読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

傷-慶次郎縁側日記- 北原亞以子 新潮文庫

2010-09-02 22:03:51 | 読んだ
慶次郎縁側日記の第1巻である

小説新潮に掲載されていたのに、これまでずっと読んでいなかった。
ふと思い立って、昨年掲載されたものを読んでみると意外にイケル。

それで、第1巻から読んでみたいと思っていたが、なかなか見つからない。
「どうしても」とまでは思っていなかったし、本屋で見つからなければ、それが「縁」なのだと思っていた。
そうしたら、偶々立ち寄った本屋で見つけた。
「縁」があったのだ。

さて、慶次郎縁側日記の柱をなすのは、同心:森口慶次郎の心の傷である。
それは、娘:三千代が男に犯され自殺したことであり、そのことについて何もできなかった自分を責めてできた傷である。

第1話「その夜の雪」はその物語である。
犯人を追う、慶次郎。彼は犯人を殺そうと思っている。

その思いを感じ取り、彼をいさめ、間違いを犯させないように邪魔をする手先の辰吉。
彼は、自分の女房を殺した男を殺そうとしたところを慶次郎に止められている。

吉次は、評判の悪い岡っ引である。
慶次郎は彼を頼る。
吉次も、慶次郎のやり方には反対である。

そして紆余曲折を経て、彼ら3人は犯人にたどりつく。
そして・・・・

この慶次郎縁側日記の非常に良いところは読後感だ。
読み終えて、息を吐き、目を瞑る。
そうすると、心が穏やかになって、人生やら人やらが「いいもんだなあ」と思えるのである。

この第1巻「傷」には第1話から始まって11話まで収められている。
私は、毎晩1話づつ読んだ。

この本の題名となった「傷」は、登場する人物たちの心の傷が交錯するもので、世の中というのは本当にうまく行かない時があるんだなあ、と思わされるものである。

著者は世間から「どうしようもない人」とされた人々にもそれなりの人生があるといっているような気がする。
だから登場する人物たちは、多分実際に会ったら手を焼きそうだし、あまり関わりたくない人が多い。
しかし、彼らにもしっかり目を向けて、そして人生とは何なのかということを読者に問いかけているような気がする。

ところでこの文庫の解説は北上次郎である。
彼は「北原亞以子のいい読者ではなかった」として、北原亞以子の真価に気づいたのはこの慶次郎縁側日記ではなく「深川澪通り燈ともし頃」であると言っている。
となれば、慶次郎縁側日記だけでなく、そちらも読んで見なければなるまい。

だから読書はやめられない。

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