11月14日 (水曜日)
岩手日報 コラム(風土計)にあった。
競馬の障害レースで不自然な大穴が続く。
勝ち馬に興奮剤を投与したのは明らかだが、
なぜか薬物は検出されない。
障害レースの理事は、内部の犯行と見て厩舎に
「スパイ」を潜り込ませる。
▼競馬ミステリーの大御所、ディック・フランシスの「興奮」に描かれる。
入り込んだスパイは、
馬を興奮させる恐るべき手口を目撃する。・・後でネタバラシ
▼
岩手競馬の競走馬から禁止薬物がきのうまで相次いで検出され、
開催の自粛に追い込まれた。
不気味なのは動機が見えないことだ。
薬物を与えても、すぐ検査で分かり失格になる。
馬を勝たせようとする意味はない。
▼すると、別の動機が浮かぶ。岩手競馬は赤字なら即廃止の運命にある。
何らかの意図を持つ者が開催を中止させ、
経営を追い込もうとしているとすれば…。
さしものフランシスも顔負けのミステリーだろう。
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▼障害レース理事の言葉に尽きる。
「競馬という事業は何千人という従業者を抱えている」。
不正が続いたら「大衆の信頼を失って、たとえ回復できたとしても
長い年月を要することになる」と
▼何千人もの雇用があるから、330億円を貸して存続させた岩手競馬だった。
また薬物が出たら信頼は地に落ちる。
再生を願うファンと県民を裏切ってはならない。
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ネタバラシ
イギリス競馬界で、謎の不正が行われていた。
本命でない馬がレース終盤で謎の興奮を起こし逆転勝ちをする、
という事件が続発したのだ。
明らかに興奮剤が使われているが、いくら調査しても検出されない。
いかなるカラクリで不正は行われるのか?
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競馬協会理事のオクトーバー卿は、商用で訪れたオーストラリアで
ダニー・ロークという男を知り、潜入捜査官としてスカウトする。
早くに両親を亡くしたロークは、弟・妹たちの学費をかせぐため種馬牧場を経営、
長年休暇も取らず働いてきた男。
心の奥底では単調な労働の日々に嫌気を感じ、
冒険を激しく求めていたのだ。
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悪党の厩務員に身をやつしたロークは、
きつい労働のかたわら事件の糸口を探るが、
オクトーバー卿の娘をレイプした疑いをかけられ、
つらい立場に追いこまれる。
それでも決して任務を投げ出さず、男のプライドをかけて犯人を追跡するところが感動的。
そしてついに、イギリス最悪の牧場に流れ着き、奴隷のように酷使されながら、
極悪非道の犯人一味を見つけ出すのだった
。
犯人の使っていたのは、興奮剤でなく
犬笛・・・犬と馬の耳にしか聞こえない高周波の笛。
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調教の時、この笛を吹きながら、火炎放射器で馬を脅かす。
それを繰り返すと笛を吹くだけで馬はパニックになってしまうのだ!
全ての調査を完了、あとは帰還して報告するだけ、という時になって
ロークに最大のピンチが訪れる・・・
犯人の凶暴さ、邪悪さが際立っている。
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そして事件解決後、
きちんとした身なりに戻ってオクトーバー卿の娘たちと再会するシーンがまた良い。
「男のロマン」というものが凝縮された1冊。
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ディック・フランシス