2009、10、14 朝日新聞 15面
播磨益夫
弁護士、元参議院法制局第3部長
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憲法40条は「何人も、抑留又は拘禁
された後、無罪の裁判を受けたときは、
法律の定めるところにより、国にその
補償を求めることができる」と規定して
いる。これを受けて、刑事補償法は、
一律に「無罪判決を受けた者」に刑事
補償することにしている。(同法1条)
しかし、この刑事補償法には問題が
ある。それは、例えば殺人罪で起訴
された後、「心神喪失(精神の障害に
より、善悪の判断することができないか、
その判断に従って行動することができ
ない状態)を理由に無罪判決があった
者に対しても、国民の税金により刑事
補償がされていることだ。(中略)
憲法40条の「無罪」に心神喪失による
無罪も含まれると解釈して現行の刑事
補償法を作った法務省としては、これを
改正することは、過去の自分たちの憲法
解釈を否定することになるので、メンツを
守るためにも改正したくなかったのだろう。
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▼いわゆる「沙汰止み」となって50年が
経ったが、税金の無駄使いの観点からも
法の改正が望まれる。殺人を犯しながら
心神喪失の為、無罪になり、なお且つ、
刑事補償法で補償がされるとは、これで
は殺された被害者は浮かばれない。
法務省は刑事補償したケースは過去に
6件しかない。ことなどを挙げて法改正
には消極的は姿勢を示し、そのまま、
さたやみとなっている。
注)「沙汰止み」(さたやみ)沙汰のやむ
こと計画などが中止されること、おなが
れ。広辞苑より