読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

裏本時代 本橋信宏 幻冬舎アウトロー文庫

2006-01-16 22:09:22 | 読んだ
久しぶりに面白い本を読んだ。
著者の本橋信宏は1956年4月生まれ、ということは私と同い年である。

彼は早稲田大学を卒業し「物書き」になりたかったがかなわず、つてを頼って小さなテレビ制作会社につとめるが組織の一員にむいてなく一ヶ月でやめ、続いてイベント制作会社にはいる。そこで「パブリシティ」の仕事をを縁に「フリーの物書き」になる。

彼は日本におけるマルクス主義について資料を集めルポをし本を出したかった。

しかし、フリーの物書きは「風俗」のルポなどしか仕事がなかった。
で、あるとき、極新空手に関するスクープのネタを仕入れたところから、運命が大きく変わる。なんと「裏本」の制作にかかわってしまう。
裏本はハイリスクハイリターンで、スリリングでサスペンスであったが、結局は素人の限界があり一冊で終了した。

ところがそのことで今度は、裏本の世界で「会長」と呼ばれている人物にあい、その人とのかかわりの中で「FOCUS」に対抗した写真雑誌「スクランブル」の編集長となる。
そのスクランブルの編集について、そしてスポンサーである「会長」についてのことが詳しく書いてある。

会長というのは、その後アダルトビデオ監督となった「村西とおる」である。
この人物が、よく言えば痛快なのだが、とんでもない人物であり、スクランブルもそのことが原因で半年で休刊してしまう。(休刊というが事実上は廃刊である。)

会長は団塊の世代、本橋はしらけ世代。しらけ世代が団塊の世代にいいようにあしらわれるというか使われることが、実感としてわかる。
会長は、発展、右肩上がり、日本一、世界一をとにかく目指す。かれが右肩上がりのときから我々しらけ世代は、しらけながらも実務をうまくこなしていく。
しかし、彼が頂点に立ち始めるころからしらけ世代との確執が生じるのである。
そして、パチンと散ってしまう。

何が何でも成功するんだという、意気込みに負けて、シブシブながらついていくさまは、滑稽でもあり同情するところがある。
それでもこちら側から見ればうらやましいような経験をしてきている。

読んでいると、団塊の世代としらけ世代のかかわりかた、について考えてしまったのである。

まあそれだけでなく、スリルとサスペンス、笑いと涙、無節操と倫理、が盛り込まれていて、なかなかのものだと思う。この形を変えると村上春樹かな、とも思ってしまうのだが・・・春樹ファンに叱られるかな。

さて、現在はこの続き「AV時代」を読んでいる。これもまた痛快である。
コメント (2)
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