工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

洋上模型の50年

2021年12月30日 | 船だって好き
 今年は1/700の洋上模型、ウォーターラインシリーズがスタートから50年を迎えています。以前のブログでも書きましたが、私も子供の頃からかなりお世話になっておりましたので、この場を借りてお祝いいたします、というのが本日のテーマです。
 ウォーターラインシリーズは昭和46(1971)年、静岡の主要プラモメーカー4社(タミヤ、ハセガワ、フジミ、アオシマ)によってスタートし、後にフジミが抜けて独自に製品開発をしながら今に至っています。もともとこのころに大きなシェアを持っていた今井科学の経営が立ち行かなくなるという業界にとって大きな出来事があり、問屋筋からの要望もあって、みんなで知恵と力を出し合って共同でシリーズものを展開しよう、となったと聞きます。それまでも1/1000などの洋上模型があり(私も子供の頃、こうした小さい艦艇のシリーズは見たことがあります)ましたが、より大きくして1/700で行こう、となったようです。地域的な特性もありましょうが、同じエリアに一定のクオリティを持ったメーカーが複数あって、それが同じテーマで商品開発、展開をしているというのは海外を見ても例がなく、日本独自の「業界内の結びつき」が良い方向に出たのではと思います。また、1/700という縮尺が、かつて日本海軍の図上演習などで使用された模型の縮尺と同じというのも興味深いです。人間にとって見やすく、手になじむ大きさなのでしょうか。
 50年の間には山あり谷ありで、製品開発が進まない「冬の時代」もありました。また、最近になっても第二次大戦の艦艇については「新事実」が明らかになったりしていますので、昔の製品の間違いや新解釈などを加味して、新しく作り直されている製品も多くなっています。さらに、静岡四社以外にもグリーンマックス、ピットロード、シールズモデル、ヤマシタホビーをはじめ、海外メーカーも1/700で艦艇を発売していますので、タミヤの1/35の戦車と同様に「国際スケール」となっている感があります。
 ウォーターラインシリーズを盛り上げたということでは、月刊誌「モデルアート」の功績も大きいと思います。衣島尚一氏の「連合艦隊編成講座」という長期連載がありましたし、1980年代には「ウォーターラインスペシャル」という増刊がありました。現在では「艦戦模型スペシャル」という増刊も季刊で発売され、毎号特集に沿って読み応えのある記事とため息をつきたくなるほど素晴らしい作品が掲載されています。
 近年になって「艦これ」のような形で艦船が注目されるようになりましたし、スマホの海戦ゲームでイギリスの駆逐艦が気になってアオシマの「ジャービス」を買った、という私のような人もいるでしょう。昔ならガレージキットで出ていたものがプラモデルで入手できるというのは、何とも良い時代になったものです。外国艦や現代の護衛艦もファンが多いですから、これからもいろいろな艦船が多くの方の工作台から竣功することでしょう。個人的には戦前、戦中の客船などももっとラインナップがあったら・・・と思いますが・・・。
 私が初めて組んだのは重巡「衣笠」でした。昭和55(1980)年当時、巡洋艦が500円だったので、子供のおこづかいで毎月1隻ずつ、巡洋艦を組んだ思い出があります。大人になってからそれほど組まなくなったこともあり、キットのことを一つ一つ論じることなどとてもできませんが、きっと読者の皆様にも「ベストキット」があるのではと思います。私の工廠は「ネイバル・ホリデー」になってしまって久しいので、途中になっていたあれとか、あれとか(わからないって)進めてみようかと思います。来年は何万トンの艦艇が竣功しているか、自分に目標を立ててみますか。

(子供の頃に上手に作れなくて、大人になって「リベンジ」したのがこちら。軽巡「多摩」はタミヤのキットで、昔のキットとは思えないクオリティの高さに改めて驚いたのと、あの頃は腕が伴わないのに背伸びして作ったのだなということに今更気づかされた次第です)

(外国艦も大人になってから作りました。タミヤの「ネルソン」とO級駆逐艦。O級の方はグリーンマックスが1/700に参入していた頃のキットをタミヤが引き継いだ経緯があります)


(ヴェネツィア、ミラノの「現地取材」で作ったのはこちら。ピットロードの「ヴィットリオ・ヴェネト」)


(歴史好きでもある兄からのリクエストで作ったのがこちら。アオシマの「飛龍1939」。艦載機が96式となっているところが特徴。私の兄が96艦攻好きということでリクエストがありました)

(シールズモデルは明治期の艦艇を多く発売しており、私も三笠をはじめ何隻か作りました。こちらは大正期に地中海に派遣された仕様の「出雲」です)

 

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする