くらしの作文 大きな代償

中日新聞　2010年7月20日　22面より引用

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　遠方に住む息子を装ったオレオレ
詐欺に引っ掛かかり、数百万円を支
払ってしまった。何とも情けない。

　受話器から聞こえる声はひどい鼻
声だったが、息子も鼻が悪いので疑
いもしなかった。「熱があるから明

日は休んで医者に行く」「また電話
する」などといって電話を切った。
翌朝、再び電話。「店を開いている

友人の保証人になったが、友人が借
金を返さずに逃げてしまった。自分
が支払わないと勤務先に連絡が行き、

信用を失ってしまう」と言う。
　冷静さを完全に失って体ががたが
た震え、息子をでき愛する愚かな母

親になっていた。金融機関の方から
声をかけていただいたが、全く気付
かなかった。あの時、経緯を話して

いれば…と後悔している。（後略）

（名古屋市　主婦69歳）

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▼なんとも痛ましい事件です。親子
の情にからめて、相手を奈落の底に
落とし入れてあげくの果てにお金を

振り込ませる手口は卑劣で阿漕な許
されない行為ですね。あれだけ金融
機関でも警戒していてもしかも声を

かけてもらっていても本人は冷静に
なれないようで、はたから見ていて
も「この人危ないな」と思われてい

たのではないでしようか。
　後日、息子から手紙と現金が送ら
れてきた。「母の深い愛を、あらて

めて感じました。母さんは、内職を
しながら仕送りをしてくれたので、
僕が必ず返してあげる。元気を取り

戻し、長生きしてください」。涙で
文字がかすみ、読めなくなった。自
責の念に苦しみ、眠れない日が続い

ているとあり、大変な心の苦しみを
追ってしまったお母さんの嘆きがひ
しひしとこちらにも伝わってきます。

水際で我にかえるような手立てはな
いものでしょうか。

夏の薔薇

昨年の梅雨に挿し木をしてあった
のが今年の夏に咲きだしました。
深紅の薔薇です。薔薇もたまに挿

し木がうまくいく時があるのでう
れしいことです。