工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

祝!30年ぶりのタイトル獲得、そして・・・。

2021年12月13日 | 自動車、モータースポーツ
 日曜日に開催されたF1最終戦アブダビGPで、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが優勝、自身初のドライバーズタイトルを獲得しました。ホンダのパワーユニット(エンジン)を積むマシンのドライバーとしては1991(平成3)年のアイルトン・セナ以来30年ぶりということで、フェルスタッペン選手、レッドブル、ホンダの皆様、このたびは本当におめでとうございます。
 レースの週末はさまざまなことが起き、予選から見ごたえたっぷりでした。決勝でも3つか4つのレースで起きるようなことが一つのレースに凝縮され、最後まで本当に目が離せないものとなりました。序盤のメルセデスの好スタートに始まり、終盤のクラッシュが原因のセーフティカー導入からセーフティカー退去、最終ラップまでの一連の流れについてはさまざまなドラマが起き、結果としてメルセデス、ルイス・ハミルトン側には不利に働いたというのはありましたが、最終戦の最終ラップで現王者と挑戦者が一騎打ち、というのは「事実は小説より奇なり」という言葉どおりで、その中で「魂のサイド・バイ・サイド」と形容できるようなバトルでトップを奪って先頭でチェッカーを受けたフェルスタッペンが、王座に相応しいということになったのでしょう。
 今シーズンはレッドブル・ホンダが優位に進めるも、メルセデスも反撃、時にはフェルスタッペンとハミルトンの二人がコース上で文字通りぶつかってしまうこともありました。フェルスタッペンには不利な裁定も時にはあって、これは「いずれ何度も王座を獲れるの能力がある人には簡単にタイトルはやってこないよ」という産みの苦しみのようにも思えました。
 敗れたハミルトンは実に8度目の王座がかかったレースで、決勝も2番手から一気にトップを奪い、しばらくはフェルスタッペンをリードしたあたりはさすがという感じでした。特に今シーズンはもともとの才能に経験が加味され、一人のレースファンとしてこういう勝ち方をされたら何も言えないな、という場面もいくつかありました。ハミルトンも最初のタイトルを獲った2008年シーズンでは、最終ラップでタイトルをもぎとりましたね。昨日のレース後はしばらくマシンから降りられず、それでも新しい王者を称えていたのが印象的でした。今年のシーズンはレース数が増えただけではなく本当に濃密で、これもメルセデスとの稀に見る激しいバトルがあったからでしょう。
 新王者フェルスタッペンは実に17歳(!)でF1にデビューしました。それだけ期待がかかった存在だったわけですが(現在は「飛び級」が認められず、F1出走のためのスーパーライセンス獲得には厳格な基準があるので、未成年のデビューは難しくなっています)、デビューからレッドブルと共に過ごし、ホンダがパワーユニットを供給するようになってからは「ホンダのエース」として表彰台、勝利と活躍を重ねてきました。特に今シーズンは顔つきもだいぶ変わり、勝利への気持ちも誰よりも強くなっており、グランプリドライバーとしての貫禄のようなものを感じさせるときがありました。シューマッハやハッキネン、ライコネンもそうでしたが、若くしてデビューして経験を積んだドライバーというのは年齢的なものとは別に表情が変わるといいますか、さまざまなものが表情に刻まれていく感があります。フェルスタッペンのお父さん、ヨスもF1ドライバーで、かつてはベネトンでシューマッハのチームメイトだったことがありました。表彰台に上がったことはありましたが優勝はなく、どちらかというと中団チームで活躍していました。いつも息子のレースに帯同していますが、昨日はどんな思いで見ていたのでしょうか?
 昨日のレースの話に戻りますが、途中タイヤ交換をして2位に下がったハミルトンを押さえ続けたフェルスタッペンのチームメイト、セルヒオ・ペレスの走りもチームメイトを助けるために全力を尽くし、見せ場を作りました。最後はチェッカーを受けられなかったものの、思わずテレビに向かって「チェコ(ペレスの愛称)、漢だねえ」とつぶやいてしまいました。また、ラストランとなったホンダですが、もう一つのホンダのパワーユニットを積むチーム、アルファタウリは角田4位、ガスリー5位と大健闘でした。特に角田の4位は予選から決勝まで安定したレース運びで達成したもので、こういうレースができるドライバーは機会さえあれば上位に難なく入れる能力があるわけで、来年以降も期待させる走りでしたし、最終戦という「期末試験」でチームメイトにも勝って合格点を出せたのではと思います。
 そしてそのホンダですが、今年限りでF1から撤退ということで、最後にようやくタイトルを獲得できたということになりました。コンストラクターズ(チーム)タイトルも獲りたかったところでしょうが、こちらは今年もメルセデスの前に敗れています。最後のレースを前に「ありがとうフェラーリ、ありがとうロータス・・・」とかつてのライバル、パートナーたち8チームへの謝辞を述べ「じゃ、最後、行ってきます」と締めくくったメッセージを出していました。この8チームの中にはトヨタも含まれており、トヨタも「ラストレース、ご安全に、行ってらっしゃい!」とエールを送ったそうで、かつてのトヨタのF1活動そのものはいろいろ思うところがあった私も、これにはぐっと来るものがありました。謝辞を贈ったチームに今は無いブラバムの名前があったのも意外でした。F1ではライバルとして、またF2ではホンダエンジンを積み、1960年代に4輪に本格的に進出したホンダの「先生」だったのがブラバムでした。ロータスは1987年の中嶋悟のF1デビューに合わせて組んだ相手でもありましたが、その昔、第一期参戦時にロータスと組む話があったもののロータス側から反故にされたいきさつがありました。ルノーの名前もあり、これは第二期で最後は王座を明け渡したものの、互いに自分たちの最適な戦い方、設計を信じて戦ったライバルへの感謝とも受け取れました。唐突に終わった第三期はもちろんのこと、第二期の最後にはこうしたメッセージは無かったと思いますし、第一期の参戦の頃からの今はなきチームへの謝辞も入っていましたので、これはF1から撤退して本当に戻ってこないんじゃないか、という感慨を持ったのですが、私の考えすぎでしょうか?ホンダやホンダのDNAを持つ何らかの形で「復帰」ということがいつの日か来ることを祈っております。
 ここまでいろいろと触れてまいりましたが、ホンダのことばかり書いてお前はティフォシ(フェラーリファン)じゃなかったのかと言われそうです。今年のフェラーリに関しては未勝利でしたし、まだトップに立つのは難しそうです。でも日曜のレースでカルロス・サインツJrが3位に入っていますし、このところ表彰台を狙えるレースが多くなっています。来年は車輌規定も大きく変わるので、どのチームが抜け出すか分かりませんが、そろそろ表彰式でイタリア国歌を聞きたいものです。
 また、昨日は大ベテランのキミ・ライコネンのラストレースでもありました。ライコネンのことは別に書きたいと思っています。今までお疲れさまでした。

  1991年のマクラーレン・ホンダとセナの王座獲得は私も当時テレビで観ましたが、あれから30年も経ったのですね。この30年で第一期F1活動の監督を務めた中村良夫さん、そして第二期の象徴だったセナも既に亡く、あの頃放送席に座っていた今宮純さんも亡くなり、毎年の総集編の脚本や各GPのオープニングのナレーションの脚本を書いていた高桐唯詩さんも今年亡くなっています。いろいろありましたが、やっと、ホンダが頂点に立ちました。あの頃から時は流れて、テレビで、サーキットで、たくさんのレースと、そこに関わる人々、マシンなどを観てきました。中継のエンディングを聴きながら、深夜のリビングで、一人感慨にふけっておりました。
 
 いろいろ書いてきましたが感慨にふけるのはここまで、まずはシーズン終了と素晴らしいバトルをしたドライバー、チームを称えて、乾杯しましょう。


再録ではありますが、フェルスタッペン、2019年にホンダに復帰初勝利をもたらした際の有名なポーズ

左からフェルスタッペン、ハミルトン、ルクレールの各ドライバー。
上記2枚はいずれも2019年・鈴鹿にて



1991年チャンピオンマシン、マクラーレンMP4/6(写真はベルガー車)。ちなみに展示エリアでMP4/6の撮影をしていたところ、国際映像のクルーに「マクラーレンの写真を撮る熱心なファン」を演じてほしいと言われ、後姿を撮られています。
2018年・鈴鹿にて


 
 
 
 






 
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする