波佐見の狆

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少年ソプラノ音声に罰金?? (翻訳ソフト迷訳)

2006-09-21 11:15:55 | 翻訳・語学
翻訳・語学カテゴリーには、仕事(がらみ)で読む論文等の中から面白い発見事項などアップしようと思ったのですが、著作権の問題がありますので、慎重にマテリアルを選ばなければならないようです・・・・

それで。。

第一弾はやはり音楽ネタからになります。

私は仕事に翻訳ソフトを利用しているのですが(えっ、プロの翻訳者のくせに翻訳ソフトなんかに頼ってるの、と思われる方もおられるかと思いますが、プロならではの翻訳ソフト利用術というものがあります。その辺のことはまたあとで~。)、以前と比べるとかなり使い物になってきたとはいえ、やはりしばしば爆笑ものの迷訳が出てまいります。

普段はバイオテクノロジーや医薬向けにカスタマイズしていることもあり、別の分野の原稿をやらせてみると、ますますへんてこなことに・・・

例1)

Harry Sever →「ハリー、分断する」 

これはもっともでしょう。severというのがだいたいそういう意味の動詞なのですからね。ユーザー辞書に"Harry Sever"で「ハリー・セバー」と登録すれば、以降ちゃんと「ハリー・セバー」とアウトプットされます。

例)2

Harryのコンサート評から・・・

Both (これはHarryが歌ったドイツリート2曲のことです)had the audience, who were no strangers to fine boy soprano voices, completely captivated.



「両方には聴衆があった。彼らは完全に魅惑されて、少年ソプラノ音声に罰金を科する見知らぬ人でなかった」
お、おいおい・・・

まず、全体の構造ですが、have + 目的語 + 過去分詞という構文が解釈できないのは当然です。それと、no strangers ですが、「見知らぬ人ではない」はまさに翻訳ソフトらしい訳。strangerは見知らぬ人の意味から発展し、「門外漢、素人、不慣れな人」です。noがついて強い否定になりますので、「素人どころではない、(耳の肥えた人たちだ)」くらいを意味します。

で・・・no strangers to ~ で「~には耳の肥えた人たち」となるわけですが、ここでtoの後に来ている fine boy soprano voicesが「優れたボーイソプラノボイス」というひとまとまりの名詞句であることが翻訳ソフト君には解らない!
fineを動詞「罰金を科す」と解釈してしまい、to 以下がstrangersを修飾する不定詞の形容詞用法になっちゃったのですね。

楽しんじゃいました。
勿論、こういうのはもうそのたびに人間の手で直していくしかありません。



「優れたボーイソプラノボイスには耳が肥えている聴衆であるが、どちらの曲にもすっかり魅了されてしまった。」
くらいでしょうか。

ちなみに、"boy soprano"でボーイソプラノで歌う歌手自体を指すのが普通で、"boy soprano singer"のような言い方はしません。なので、ボーイソプラノの歌声という意味なら、"boy soprano voice"と言うわけです。voiceは一般的、抽象的な意味での声なら不可算名詞ですが、ここではいろいろな少年の歌声ということで可算名詞になりvoicesと複数になっていますね。

Wikipediaによるboy sopranoの定義:

"a young male singer with an unchanged voice in the soprano range"

http://en.wikipedia.org/wiki/Boy_soprano

(なお、上記英語の出典はこちら。後ほど全体の日本語訳をアップする予定。)
http://www.choirbase.com/review-view.asp?item=237