工作台の休日

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生きながらフュージョンに葬られ!?

2023年07月22日 | ときどき音楽
 三連休の最終日の17日、東京ドームシティホールで開催された「JAZZ FUSION SUMMIT」というライブに行ってきました。このイベント、このブログでも時折登場しますライブハウス、ブルーノート東京の35周年記念として開催されたもので、出演者もカシオペア、DIMENSION、T-SQUARE、ブルーノート東京オールスターズという日本のフュージョン界の代表とも言える三つのバンドと、エリック・ミヤシロさんが率いる凄腕そろいのビッグバンドが登場ということで、チケットも早々にソールドアウトだったそうです。この手のイベントですと、2003~2005年にかけて「クロスオーバージャパン」というフェスがあり、こちらは70年代、それ以前から活躍しているミュージシャンをはじめ、歌ものも含めてたくさんのミュージシャンが参加していました。今回のライブは4組ですから、厳選された質の高いバンドが見られるということで、いやが上にも期待が高まります。既に公式ライブレポが出ており、セットリストも出ていますが、私なりの感想なども記していきたいと思います。ということで一部ネタバレも含みますが、ご容赦ください。
 会場の東京ドームシティホール、15年くらい前にスクエアのライブでお邪魔して以来です。その頃はJCBホールと名乗っていました。ライブ当日は猛暑で、外で開場を待つのもかなりきつかったのですが、会場に入り、席に着いてからは空調も手伝い、だいぶ楽になりました。1ドリンクついていましたが、こういうときにお酒は危険なので、スポーツドリンクにしました。
 確かこのホール、どの位置から見てもステージと等距離になるよう作られていると聞いたことがあります。アリーナ席から見るとステージを見上げる感じでした。今日の出演者全員の席、楽器のスペースがステージ上にありますので見えづらいところもありましたが、大きなスクリーンもありますので、こちらが助けてくれそうです。
 ライブのオープニングはカシオペアの鳴瀬喜博さんを筆頭に、DIMENSIONから二家本亮介さん、スクエアはおなじみ田中晋吾さんのベースセッションが始まりました。ドラムにはスクエアの坂東慧さん、途中からショルダーキーボードでカシオペアの大高清美さんが入り、ヒートアップです。坂東さん、カシオペアのTシャツ着てましたね(笑)。
 バンドとしてのトップバッターはカシオペアでした。カシオペアですが、ドラムが神保彰さんから今井義頼さんにバトンタッチして「CASIOPEA P4」と名乗っています。「第4期カシオペア」ということだそうで、私もライブで「第4期」を見たのは初めてです。第3期、第4期の曲が中心となりましたが、最後は第一期からの代表曲「DOMINO LINE」と「ASAYAKE」で締めました。「ASAYAKE」で拳を突き上げたのは言うまでもありません。ドラムが若い今井さんになって、神保彰さんの後任というのもプレッシャーじゃなかったかと思いますが、元気があって、しかもこのバンドのドラムとして求められているテクニックもある演奏は、後ろから前の三人にパワーを送っている感じもしました。もちろん、リーダーの野呂さんのギターをはじめ、これまでのメンバーも「スリル・スピード・テクニック」と言われたデビュー当時のフレーズそのままの演奏で、こうなりますと「板前は途中で変わったけど、いつもの味も、新しい味も美味しい」お店ほ思い起こさせます。
 カシオペアの後はドラム対決です。カシオペアの今井さんに、DIMENSIONに参加している元スクエアの則竹裕之さん、スクエアの坂東さん、「オールスターズ」の川口千里さんです。川口さんのことはメディア等で聞いていましたが、ライブの演奏を聴くのは初めてで、あの若さ(と小柄な体)でパワフルかつ、唯一無二の独創性を感じさせる演奏は、すごいの一言しかありません。他の三人ももちろん「第一人者」であり、たいへんなプレーヤーなのですが、そこに堂々と渡り合う姿は、言葉でうまく説明できませんが「この人、すごいなあ」としか言えないわけです。とても小柄な女性ですが、どこにパワーが隠されているんだろう、という感じでした。
 私の席は端っこだったので則竹さんはほとんど見えず、また小柄な川口さんもあまり見えなかったわけですが、大きなスクリーンがとても役に立ちました。ついでに言えば隣のオ〇チャンが高い位置で拍手をするから私の視線の邪魔になってしまい、スクリーン越しに観る格好になってしまったというのもあるのですが・・・。かなりぎゅうぎゅうになった「密」な状況のライブなので、周囲の邪魔にならないように、とは思いますが、私も誰かの邪魔をしていたら申し訳ないので、あまりどうこう言えません。
 次はDIMENSIONの登場です。現在の二名+サポートの体制になってからは初めてというくらい、ライブで観るのは「お久しぶり」です。勝田一樹さん(sax)、増崎孝司さん(ギター)のユニットは、もともとレコード会社ビーイングのインスト部門、という位置づけと捉えていたのですが、長年ライブも続けており、CDも出し続けています。ご本人たちは「両巨頭(カシオペアとスクエア)に挟まれた中間管理職」と言っていましたが、この日のライブで個人的に大きな収穫だったのが久しぶりのDIMENSIONでした。音もお洒落ですし、流れるような演奏あり、キーボードやベースのソロも素晴らしく、ということで、密度の濃い演奏をしばし楽しみました。見つけやすかったり、大きく輝いていたりする星座の間で、渋く輝いている星座、という感がいたしまして、またこの二人の演奏をライブで聴きたくなりました。
 そしてこの二人がステージに残ります。増崎さんが「ASAYAKE」や「TRUTH」を弾いているうちに、ソロでスクエア初期の名曲「TOMORROW'S AFFAIR」を演奏します。素敵なバラードで鳥肌ものです。ここでスクエアのメンバーも合流して「MEGALITH」を演奏しました。サックスに伊東たけし、本田雅人、勝田一樹という、フュージョン界の三巨頭と申しますか、何とも夢のような豪華な組み合わせです。伊東さんが6月のライブで「勝田と本田の三人でバトルとかやるのかなあ」と言っていたのがこれでした。DIMENSIONのお二人はここまでとなり、スクエアのステージは先月と同じくギターは外園一馬さん、キーボードは松本圭司さん、ベースは田中晋吾さんでした。今年のアルバム「幸せの風」からの演奏が中心です。アップテンポの曲が続いた中で「海の見える坂道で」が気持ちを落ち着かせてくれるようないいスパイスになっていました。ラストは「FLY FLY FLY」、そして「TRUTH」ということで、当然拳を振り上げて、となりました。ウインドシンセですが伊東さんは相変わらずewiで、本田さんはNuRadでの演奏でした。本田さんの「伊東さんがewiのままに二万カノッサ」というのは本当でしたね。
 スクエアの管楽器二人が残る形でブルーノート東京オールスターズの登場です。最初はブラスアレンジされた「宝島」と「OMENS OF LOVE」の二曲でした。いずれも故和泉宏隆さんの代表曲にして、吹奏楽アレンジでも有名な曲ですが、当然凄腕のプロぞろいのビッグバンドの演奏となれば、アマチュアの吹奏楽とは全く違いまして、一流どころの料理人が揚げた天ぷらを食しているようなものでございます。
 ここからはブルーノート東京オールスターズの演奏が続きます。本田雅人さんもメンバーの一人なので残ります。私の母が進駐軍の持ち込んだビッグバンドを聴いて育った世代で、私もJAZZとの出会いはビッグバンドで、高校生の頃はよくビッグバンドジャズはよく聴いていました。「オールスターズ」ですが、様々な年代、男女を問わず在籍していて、スクエアの本田さんもメンバーではありますが、ベテランの管楽器奏者の小池修さんや、トランペットの山崎千裕さんといった既に名前を知っている方から、若手の演奏者に至るまで、みなさん(当たり前ですが)鉄壁のアンサンブルと高い技術で、日本のビッグバンドも世界に自慢できる、と思いました。亡母に聴かせてあげたかったな。
 この日はチック・コリア、スティービー・ワンダー、ジャコ・パストリアス、ステップス・アヘッドら、まさにクロスオーバー、フュージョンと言える人たちの曲を中心に演奏していました。サックスの渡辺瑠奈さん、現役の音大生とのことですが非常にテクニックのある印象的なソロで、そういえば本田雅人さんも音大生時代に既に「原信夫とシャープス&フラッツ」に参加したことを思い出しました。これからが大いに楽しみな才能と出会うことができて、とても幸せな気分になります。また、ステップ・アヘッドの「ベイルート」という曲で小池修さんがewiを演奏されていたのも印象的でした。スクエア以外の方がewiを演奏されるのも珍しいですからね。ステップ・アヘッド、CD持っていたなあ・・・。
 アンコールは「バードランド」でした。この日演奏したミュージシャンの多くも参加して大団円です。トロンボーンの中川英二郎さんも飛び入りで参加です。リーダーのエリック・ミヤシロさんは誕生日を迎えたばかりだったそうで、ステージ上で祝福されていましたね。
外園一馬さんのツイッターによれば、急遽参加が決まったアンコールだったそうですが、DIMENSIONの増崎さんと共演できた喜びをつぶやいていました。ミュージシャン同士のつながりや驚きもSNSに上がっており、本田雅人さんはかつてカシオペアのファンだったということで、昔聴いたあの音のまま、と喜びを隠せない様子が伝わってきますし、前述の渡辺瑠奈さんも大先輩たちとのショットをアップして喜びと感激の気持ちを表しています。
 ということで、演奏する側も、もちろん客席の私たちも大感激のライブでした。4時間のライブでしたので途中で「中だるみ」にならないか心配でしたがそんなことはなく、あっというまでしたし、すべてメインディッシュというか、中華の満漢全席というか、どの演者も素晴らしくてお腹いっぱい、となりまして、自分が見たライブでもかなり印象に残るものでした。来年以降も機会があればぜひ、というイベントですし、私も万難排して見に行きたいです。生きながらブルースに葬られ、というのがありましたが、この日ばかりは「生きながらフュージョンに葬られ」な一夜でした。演者の皆様、ありがとうございました。それから、ブルーノート東京様、頻繁にはお世話になっておりませんので偉そうなことは言えませんが、これからも素敵なライブが見られることを期待しています。


こんなお洒落なパスケースも売っていました。ちなみにタイトル画像はTシャツのバック部分です。

 


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