徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

幕末様式の柄前の再現

2012-07-11 11:03:45 | 拵工作
今月に入ってずっと取り組んできた柄前が完成しました。


(写真は、巻き上がった直後の写真です。納品前には、柄糸の微調整をしています。)



柄下地には、状態の良い本歌の下地を一度バラバラに分解し、刀身に合わせて再加工するという非常に贅沢な方法を用いました。
鮫は、江戸期の大名クラスの鮫皮を、これまたゴージャスに一枚に巻きました。



鞘とのバランスを考えて、柄成・柄糸の色・巻き方を調整しました。

今回特に力を入れたのが、幕末期の粋な鞘にあわせるため、柄巻きの菱の大きさを極限まで狭くしたことです。
これは、新々刀期の流行を取り入れることで、拵え全体の雰囲気を引き締める効果を狙っています。



写真の取り方を変えた方が、拵え全体の存在感が伝わりますでしょうか?
どうも写真が下手なので、ぶれたり、焦点が合わなかったり、中途半端になってしまいます。



ちなみに、刀身は重要刀剣審査に合格しているお刀ですので、工作時には細心の注意を図ってヒケ一つつけないように努めなければなりません。
毎回、研ぎあがりの刀身への工作には、とても気を使います。

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
質問 (筑前守)
2012-07-19 22:49:08
古い拵をばらして再生させたいのですが、
柄巻糸に漆(艶消し黒)を塗ったことは
ありますか。
また、黒塗り鮫に艶消し漆も塗って、
出来上がった柄を古く見せる技法ってあるのでしょうか。
金具カバーしてサンドブラストをかけるって
言うのが昔あったみたいですが。
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柄糸に漆 (拵師)
2012-07-20 12:18:47
筑前守様、はじめまして。

柄糸に漆を塗り古く見せる技法ですか・・・。
無いことも無いですが、布に漆は相性が悪く硬化するまで相当な時間がかかります。
せめて革に漆の方が相性がよく、掟からもよろしいかと存じます。

古く見せる必要性が分からないのですが、ヒントは漆は大気中の水分量によって伸縮していることです。

ちなみに現代の塗料は、漆のような活性はありませんね。
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2 (筑前守)
2012-07-21 03:56:42
こんにちわ。
返信ありがとうございます。
古く見せるのは時代拵からピカピカ拵があまり
なじめないからです。
糸に漆は幕末に大流行したので多いですよ。
ざっと見たところ
http://www.samurai-nippon.net/V-721/

http://www.esword.jp/sale/2012/1210_1030syousai.htm

http://www.esword.jp/sale/2012/1210_1036syousai.htm

http://www.esword.jp/sale/2012/1210_1013syousai.htm

等、革に漆より多そうです。
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他にも (筑前守)
2012-07-21 12:09:13
現在ネットで販売確認できる時代拵で
四口、所蔵品で二口が紐の漆塗りですが、
皮に漆を塗ったものは見当たりません。

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柄巻きに漆 (拵師)
2012-07-21 22:12:02
たびたびコメントいただきありがとうございます。
リンクを貼っていただいた元興のお刀、すばらしいですね。

柄糸に漆の件、現存数が多いのは最も安価な工作だからではないでしょうか?
本歌柄前にて、漆加工をしていない物は数が少なくなってきています。よほど大切に扱われてきた高級品以外、100年もすると柄糸がボロボロになってしまうからです。

価値のある時代拵えになりますと、革に漆のものに室町の本歌を見ることが多くあります。

柄糸に漆を塗った柄前は特別なことではありませんし、私も作ったことがあります。他にも紙で巻いた柄巻きに漆を塗った物、琴の糸やタコ糸に漆を塗った物もあります。
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 (北の村から)
2012-07-21 22:44:32
お久しぶりです。

漆の柄糸、たまにみますね。

耐水性に優れているという利点がありそうですね。
それだけに実践として使われ、自然、我々が手にするレベルの本歌というのも少ないのかもしれません。
漆自体は古墳時代の遺物にすら残っており、塗られた本体は朽ちて、漆だけ残るということもしばしばです。
「残るレベル」これが問題のような気がしますね。

ウチの家宝にもと思っている拵えがありますが(当家紋の三所物ですが)、
これは鮫が黒漆、柄は鹿皮です。
鹿と漆は印伝の技法もあって、かなりの部分用いられてきたのでしょうね。
ただし、これも「残るレベル」となると、なかなか手にするのも難しい状況でしょうか。

鯨のひげの柄糸を手にしたことがありますが、
柄糸談義は、本当に尽きることがありませんね。

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柄糸談義 (拵師)
2012-07-23 00:40:57
北の村からさん、こんばんは!

仰るとおりですね。
さすがに、博学なので頭が下がります。
家宝の拵え、技法からいっても室町の匂いがプンプンします(笑)。

鯨のヒゲや象牙といった、現在では取引が難しい材料は、江戸時代でも同じく入手が困難であっただろうと思います。
それらを用いて拵えを作るという発想は、当時の刀剣職人や依頼主の感性の高さを如実に物語っている様に感じますね。
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ありがとうございます。 (筑前守)
2012-07-23 05:45:08
なるほど。
みなさんありがとうございます。
室町の皮巻漆塗りの拵えなんて残っていれば
即、重要刀装具でしょうね。

幕末の実戦拵えも遠くなく生々しくて
魅力があります。
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