徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

鞘の鮫皮研ぎ出し加工

2012-03-07 21:05:16 | 拵工作
鞘の修復です。

大切な愛刀は、他人には決して分からない愛着があるものです。
それが例え、原形を留めていない物であっても、大切にする限り刀剣は何度でも甦ります。

日本人は物を大切にする民族なので、修復を施す技術が育まれてきました。



今回は、破損した鯉口部分を下地から補修し、鯉口を銅金具で作成して鮫皮の研ぎ出し加工を施しました。
この鞘は写真の通り、状態が悪く、元の形状が分からない状態でした。


Before: 下地と漆が剥離しており、亀裂がコジリまで走っています。


Before: テーピングでグルグル巻きにされた鯉口部を外してみると、刃方は完全に破損し、角もバラバラです。


after: 鯉口金具には漆を塗らず、地を表に出しました。


after: 鮫皮は一枚巻きで差し裏で合わせました。


ライトを調整すると、グッと渋さが際立ちます。雰囲気が伝わるでしょうか?

途中経過は、拵師(柄巻師)のサブブログ「伝統工芸職人って…」の下記リンクより:
「鞘の修復」(2012年03月02日)
「鯉口金具」(2012年02月27日)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (北の村から)
2012-03-09 20:07:59
こんばんは!

いい仕上がりですね~!
鮫皮研ぎ出しは、派手さばかりが強調されがちですが、
こうして拵えると渋さも引き立ちますね。

しかし、よくもまあ、ここまで修復できたなぁ、
と感心せずにはいられません。

いつもながら見事なお仕事、感服します。
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鞘の修復 (拵師)
2012-03-10 00:36:55
北の村からさん、こんばんは!

お褒めのお言葉、ありがとうございます。
仰るとおり!研ぎ出し鞘は、派手さばかりが強調され、その強度面・実用面が軽視されている傾向があります。

今回の研ぎ出しでは、落ち着いた雰囲気を損なわない程度に工作しました。

角の鯉口があった部分は、桜の木を用いて補修しました。
微妙に残ったホウの木の突起部は全て残して、補修材の内側に同型の凹凸を彫って組み合わさる様にはめ込んでいます。

ちなみに、江戸時代の塗り鞘などは、二束三文で売り出されていますが、このままの姿勢が続き価値が認められなければ、あと50年で全く姿を消してしまうでしょう。

非常に残念です。
一つでも多くの拵えの修復に、取り組んでいきたいと思います。
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