徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

室町時代の刀

2016-01-22 17:00:16 | 刀身研摩
錆びた日本刀の修復が完了しました。



特に錆が酷かった指裏です。

日本刀の刀身の修復は、研磨意外に方法がありません。
そのため修理をすればするほど(研げば研ぐほど)刀身は痩せてしまいます。
今日残っている日本刀は、何世代にもわたって所有者が入れ替わっていますが、その都度所有者全員が錆びさせないように、日頃から手入れを欠かしませんでした。手入れをさぼれば錆を呼び、錆びれば研磨が必要になる、そしてその度刀身が消耗してしまうことを知っていたからです。
戦後日本刀は武器としての性質を否定され、美術品としての美しさが重要視されています。この時期、刀身を美しく見せる研磨法は飛躍的に向上しましたが、昭和から平成にかけてもっとも日本刀が痩せた時代ではないか?と思います。



今回のお刀は、刀身研磨と外装製作のご依頼ですが、長年放置されて所々朽ち込みをみる水錆状態(上図参考)でしたので、極力痩せないように研磨を施し、更に荒れ気味の肌を押さえて研いでみました。



切っ先が若干延びごころですが、室町時代の典型的な体配です。
先がもう少し伏せっていたら、もっと古く見えるでしょう。研ぎ味は、鎌倉時代の刀を研ぐようでした。表裏で、表情がガラッと変わるところも実に味わい深いお刀です。



どうしても修復が出来ない箇所は、刃中の鍛え割れです。

ここで一端、ご依頼者様にお戻しして、拵えの設計に関して、再度綿密な打合せをしたいと思います。

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