
信楽近辺は一箇所の交差点だけで街道筋が渋滞するので、車1台やっとの道を抜けることにして夕刻6時には今日の宿、小川亭に到着した。こちらは初めての旅館なのだが、サライに信楽焼作家ものの器で料理を出すという記事を読んだことがあって、地元をよく知る人が選んだ器が見られると今回予約したのです。
和風小奇麗な宿で、最近大浴場と食事用和風個室を増築したばかりとか。また主人が料理人とは僕の好きなスタイルに加えて、さらに思いもかけず温泉なんだそうでこりゃ儲けものだったと。予約での電話応対もとても丁寧で期待できそうよという女房の予感は当りでしたねぇ。
さっそくにも入ってみた風呂は新旧ともに信楽焼タイルが見事な浴室で、朝には男女入替えになりますという。特に旧風呂の方の陶板タイルは蛇口台まで立体に作ったもので、これは必見ものですぞ。泉質はナトリウム炭酸水素塩塩化物鉱泉で、特に新しい方は鰻湯というようなツルツルヌルヌルの湯、濃そうな感じがいいですねぇ。増築時に屋上に貸切露天風呂を2つ作ったそうで、明るい時間帯なら50分1500円は入る価値ありではないでしょうかね。
小川亭
さて食事は新装の和室で季節のもの中心の日本料理(冒頭写真は最初に並べられていたもの)、暖かいものは順じ仲居さんが運んでくる料理屋スタイルで、決して量が多くて腹一杯というのものではないけれど、最後に軽くご飯で締めてというこの位が適当でしょう。料理毎に器が全て変わり、だれそれ先生の作と説明はあったものの、苗字だけでは同姓の作者も多くて(これはどこの焼物の産地にも言える)、あとから陶器屋で買おうとするとアレ名前まではとまごつきますよ。でもここ旅館の玄関には使ったのと同じ焼物が売られていて、それぞれに作家名札もあったから再確認できますな。いやこれは最初に見ておくべきだったですかねぇ。それら主人が選んだちょっといける焼物は存外お手頃なお値段で、気に入ったものはここで買ってしまいましょうとなった、あとで町中の陶器屋にあるとは限りませんからね。宿の主人に聞けば、本当に気に入ったものを買うなら展示館などで好きな作家を探して、その窯元に行って買うのが良いと、これには僕らのやりかたが認められたことともなったわけだ。是非とも作家マップを産業展示館などで手に入れてから窯元廻りをしましょうや。
個室での夕食
翌朝は朝風呂に入ったあとで朝食に、味噌汁の具は瀬田蜆でしょうか、たっぷり貝が入っているのが嬉しいですな。ここでもコンロ以外はご飯茶碗まで昨夜と違う器で供されるのはお見事。精算時に売場に昨日からの器全部までは置いてはいなかったが、気になっていたものは作家名と作品を再確認して見比べて、その中から酒器片口とぐい呑を購入することに。ぐい呑は谷井直人作、そういえばどこだったか忘れたが東京で信楽直人窯の器が気に入って、信楽に行ったら買おうと思っていたのを思い出しましたよ。自分が気に入ったものというのは変わらないものですねぇ。片口は上7割ぐらいに白釉粉引が掛かり、その下のヘラの削り模様が力強いもの、でも昨夜これで呑んだ原酒は辛口過ぎで、僕はアルコール度が高ければもっと旨口の味の出る酒の方が良かったのだが、器は気に入っていたのですよ。宿の先代は中小企業経営分野で内閣総理大臣表彰されたとか、そんなこだわりのありそうな宿が気に入って、女房とここも常連になっちゃおうかなと。
朝食
昼前まで街中の陶器屋巡りをしようかということで車を置かしてと頼んだら、駅前ではこの周辺の店が出店している窯出市(陶芸の森手前でもやっているそうだが、同じようなものと宿の主人が言うのでこちらだけに)をやっているというので、まずはそちらから物色しようと。そのあとは前回見られなかったミホミュージアムに向かう道筋にもある作家窯を訪ねようというので、ここでは安い出物だけをお目当てにする。結局選んだのは、いつも家で同じものを使っているので雰囲気を変えてと魚用の長角皿を5枚、同じ店で2枚だけの半端物の緑釉が気に入った小皿、さらに花入にも使える焼締片口があまりにも安いのでプレゼント用にもと3個と、都合3700円也だけで陶器市は切上げ。街中心部では忠六苑の焼締はさすがに素晴らしかったのだがやはり高いのでまたにお預け、変わった形の花入で女房も気に入ったものがあったけれど今度の楽しみにしておきましょうということに。まだ大御所の窯も見終わっていませんでしたからねぇ。
駅前陶器市
ミホミュージアムへの道筋には現在の第一人者の春斎窯、宿の器では出たものの販売品が無かった神崎宗昭の窯、先代が文化財級の楽斎窯があり、ここでは各々が登り窯を持っているのにはさすがと感心しきり。ちょっと裏に廻ると民家の間にあって、でも焼くときの煙はどうなんだろうと心配してしまったが。土管製造で大型窯業工場の高い煙突がある常滑のように目立ってということはないのだが、ちょっと裏に廻ればこういう焼物の里らしい風景がみられるんですねぇ。春斎窯は街中の店では小振りな花器が60000円、宿の主人が今一番高い作家というので次回覚悟を決めてから行こうと様子だけ見てみたが、普通の家構えで展示場もその中らしく玄関は閉められてかなり入りにくい感じ。神崎宗昭の窯はお休み、で結局楽斎窯で息子光三のぐい呑1個だけを3000円均一というので多めに灰を被ったやつを購入、ついでに花入などの値段を聞くと小さい物は20000円とか、こちらの方はまだ安いようですね。ちなみに春斎はここの先代の弟だそうで県指定の無形文化財認定者<2011年4月逝去>、光三は甥になるんですかね。次回には上田直方窯を含め、一流どころを腹を据えて廻りましょうかね。
今回信楽と伊賀で買ってきたもの
店データ
小川亭 信楽町長野 876 0748-82-0008