
次は瀬戸に向かって小山を越えると30分ほどで瀬戸の北の端、品濃という土地になる。鄙びた風景で雑木林が広がるやや起伏がある地形からは、素人目にもいかにも焼物の里という雰囲気を感じさせる。そこには突然と現れる大型施設の品野陶磁器センターがあるほか、窯元などを巡れるという窯垣の小径の案内もあったが、窯垣のほうはまだ訪ねたことが無い。
この道沿いにはその先にもう一つ僕が好きな地酒の明眸を造る柴田合名会社があって、直売しているので開いていれば必ず立寄る蔵元だ。(その後倒産したと聞くがどうなっただろう)<廃業して銘柄の明眸の名は設楽町の蔵元が買い取ったそうだ、この酒はかなり気に入った味わいだったのにねぇ>
品濃陶磁器センター
さらに市内に向かう途中を左折し高台に登って行くと赤津焼の里がある。瀬戸では茶陶の高級品はここが中心地で、まず赤津焼会館に行って各窯の作品を見ておこう。というのはここで自分の好きな作家を選び、場所を聞いて尋ねていくのがお薦めなのですよ。各窯元の展示室では相対で売ってくれ、値段もその時の対応で決まることになるのだが、やはり一般販売価格よりかなり安く買えるはずだ。僕が初めて訪ねることになったのは、合羽橋の田窯で織部のコーヒーカップやぐい呑などで特に気に入ったものが10000円以上(それでも一般小売価格より安いはず)していたので、作家名だけ覚えておいて現地に行って買おうという魂胆があったからなのだ。中でも西山窯の山口正文の黒織部が好みだったから早速にも訪ねて、2階の展示場で値段交渉しながら黒織部のカップ、赤織部の皿と湯呑などを求めたのだった。その後クロワッサンに女性料理研究家がここの黒織部御飯茶碗(名古屋単身赴任の主人が買ってきたとか)の良さを紹介した記事も、偶然にも出ているのを発見した。次の年にも行ってみると先方も覚えていてくれて、黒織部でも引き黒と普通の黒は違うのだとか、クロワッサンに出て最近は海外からも注文がくるという茶碗などは、同じ形にロクロで苦もなく手が動き出来るものなので安くても良い(でも3500円であったか、飯茶碗としては結構なものかな)とか、ぐい呑は高いという相場ができているので手びねりに拘り、必ず箱も付けるという話などを聞き、最近窯を新しくして今まで唯一薪窯で焼いていた鼠志野も来年からは電気窯になるという話に、そこにあった花入を即座に買ってしまった。その他御飯茶碗やプレゼント用湯呑なども購入、その際には新窯のお祝いに配ったという左馬が書かれた黄瀬戸の湯呑がまだ残っていたと言って、有難くもオマケで貰ったりということもあった。今回はぐい呑だけ気に入った形のものがあったので購入しただけであったが、赤津には他には作助窯や三宅紀保、花峰窯などが僕の目に留ったが皆さんは如何でしょうかな。
左は三宅法保作の黄瀬戸、右は山口正文作の黒織部
山口正文作の志野の花瓶 赤織部湯呑と黄瀬戸湯呑、左馬は初窯祝い用
山口正文作のぐい呑
赤津から瀬戸中心部は車ならすぐ近く、川筋を下り瀬戸市街に入ると瀬戸陶磁会館があって、赤津焼を含めて瀬戸全体の焼物を並べていたし、若手作家のみ置く太陽という小さな店もあったが、概して瀬戸物という通りの一般品販売の店が多いようだ。ここの陶器市もニュースで何万人の人手などとにぎやかなようであるが廉売品中心で、山口さんの話では我々の品物は高過ぎてこの市では買う人はいないんじゃないかと、多治見とは大分内容が違うらしい。瀬戸の昼飯では無料の宮前駐車場が神社前にあり、その下は長屋風の小さな飲食店がいくつか並んでいるので行ってみるとこれが面白い。その端っこの方、裁いたばかりの鰻を炭火で一本焼きしている10人も入れば一杯という田代という店、あまりにも好い臭いに釣られ入って注文。一本丸ごと入る鰻丼肝吸付1600円<2012年には並2500円とか>はお値打ちもの、関西風に蒸さない蒲焼スタイルだが表面コンガリ中は柔か、浜松出身の僕でもおもわず旨いと言ってしまいましたねぇ。これは前言を訂正せねばイカンかと、値段を考えるとこれはご立派。また近くに行列が出来ている焼ソバの福助屋<既に廃業>があり、独特に工夫調合したソース焼きソバは地元では有名だそうで、持帰りで1パック330円を買って途中で食べてみたが、やや甘めのタレでこれはこれで結構ではないでしょうかね。
さて横浜に戻るには多治見に戻って中央高速にするか名古屋に下がって東名にするかであるが、途中の渋滞や降りてから家迄の道のりや道中の寄道も考えて東名を使うことに。道筋で瀬戸の南にある愛知県陶磁資料館は猿投、常滑、渥美、古瀬戸、美濃の陶磁器が時代順に並べられ、ゆったりと見学できるのでオススメ、桃山時代最高峰の焼物を始めとした名品を見て是非目の鍛錬をしましょうや。ここの売店にも山口正文の作品がいくつか置いてあったがやっぱり目に付いちゃいますねぇ。焼物以外では犬山に立寄れば日本で一番古い天守閣という犬山城があり、僕自身も長良川対岸から眺めただけであるが、なかなかにすばらしい大景観で印象的であった。この城がちょっと前まで個人 (尾張初代藩主頼宣への家康からの付家老だった成瀬家が、幕末も最後にやっと大名となり、この城を明治になって一時県所有を濃尾地震の修復を条件に返却され、そのまま所有していたとか)のものだったとは驚き、現在は個人から法人組織で受け継いでいるとか。なお大正期の旧帝国ホテルの一部を移築保存する明治村などにも寄ってみたいのなら、それなりの時間の予定が必要になるので念のため。
2時過ぎに乗った名古屋ICからの帰りは順調でなんと夕方には我家に着くことができたが、これなら焼津か清水に回り道して魚を買ってきてもよかったかなと、遅くなって帰ってからの料理はチト辛いからと諦めることにしたのだがそこまでは読めないものねぇ。焼物で金を使ったからこのあとしばらくは倹約に努めましょうということでもあったんだけど。
店データ他
ビストロ・ミュー 高山市総和町 1・55 0577-36-0149
まさご 高山市有楽町 31 0577-31-8907
大のや醸造 高山市上三之町 13 0577-32-0122
欧風食房 魯庵 多治見市上野町 1・27 0572-23-8287(その後移転)<こちらは閉店>
魯庵 多治見市虎渓山町 3-1-12 0572-21-6600
信濃屋 多治見市上野町 3-46 0572-22-1984
はなしょう 多治見市豊岡町 2-69 0572-24-2370
丸志げ陶器 多治見市生田町 2-193 0572-23-8346
ステージ 花御堂 多治見市本町 6-2 0572-23-4997
PAPA‘s 多治見市住吉町 2-27-1 0572-22-7641
わさび 多治見市住吉町 2-1-1 0572-23-8110
灯屋 多治見市虎渓山町 3-100 0572-25-0515
虎渓窯 多治見市住吉町 2-29 0572-22-0129
岐阜県陶磁資料館 多治見市東町 1-9-4 0572-23-1191
セラミックパーク MINO 多治見市東町 4-2-5 0572-28-3200
市之倉さかづき美術館 多治見市市之倉町 6-3 0572-24-5911
美濃焼卸団地 多治見市旭ヶ丘 0572-27-7111
多治見修道院 多治見市緑ヶ丘 38 0572-22-3373
どんぶり会館 土岐市肥田町肥田 286-8 0572-59-5611
美濃焼卸商業団地 土岐市泉北山町 2-2 0572-55-1322
ギャラリー太陽 瀬戸市栄町 1 0561-84-8588
田代 瀬戸市深川町 13 0561-82-3036
福助屋<廃業> 瀬戸市深川町 14 0120-068-988
品濃陶磁器センター 瀬戸市品野町 1-126-2 0561-41-1141
柴田合名会社(倒産) 瀬戸市品濃町 4-88 0561-41-1150
照苑 稲武町大字夏字シホノタワ6 05368-2-2116