読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

ダナエ 藤原伊織 文春文庫

2009-06-01 23:11:35 | 読んだ
久しぶの藤原伊織である。
私の大好きな作家である。
寡作と平成19年5月に亡くなったことが欠点なのである。
もう新しい作品を読むことができないのかと思うと、ものすごくガッカリするのである。

さて、藤原伊織の小説はいわゆる「ハードボイルド」である。

大体、ハードボイルド小説の主人公は、無口で人と接することを好まず、自分の好きなように生きたい、のである。
しかし、生きている途中で必ず誰かが邪魔をする。
その邪魔をするヤツを徹底的に排除する。

だから実はクールではなくホットであり、そしてお節介で、さまざまなことに顔を突っ込むヤツがハードボイルドの主人公なのである。

そのくせ
「あっしには関わりのないことでごさいます」
とか、カッコつけちゃって、ホント鼻持ちならないヤツが主人公なのである。

なのにどうして、そういうヤツに憧れてハードボイルドの小説を読むのだろう?

さて、本書「ダナエ」もハードボイルなのである。
主人公は「絵描き」なのだが、この絵描きさんはなかなか世間に通じていて、ホントに芸術家?と、突っ込みたくなるヒトなのである。

物語はこの主人公・宇佐美の個展会場で、彼の作品に硫酸がかけられズタズタにされるところから始まる。

宇佐美は、そのことにあまり驚かない。また嘆かない。
自分の作品、傑作とまで評された作品を壊されたのに・・・
まあ、このあたりがハードボイルド小説に登場する人物特有のニヒルさというか、生きることに本当は真正面からドーンといっているくせに、無理して斜に構えているところなのである。

この事件の謎を解き進んでいくと、犯人は思いがけないヤツであって、宇佐美はその犯人を憎むわけにもいかず、なおかつ許さなければならないのである。
それは、彼が蒔いた種が原因でもあるからなのである。

ダナエという題名はギリシャ神話から持ってきている。
その題名が、時にはあらぬ方向に展開させたりして、伏線と本線がうまい具合に絡んでいる。

なんだかんだいっても、こういう小説が私は好きなのである。

「ブログ村」というところにこのブログを登録しています。読書日記を探しているかた、下のバナーをクリックするとリンクされていますので、どうぞご覧ください。またクリックしてもらうと私の人気度が上がるということにもなります。そのへんもご考慮いただき、ひとつよろしくお願いします。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする