徒然刀剣日記

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洋鉄と和鉄(その4)

2013-03-09 00:00:21 | 洋鉄と和鉄
不定期にて連載投稿しています、「洋鉄と和鉄」の続編です。

以前の投稿は以下のリンクより、ご覧いただけます。
「洋鉄と和鉄(その3)」(2012年06月19日):SK材について
「洋鉄と和鉄(その2)」(2012年04月28日):S-C材について
「洋鉄と和鉄」(2012年03月18日):現代の鉄とは何か?

前回では、工具類に用いられる洋鉄(現代の鉄)についてご紹介しました。
しばらく連載をお休みしておりましたが、今回は「合金工具鋼」についてご紹介したいと思います。

前回、工具類に用いられている鋼は、3種類に分類できるとご紹介しました。
それは、「炭素工具鋼」、「合金工具鋼」、「高速度工具鋼」です。

炭素工具鋼はSK材と紹介しましたが、今回の合金工具鋼は「SKS」、「SKD」、「SKT」などと呼ばれる分類に該当します。

今回は、SKSの中から特に耐摩擦性・耐衝撃性に絞って、一部のSKS材をご紹介したいと思います。

SKS材は、切削工具の素材として開発されました。
これは、炭素工具鋼にクロム(Cr)・タングステン(W)・バナジウム(V)を添加し、硬いカーバイト(炭化物)を形成させることで硬さを得ており、耐摩擦性も向上させることができます。
ここで登場したクロム(Cr)についてですが、クロムは耐衝撃性に優れた性能があり、焼き入れ性も向上することが知られています。

このSKS材の基本的な性能を調節することにより、様々な用途に対応できる合金工具鋼が作られています。
用途の例えとして、耐衝撃性に重きを置いて硬さより靭性を重視したものに、耐衝撃工具鋼があります。
この場合、炭素を少なくし、クロム(Cr)・タングステン(W)を加えて浸炭焼き入れを行なって製造されます。鏨やポンチに使われている素材がこれです。

逆に炭素を多めに調整し、クロム(Cr)・タングステン(W)を除いて、バナジウム(V)を添加することにより、バナジウム(V)で形成されるカーバイトを活用した素材も開発されています。
このバナジウムのカーバイトは非常に硬いのですが、鋼の結晶を細かくしてしまうという弊害も発生します。こうなると、今度は焼き入れ性が悪くなってしまいます。
このような場合には、日本刀と同じように水焼き入れを行なって表面を硬くすることで、外側は硬く内側は軟らかい構造を作り出すことができます。
この構造は、耐衝撃性に非常に優れており、削岩機のピストンなどに用いられています。

同じ鉄でも、添加する微量元素によって全く違った性質になるという、合金鋼の奥深さを感じます。
そして、熱処理という数千年前から行なわれている加工技術の神秘を感じずにはいられません。

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