読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

乙女の密告 赤染晶子 第143回芥川賞受賞作

2010-09-23 23:20:52 | 読んだ
久しぶりに芥川賞受賞作を読んだ。
相当「気合」を込めてとりかかった。

何しろこれまで読んだ芥川賞受賞作品の殆どが「わからない」というのが第1のかんそうであったから。

そして、今回も「よくわからない」というのが感想の大部分。
もしかしたら「芥川賞」というだけで「わからない」ということになるように、私の頭の回線がつながっているのかもしれない。

私はこの作品を文芸春秋で読んだ。
ということは、芥川賞の選評も載っている。

そのなかで石原慎太郎の評が厳しかった。
「こんな作品を読んで一体誰が、己の人生に反映して、いかなる感動を覚えるものだろうか」

私もこの作品が現代を表しているように思えなかった。
「乙女」というのは一種の比喩だとは思うが、そんなもの絶滅したのではないか。
また、こんなに一生懸命勉強する女子大生も存在するとは思えないし、重要な役割を示すバッハマン教授にも現実感はなかった。

現実感とかリアリティが小説の絶対条件だとは思わないが、感情移入できる人物が存在することが必要だと思う。

この作品が受賞作に選ばれたということは、それなりに感情移入できる人たちがいたんだろうと思うが・・・

ちなみに村上龍は「わたしは感情移入ができなかった」と述べている。

ところで、この物語のもう一つの幹は「アンネの日記」である。

ということで、この物語を読んで「アンネの日記」に興味をもったことが収穫か。
インターネットで調べてみたが、戦争とは悲惨なものだということを改めて思ったのである。

何故、今、アンネの日記なのか?
何故、今、乙女なのか?

なんてことを思うようでは、この物語を読む資格はないのかもしれない。
そんなことを思いながら、読み終えたのであった。

だけど、次の芥川賞は読めるかもしれない。
だから読書はやめられない。

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