五木寛之著 徳間書店 P210より引用
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そういう老いのなかで、体調を維持する
というのは、どういうことなのか。
それは、その年齢なりに安定したコンデ
ションを保つ、ということだ。青年と同
じように、などとは勿論、考えない。若
い頃のことを基準にあれこれ判断するか
ら、不安になるのである。(中略)
かつての自分とくらべて、苦笑するのは
いいが、自嘲的になるのはよくない。
よくないと分かっているが、「情けない
もんだ」と思うのは自然なことだと納得
する。(中略)
そこで、せいぜい体調をそこそこ維持する
ことを考える。その方法は千差万別、そ
の人その人によってちがう。(中略)
その年なりに、いろいろな楽しみがある。
年をとるというのは、悪くないものだと
最近つくづくそう思うようになってきた。
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▼つくづく体と言うのは正直に出来てい
て自分では何ともなくても体の中身の方
が悲鳴を上げてくる。そしてその突然の
痛さに仰天する。年は隠せないものです。
ならばそれなりに自分に合ったやり方で
やるより方法がないが気持ちの方を納得
させるのに時間がかかるものです。この
頃では電車の優先座席にためらいもなく
座れるようになった。
また、横断歩道でかなり遠くの車にも無
理をせず、立ち止まりやり過ごす事が出
来るようになった。実際歩く速度が随分
と若いころに比べて遅くなったようだ。