翌日の朝は宿の裏手の細い道を登った小脇公園で行われている朝市に寄って野菜を買って行くことに。宿で聞いて来てみたのだが、もう少し南に行った武豊IC付近では鮮魚も売る朝市があるとのことだが、もう一泊するので鮮魚はダメとこちらの方で。ここはAM8:30から販売開始ということで、客は近在の地元の人達ばかりのようであった。
ここには喫茶室もあって、買物を済ましたおじちゃんおばちゃん達が中京地区らしく例のモーニングを食べながらの世間話で席は一杯。僕らはコーヒーだけ飲んだのち(あとで市内の喫茶店の外のメニュー値段表を見るとモーニング420円、コーヒー450円の値段になんで?、コーヒーだけ頼んだ方が高いんですかね)展望台があったので天気も良いしで、常滑の海に2005年に開港するという中部国際空港の埋立島を遠望の見物、思いのほか速い進み具合に名古屋は侮れないぞと変に感心することとなった。そういえば開港は愛知万博に間に合わせるためとのことだが、その会場は瀬戸となっていて、ここと両方が愛知県の焼物の町というのもなにかの因縁ですかね。なおこの公園の一角にはオートキャンプができる施設があり、7~8台のキャンピングカーが停まっていたが冬場でもこの辺りなら夜間のキャンプでも寒くないのかな。
高台から伊勢湾を
喫茶室は満員
常滑はもう5度目でINAXの世界のタイル博物館や便器展示館(ここは芸術的?和便器の展示と昔の土管窯跡を使った展示室の耐火煉瓦表面がビッシリガラス状になっているのが見もの)などもう見ているのでそれらはパス。まず昨日は留守だった小西陶房を10時頃訪ねると作陶室で年賀状を書いている最中、コンチワまた来ましたで中に招き入れられる。年賀状は全て手描きの絵入りだそうで宛名は独特の字体で筆でスラスラ、さすがですねぇ。そういえば部屋には自作俳画風短冊も飾られている。自作の茶注 (急須というのはどこから出来たか分からないが茶を注ぐというこの字が本当というまず面白い話から)で美味しいお茶を戴き話が面白くてついつい小一時間も長居。この人は今年2月にNHKのやきもの探訪にも出演紹介された土物を得意とする作家。自分が作る常滑の良土は親から受継いだもので自分の代までは十分あるとか、茶注は部品が多く熟練迄が大変、中の小さな穴まで手で一つ一つやるのは人間国宝の山田常山さんと自分ぐらいになってしまったとかは前回聞いた。部屋にはこの前の朱泥とは違った穴窯で焼いたという自然釉(真焼と名付けていた。穴窯は電気で焼く朱泥のように計算は出来ないし3日3晩も火との格闘で大変だがそれだけ出来上がりが楽しみとか、でも量は焼けないし高くなるのはあたり前ですな)の徳利とぐい呑がいくつかある。これらぐい呑はこの前買ったものよりかなり大きめ、これでグイグイやったらさぞ酔っ払いそうと言うと、この位大きくないと酒飲みには面倒なのだそうで、わしは毎晩この大きさのやつで楽しんでいると。それで自然釉のかかり方が面白く土が常滑特有の赤みが強いぐい呑8000円を購入。昨日留守だったのは半田で小西洋平陶芸教室の生徒作品のチャリティー販売をして、午後はそちらに行っていたとのこと。じゃあ今日の泊りの浜名湖へは半田経由にして、そこに寄って帰りましょうと窯元を辞す。
小西陶房
居間で陶芸話で盛り上がった
常滑に来ると必ず歩くのが陶磁器会館をスタートとするやきもの散歩道、ABの2コースがあってAは2km、Bは4km、よくまあこんな細い道ばかりというクネクネと曲がった小路(三河ナンバーのアリストが迷い込んできてどん詰まりで立ち往生、バックで戻るのに大汗、少し助け船してあげたものの道案内を地元の人に聞かないと出られませんぞ)を歩けば、多くの窯元や古い大型登り窯があったり、黒い焼板壁の家並みから突然展望が開けると窯元の耐火煉瓦煙突が突如現れたり、歩く道々の各所には土管などで出来た擁壁や舗装など、なにか郷愁を誘っていて、またいかにも焼物の町といった風景は今まで廻ったこの手の町では一番ではないでしょうかね。今回はAコースだけにして切り上げたが、このコースの最初の方にある若手作家の金太郎窯、質素に釉薬を使ったものをやっていて安目のものが多いのだが、ここは作品よりも商品展示をしている場所が昔の大窯の中で、このガラス質ビードロの壁の雰囲気は是非味わっていきたいと、良い場所を店舗にしたもんだ。最近は常滑も土管と茶注の赤というイメージとは離れた釉薬を使って、さまざまな工夫を凝らした焼物がでてきている。かの洋平さんは常滑で白釉や織部風はないよなと言っていたが、土物では京都に近く磨かれている信楽と越前は学ぶべきところがあるな、丹波は民芸風だな、益子などは美術学校を出た若手で優秀なのが窯を築いているし東京に近いというのは強いよ等とも話していた。僕は常滑の金属的味わいに色を加えたデザインものなどは悪くないなと思っているが、やはり他所の焼物の真似、亜流は間違いだというのにも賛成でもある。
煉瓦煙突がある常滑の風景
焼物の道には個人窯元がいくつも
土管などを擁壁や舗装に
土管を焼いた大窯を利用した金太郎窯の店舗
焼物の道の終点でもある陶磁器会館には山田常山とその弟子達のコーナー、その他の作家物コーナーなどもあって有名作家ものはまずまず見られるはずだが、買物をそそるには展示が詰込み過ぎでもう一工夫とスペースが欲しいところ。作家のところを探して回るのはちぃと大変というなら、ここで買っても東京の市価より安いだろうからジックリと品定めしてゲットしてもいいでしょう。
あとは車で市街を少し出てセラモールなる問屋団地に行けば10数店が直売をしていて、概ね市価の3割引程度で買える。ここでの大手は方円館で、ここは作家物が揃っているほか、一角にあるギャラリーでは必ず誰かの展示即売会が開かれている。僕は今回山田絵夢(常山の次男でこの人もNHKのやきもの探訪に出演し、模作を頼まれた魯山人の葉型皿を手にとって馴染んでいるうちにこれだ開眼したと話していた)<その後に四代山田常山を襲名>の湯冷まし用片口風小鉢が、釉が全くかかっていないのとバラけて雑器の小品ということでか、花入の10万以上とか銘々皿の2~3万に比べると6000円(実際はその70%に消費税)という安さには思わず買ってしまった。ここには他に山弥という常滑らしくないものも多く置く店では、鵬志堂のマグカップや癌でもう亡くなってしまったという人(店の人もあの人は旨かったのにねぇと)の常滑茶注のデザインを使った面白いコーヒーカップを買ったことがある。あとは一軒だけ店の奥の裏に見切品と一緒に奥さんが集めてきた骨董的なものを置くところがあって、それらは存外安いと思います。付け加えると、常滑の陶器祭は8月第四土日に冷房の効いた競艇場客席内で行われるそうで、一回は来てみたいですねぇ。
セラモール1
セラモール2
昼食時間になってきたがそのまま半田に向かい、何処か駐車場のあるレストラン風の所があれば寄ってからチャリティー会場に行こうと常滑をあとにする。で途中は田舎道で何も無いまま半田市街まで、市役所隣の中部電力ギャラリーの展示会場に直行と相成ってしまった。会場は小規模なものであったが洋平先生いわく、最近は素人の人の方が邪念を持たずひたすらで、プロのように小細工してやろうとして逆に嫌味になることもなくて上手なんだそうだ。確かにどれもマァマァの出来栄えではありませんか、値段もぐい呑500円などと安いので数点をチャリティーとしてお買上。会場にはやきもの探訪のビデオが流され、それを見やりながら奥をみると先生が上着に帽子姿、朝の作業着から人が違ったようだったので最初は気づかずでした、スイマセンです。
でこれはこれはと挨拶するとビールでもうご機嫌のご様子、薦められたものの運転があるのでご相伴できずでこれは残念でした。
放映中のテレビ画面