
創造の再発見 P17
外山滋比古著 みすず書房
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「二本脚」
昔の人は60前でもう腰が曲がっていた
が、いまのようには転倒しなかったよう
だ。このごろ腰の曲がる人は比較的すく
ないが、転ぶ人が多い。もとはきいたこ
ともなかった大腿骨骨折というのが、珍
しくない。(中略)
同じように安定をのぞむならば、人間も
脚は4本ほしいところだ。イヌやネコは
人間のように転倒して骨を折るのは難し
いだろう。二本脚でひっくりかえらない
で、いられるにはバランス感覚のはたら
きを必要とする。子どもが生後しばらく
立つことができないわけである。大きく
なると二本脚で立てる。歩けるのが、曲
芸のようなものであることを忘れてしま
う。
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▼私の趣味に壬申の乱ウォーキングがあ
りますが、平地ばかりではなくて、結構
な坂道を登ることもあります。そんなと
き折りたたみ式の杖をついている人がか
なりみえます。文字通り転ばぬ先の杖で
しょうか。本書を読むと三つの支点があ
ってはじめて、ころばなくなるが、なお
不安定はまぬがれないとある。そしてつ
くなら二本杖。これはちょっと歩きにく
いのではないでしょうか。人は二本脚だ
から思考も右か左、白か黒に陥りやすい
年老いてくると二本脚ではなんともここ
ろもとない。