見た画像では、もっと緊迫した雰囲気の場所かと想像していたが、本作内ではそこまでピリピリした感じはなかったように思う。検問所は他にもあるだろうし、情勢等によって実際の雰囲気はもっと緊迫する場面は多々あるのだろうが。
あと、印象的だったのが、アッシがフムスを美味しそうに食べるシーン。何度かあるんだけど、そのうちの1回は、サラームが期限切れの缶詰で適当に作ったもの。でも、アッシはそれを「これぞ本物のフムスだ!!」と舌なめずりをしながら食べるという、、、。この辺も、結構アイロニカルなシーンなんだろうな、、、。
フランス人女優でパレスチナ人女スパイ役、という設定の女性を演じたのは、ベルギーのルプナ・アザバルさんというお方。美しいけど、ちょっと強そうで怖い感じ。もう一方のユダヤ人将校役を演じたのはユーセフ・スウェイドというイスラエル人。このお方のお顔、どこかで見た様な気がするのだが、出演作を見ても、私が見た作品はないし、、、。どこで見掛けたんだろう。似ている人だったのかしらん。
本作の面白さは、主役の、サラーム役カイス・ナシェフと、アッシ役ヤニブ・ビドンというお二人にある。サラームは朴訥な感じが良く出ていて、一見、あまり表情がないかに見えて、実に表現力豊かだったし、アッシはマッチョ系の単細胞男っぽいけど実はアイデアマン、みたいなギャップが味わい深い。
見に行って良かった、と思える貴重な逸品でありました。
フムスって美味しいんだろうか、、、?
是非是非!!
ご感想アップされるのを楽しみに待っております♪
まだ上映中と確認、来週見に行きます。
ご紹介、ありがとうございます。