読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

深淵のガランス 北森鴻 文春文庫

2010-09-11 18:42:58 | 読んだ
文春文庫の新刊で「虚栄の肖像」がでた。
で、説明を見ると、絵画修復師・佐月恭壱シリーズの第2巻であるとのこと。

それでは第1巻の「深淵のガランス」を読まなければなるまいと、この本を手に取ったのである。

作者の北森鴻は本年1月25日に48歳で亡くなった。
私は、彼の「蓮杖那智シリーズ」「旗師・冬狐堂シリーズ」「香菜里屋シリーズ」のファンであるが、なぜか、この「佐月恭壱シリーズ 」だけは読んでいなかった。

北森作品の面白いところは、上記の4つのシリーズに登場す人物たちが『相互に乗り込んでいる』というところである。
つまり蓮杖那智シリーズに、冬狐堂の宇佐見陶子が登場したり、冬狐堂シリーズに蓮杖那智が現れたり、香菜里屋には蓮杖那智や宇佐美陶子が来店したりするのである。

本作品の「深淵のガランス」にも宇佐美陶子が登場する。といっても名前は「冬の狐を名乗る旗師」としてである。

この物語の主人公は、佐月恭壱。
銀座の花師にして絵画修復師である。

花師とは、銀座のバーなどに花を飾る仕事である。
絵画修復師とは、文字通り絵画を修復するわけであるが、修復は贋作作りと裏腹であり、チョイト怪しい仕事でもある。

勿論、佐月は贋作を作って生活をしているわけではなく、修復も仕事を絞っておこなっている。
その仕事を絞っているというのが、旗師の冬の狐からの修復依頼に限っているということである。

設定が尋常でないが、真実味をだすために、花師の仕事も絵画修復師の仕事も非常に詳しく書かれているので、そういうこともあるのか、と思ってしまう。
このあたりが、北森鴻作品の魅力的なところである。(北森ワールドというらしい)

普通の世界ではないのに、物語に入っていける。

本書には3編の物語が収められているが、それぞれが読みごたえのあるもの。
謎が謎を生み一体どうなるのか?
とわくわくさせられる。

ただ、北森ワールドの唯一の欠点は「動機」がどうも説得力に欠けるというところである。
非常に不可思議な登場人物たちゆえに、考え方が異常であるというのはわかるのだが、それにしても「あれ、あれ」というようなところもある。

もっともそれを補って余りある「盛り上がり」があるのだから『よし』としなけらならないと思っているのだが。

というわけで、次は「虚栄の肖像」を読むことにする。

なんだかんだ言いながら、やっぱり読書はやめられないのである。

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