徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

磨上げ小太刀の大修復

2014-01-22 04:06:21 | 拵工作
細身の脇差の修復が終了しました。



ご依頼時の状態は、古研ぎの刀身に破損したハバキ、がたつきのある鍔&切羽、柄前は柄下地をヤスリで加工して刀身に合わせたもので、目釘穴を合わせるため?に柄縁の天板は力技で外されていました。元々の付属品と考えられる鞘も鯉口が大破し、コジリは素人の修復により金具が逆向きに取り付けられていました。
つまり、典型的な寄せ集めの状態で、追い討ちをかけるように経年の劣化により見るも無残なガラクタ状態でした。

柄下地の状態は、アメブロにて公開中!
「古い柄下地の典型的な症状」(2013/10/17)

この状態でご相談を頂く場合、修復に要する時間と費用を考えると必ずしもご依頼者様にとって有益とは言えません。こうした時は、当工房では修復をお勧めしない場合がほとんどなのですが、気がかりなことは稚児拵に収まった状態であったこと。そして、刀身の形状です。大磨上げ無銘の錆身なれど、鎬高く細直刃調で気品すら漂う細身の腰反り体配から、古刀特有のオーラをかもし出しています。

ご依頼者様にお話をお伺いしたところ、案の定、お孫さん(ご依頼者様)が生まれた時に今は亡き御祖父様がお買い求めになったお刀であることが想像できました。
大切な思い出の詰まったお刀となれば、話は別です。
そして、何といっても刀身に秘めたる価値を感じたことも事実です。

早速、銅無垢一重ハバキを柿色仕上げにて作成し、白鞘を作ってから仕上げ研磨を施してみると、想像通り柾目の肌、冴えた鉄色が顔を出してきました。大和本国あたりで絞り込めそうな働きです。



拵の修復には、毎回想像以上の時間と労力がかかってしまいますが、妥協はできませんのでご了承ください。



拵え工作の内容は以下のとおりです。

鞘の修復:鯉口補強&コジリ加工



鯉口から栗型周辺の破損部を補強し、鮫革を巻いて漆で研ぎ出しました。さらに、仕上げ漆に青貝の殻を蒔いて元々の塗り方に近づけました。
コジリ金具は、逆に取り付けられていたため、一度外して正しく付け直しました。

柄前の修復:柄下地新規作成&刀装具修復



柄は、完全に使用不能であったため、柄下地を一から作りました。柄縁は、天板を新たに制作してロウ付けしました。
柄巻きは、金茶に染めた正絹を用いて、諸摘み巻きを施しました。



鍔には、責金を施し、ガタツキを解消しました。切羽も若干調整を施しました。
当工房では、作刀以外ほとんどの修復作業を行っていますが、かえって非効率ではないか?と聞かれることがございます。確かに効率性を考えると外注に任せるほうが良いかもしれませんが、全てに目が届くことで初めて見えてくるものがあるのも事実です。



ご家族様の守り刀として、御祖父様との思い出の品として、これからも大切にしていただけることでしょう。

後は、お払いを済ませて納品を待つばかりです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。